春のイベントラッシュの先陣を切って、Spring Internet World 98が開幕した。場所は米国Los AngelsのLos Angels Convention Center、会期は3月9日から13日(展示会は11日から13日までの3日間)まで。基調講演などではMicrosoftのJava戦略に関する発表などがあったが、ここでは、エルニーニョの影響も去り晴れ間の戻った会場より、展示会についてレポートしたい。
最近の話題としては、ようやく標準化された56Kモデムの規格、V.90だろう。展示会ではいち早くこれに対応したモデムが出品されていた。
プロバイダー側の集合モデムが多かったが、その中でU.S.Robotics(3Com)はコンシューマ向けの製品を出品していた。ごく近いうちに日本にも入ってくるだろう。標準化されるのを待っていた人も、これでようやく安心して(自分の加入しているプロバイダで迷うことなく)56Kの通信が楽しめる。
日本でも最近注目され始めた、xDSL。日本のようにデジタル回線(ISDN)が普及していないここ米国では、アナログ回線で行なえる高速通信技術の要望は非常に高い。V.90がやっと出たというのに、こちらではxDSLの関心のほうが高い。
やっと実験段階に入った日本と違い、米国ではサービスの開始が始まる。U S WestやUUNETといったところが対象型の768kbpsのサービスを、NORTHERN TELECOMは非対称の下り1Mbps、上り120kbpsのサービスをアナウンスしていた。
何年か先の光ファイバーより、すぐ実現できるxDSLのサービスを日本でも享受したいと願うのは私だけではないはずだが。
米国でのISP(プロバイダー)事情はどうなのだろう。日本では非常に多くのISPがひしめき合い、差別化は主に料金体系で行なっているように思う。しかし、ここ米国では、市内通話が基本料金に含まれている(何回かけても、何分通話しても同じ)事情から、無制限の固定料金(その多くが、月額$19.95)が主流だ。
では、何で差別化しているか? それは当然サービスだ。もちろん価格でサービスをしているところもあるが、わずか$2安いくらい。たいていの場合は、はじめの1ヶ月は無料で試すことができ、その間にサービスの善し悪しを判断できる仕組みになっている。ホームページの提供や24時間サポート(もちろん、フリーダイヤル)なんてのは当たり前。回線ビジーや回線が重いなんて事があったらすぐに乗り換えられてしまうので、回線やバックボーンの増強は当然行なわれている。
その中で、最近注目されている新しいサービスは、Intert FAXやInternet Phoneの提供のようだ。この展示会に出展していた大手ISPは、このサービスを掲げているところが多かった。
電話事情は日本より良いはずの米国だが、市内かけ放題の代わりに市外通話が結構高い。そのためか、インターネットを使ったコミュニケーション手段のニーズが高い。ISPがこの手のサービスを標榜するのもうなずける。なにせ、市内料金(基本的には無料)でFAXや電話が行なえるのだから、ユーザは喜ぶ。そのためか、この展示会でも多くの製品が出品していた。企業やISP向けのものから、コンシューマ向けのものまで、製品の多さからニーズの高さが伺える。
電話機はここまで進化した。E-Mailの送受信できる電話機はどこかで見たが、それをしのぐ電話機を発見した。
その名を、「CIDCO iPhone」という。これは、電話機というよりは電話機型の専用端末と言ったほうが良いかもしれない。ちょっと大き目の電話機には、タッチ・スクリーン型の7.4インチのディスプレイ(640×480、16階調のモノクロ)がつき、メールの送受信はもちろん、Webの閲覧まで行なえる。スライド式の小型のキーボードがついているが、外部キーボードをつけることもできる。プリンタポートもついているので印刷もできる。
内蔵モデムが14.4kbpsというのが頂けないが、ご家庭に置くなら私はWebTVよりもこちらのほうが良いと思う。
今回の展示会を見て回り、Webサーバを監視するソフトが多いのに気づいた。ちょっと前だと、Webの立ち上げためのソフトや、コンテンツの管理ソフトなどが主だっただが、今や完全にWebを監視し、ログを解析したり、レポートを出したり、トラフィックを見て動的に他のサーバに振ったりという、ネットワーク管理ソフトそのものである。時代は、Webの立ち上げの時代から運用の時代にに移ってきたのだなと感じた。
会場全体を見て回り、意外なことに気づいたのが、Netscapeのブラウザーの多さ。ほとんどのブースで使われていた。私の感覚ではNetscapeやや優位だとしても半々くらいだと思っていたのだが、実際には8対2と言ったところか。ただ、Javaのアプレットを使っているところではIEのほうが人気が高かったようだ。
また、「Claris」はついこないだ名前を「FileMaker」に変えたわけだが、この展示会でもすばやく対応していた。
最後に、インターネットネタではないが、ヴァーチャル・サーフィンなるものが置いてあるブースがあり、家庭にも体感ゲームの波が押し寄せてきているのだなと感じた。
('98/3/13)
[Reported by Office-Y2@usa.net]