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【イベントレポート】

地域情報化リーダーの育成を目指し
「電脳山田村塾」が開塾

■URL
http://www.toyama-tic.co.jp/yamada/index.html
http://www.vill.yamada.toyama.jp/~kmplan/

会場
中沖富山県知事
公文俊平氏
 各家庭へのパソコン配布で知られる富山県婦負郡山田村。5月31日、そんな山田村を舞台に「電脳山田村塾」が開塾した。山田村交流促進センターで行なわれた開塾式には、来賓、一般参加者と30名の塾生、総勢300名が集まった。

 全国各地で情報化事業が行なわれているが、その地域の状況をよく知る地元の人々の主体性に基づいていなければ、成功は難しいのではないか。それには各地域に地域情報化リーダーを育成することが必要不可欠。こうした信念に基づき、講演会やセミナーを開催したり、国内外の事例を研究したりするのが、この電脳山田村塾だ。

 開塾式ではまず最初に、富山県知事の中沖豊氏(同塾塾長)が挨拶。地域の情報化にはその中心となるリーダーの存在が重要であることを強調した。同塾をその育成の場としていく決意を表明した。

 次に、地域振興整備公団副総裁の三井康壽氏が来賓代表として挨拶。「山田村は様々な情報化推進地域の中でも一番の優等生だが、その真価が問われるのはこれから。山田村には伝道者としての自覚と役割を担ってほしい」と期待を込めて語った。

 続いて、高知県知事の橋本大二郎氏(同塾特別顧問)からの電子メールによる祝辞が披露された後、事務局長の発田悦造氏から開塾の意図が説明された。地方が主体となりリーダーを育成していくこと、そこで培われたノウハウを地域間で相互に活用していくこと、地域間の繋がりから発生するスケールメリットを利用することが、同塾の主な目的であるという。


 10分の休憩をはさみ、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長の公文俊平氏による基調講演が始まった。

 同氏によれば、現代は産業的革命と社会的革命の2つの変化が同時に進行している時代で、これがいわゆる「情報化革命」である。本や自動車を例に挙げながら、何事にも良い面と悪い面があり、その見極めが重要であるとした上で、「インターネットはまだその見極めの段階にある」と語った。

 面白いのは、同氏が「情報発信よりも利用することに重点を置く、といった発想の逆転が必要」とも語ったところ。まずは自分たちにとって有用な情報を集めることから――これが地域情報化の促進に対する同氏のアドバイスだ。また、インフラの整備も大事なことだが、子供たちへの教育が当面の課題となるとも語った。

 最後に、幕末からの日本の歴史を眺め、およそ60年の周期で浮き沈みを繰り返してきたと指摘。1885年頃から1915年頃まで続いた軍事化による発展と明治憲法、1945年頃から1975年頃まで続いた産業化による発展と昭和憲法、そして次に来るのが2005年頃から2035年頃まで続く情報化による発展と平成憲法、というのが同氏の描いたシナリオだ。国内目標として地域化、国際目標として地球化、発展戦略として情報化というのが、今後の流れとなるだろうと予測した。


 この後、塾生歓迎の晩餐会が開かれ、一同が和気あいあいとよもやま話に花を咲かせた。30名の塾生たちは、山田村で培われた地域情報化のノウハウを、6月1日、2日とのどかな山の中腹で学んでいく。


 ところで、なぜ山田村なのか。電脳山田村塾を企画した地域振興整備公団地方拠点振興部長の岡林哲夫氏(同塾講師)は、山田村を選んだ理由として、「他の地域と比べ、山田村には地域の輪があるから」と語る。その輪の持つ意味を他の地域にも伝えたいというのが、同氏の願いだ。

 また、山田村の情報化を中心となり進めてきた倉田勇雄氏(同塾講師)は、その経験から一つの結論に達している。「今のパソコンは使いづらい。全世帯での利用を目指しているが、だいたい65%のところに壁がある。お年寄りの持つ豊かな頭脳資産をそのままにしておくのは勿体無い」。そこで作ったのが「やま風」というブランドのノートパソコン。URLをバーコードで入力できたり、文字の音声入力ができたりする。

 地域情報化に関するアイデアは、日本全国、様々な地域で考えられている。全世帯にパソコンを導入する、「やま風」のようなパソコンを発売する、という風に個々のアイデアが具現化されているところが山田村の魅力なのかもしれない。

('98/6/1)

[Reported by yuno@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp