今年のN+I最大のトレンドと言えば、Gigabit Ethernetだろう。その名の通り、Fast Ethernetの10倍にあたる1Gbpsの帯域幅を持つ高速通信技術で、近くIEEE802.3z委員会で標準化作業が完了する予定だ。ATMとともに、バックボーンテクノロジーとしても注目を集めている。
標準化を前に、今回の展示会では、富士通、日本ルーセント・テクノロジー、日立電線をはじめ、多くの企業がGigabit Ethernet対応のスイッチやルータ、ハブなどを展示していた。10/100Mbpsのポートを兼ね備えたものがほとんどで、既存のEthernetの延長として比較的容易に導入できるのもGigabit Ethernetの特徴だ。これらの製品は夏以降、出荷が開始される見込みだ。
さらに、スリーコムジャパン、日本ヒューレット・パッカード、日本サン・マイクロシステムズ、NTTPCコミュニケーションズでは、PCI仕様のGigabit Ethernetカードも紹介。バックボーンだけでなく、エンドユーザーにGigabit環境が浸透するのも、そう遠くないものと思われる。
対応製品の展示とともによく見かけたのが、VODによる動画配信のデモンストレーションだ。このイベントのバックボーンとして設置されたShowNetに接続し、動画を再生してみせるというもので、中には4つの動画を同時に再生して回線の高速性をアピールしているものもあった。また、NTTデータ通信のブースでは、3月に琉球大学で実施されたGigabit Ethernet相互接続実験のシステムを再現。同様にVODによるデモを行なっていたが、IP配信によるものとは思えないほど高画質な映像だった。Gigabit EthernetにおけるCoS(Class of Service)やQoS(Quality of Service)の利用も実用段階を迎えており、Gigabit Ethernetは、インターネットによる映像や音声のリアルタイム配信などにも最適な技術と言えるだろう。
SSD(Solution Showcase Demonstration)のテーマの一つとして「xDSL」が取り上げられていることもあり、xDSLモデムやxDSLによるネットワークソリューションなど関連製品の展示が目立った。その中からブースは小さいながらも注目を集めていたものをいくつか紹介したい。
ソネット株式会社のブースでは、ADSLのほか、SDSL、HDSL対応モデムがそれぞれ展示されていた。また、実物は展示されていなかったが「Universal ADSL Working Group(UAWG)」の規格に準拠しているという「X200 G.Lite」が紹介されていた。UAWGとは、米Compaq社、Intel社などによるADSL技術の普及・促進を目的とした業界団体で、従来のADSLをさらにシンプルにした仕様「Universal ADSL」を提唱している。ソネット社は、'97年に長野県伊那市で有線放送網を使った実証実験にADSLモデムなどを提供している。'98年4月からは、国内の大手テーマパークの構内LAN用にADSL関連機材を納入しているとのことだ。
NTTインターナショナル株式会社のブースでは、Orckit社の製品「FCopper Trunk VDSL」を展示している。これは、高速なxDSL技術「VDSL(Very High-bit-rate Digital Subscriber Line)」対応のモデム。伝送速度は上り下り対称時で最大13Mbps、非対称時には下り最大53Mbps、上り約2Mbpsとのこと。
また、直接xDSL技術を採用したものではないが、屋内の電話線を利用して1.3MbpsのLANを組むことができるという「HomeRun」という製品が株式会社理経のブースで展示されている。HomeRunは、米Tut Systems社の製品で、5月に米ラスベガスで開催されたN+Iでも展示されていたもの。このHomeRunのチップを内蔵したxDSLモデムやケーブルモデムをライン上に設置すれば外部との接続も可能だ。なお、ラスベガス同様に小さな家の模型を使って展示されている。
ほかに、会場でxDSL関連の製品を一覧で見られるのはSSDのブースだ。ここでは、住友電気工業株式会社、古河電気工業株式会社など6社の関連製品が見られる。
NTTアドバンステクノロジのブースでは、「TVIQ」と呼ばれる一方向赤外線通信を用いたユーザーインターフェイスを紹介していた。この技術は「SmartPaper」と呼ばれる薄いセンサーを用いることで、指で触れた場所に応じた信号を赤外線で発信。この信号により、パソコンやAV器機を操作するというものだ。本の中にSmartPaperを埋め込めば、印刷された絵や文字に触れるだけで、インターネットなどのマルチメディア情報にアクセスできる。リモコン操作が苦手という人も、このシステムなら楽に操作できるだろう。また、「TVIR」と呼ばれる強力な赤外線通信技術が使われているので、どの方向に向けても赤外線を天井や壁などに反射させて受光部まで信号を伝送する。寝っころがりながらの操作でも手を伸ばしたり位置を変えずに使えるという。
ホール7の一番奥にある「Network Computing Plaza」では、日本オラクルが開発した、テレビに接続するインターネット端末「NCTV」のデモや、NC対応のケーブルモデムなどが展示されている。NCTVはまだあまり一般公開の機会が少ないので、実際触れてみるにはいい機会だ。
なお、オラクルのほかにも、富士電機の事業者向けNCパッケージや、船井電機、アクトンテクノロジィなどのNCが会社ごとに展示されていた。また、伊藤忠テクノサイエンス株式会社のブースでも、各社のNCが展示されており、上記の企業の製品のほか台湾UMAX社製のNC「UmaxNC-300」が展示されている。
http://www.digipri.co.jp/news/h1.html
3日発表された「Eudora Pro 4.0J」だが、クニリサーチのブースではWindows版、Macintosh版ともに実際に触ってみることができる。担当者の話では、早ければ今週末にも同社のホームページからβ版をダウンロードできるようになる見込みだ。 |
http://www.iij.ad.jp/whatsnew/seil.html IIJのブースでは、5月28日発表されたばかりのダイヤルアップルーター「SEIL(ザイル)」を展示している。 DHCPサーバー機能やNAT/NAPT機能など、最近のダイヤルアップルータの流れを押さえつつ、IIJ4Uで提供されているIPマルチキャストに対応している。8月より29,800円で同社のユーザー向けに販売、頃合いを見計らってIIJユーザー外への販売をスタートするという。SEILはDSUを内蔵していないため、SEILとSEILと同じデザインの「IIJ DSU」も合わせて提供される。 |
IIJ DSU(上)、SEIL(下) |
http://www.ttnet.ad.jp/special/index.html
東京通信ネットワーク株式会社(TTNet)のブースでは、56KモデムによるダイヤルアップIP接続サービスのデモを行なっている。実は、昨年のN+Iでも同じ内容のデモを行なっていたのだが、結局未だに認可すら申請していない。担当者は「来年初頭にもサービスを開始できるのでは」と回答してくれた。もしスタートすれば、通話料込みの価格体系になることが予想される。 |
http://www.lab.kdd.co.jp/kdd/lab/marine/JaMaPS/JaMaPSindex.html 国際電信電話株式会社(KDD)のブースでは、「JaMaPS」(本誌2月10日号参照)と呼ばれる一風変わった地図ソフトのデモを行なっている。複数のPostScriptファイルをレイヤーとして重ねあわせて表示させることができるJavaアプレットだ。 基本的な地図データを格納したPSファイルの上に、別ファイルでおいしいラーメン屋情報などをマッピング、さらに別ファイルで道順を表示する、といった利用法が考えられる。システムとしてはすでに国土地理院に導入されており、地図情報コンテンツの提供者に売り込んでいるところだという。 担当者は、将来的にはGIFやJPEGなどの画像、MPEGなどの動画もサポートしていきたいと話していた。 |
('98/6/5)
[Reported by okiyama@impress.co.jp / nagasawa@impress.co.jp / yuno@impress.co.jp]