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【実験報告書】

数理技研が「上田市xDSL利用実験」の報告書を発行

有線放送電話網での「xDSL」技術、実用化に向け着々と実験が進む

■URL
http://www.lab.kdd.co.jp/ina/jpn/index.html (伊那市xDSL利用実験のページ)

 '97年11月から'98年1月にかけて長野県上田市で行なわれた「xDSL利用実験」の報告書が発行された。この実験は、'97年9月に長野県伊那市で実施されたxDSL利用実験(本誌'97年8月28日号参照)同様、「有線放送電話網」を利用して行なわれたもの。報告書は上田xDSL利用実験連絡会の発行で、実験のシステム構築に参加した株式会社数理技研が監修にあたっている。

 有線放送電話網とは、主に農山村地域での通信媒体として利用されているもので、通信と放送の機能を兼ね備えた回線網だ。銅線による通信網のため、同じく銅線を利用して高速通信を可能にするxDSL技術に応用できるとして実験の舞台として選ばれた。

 伊那市の実験では、xDSL装置の性能評価が中心であったが、上田市の実験では周辺機器/技術に関する検証に焦点が当てられた。そのなかでも特に興味深いのは「ISDNとの干渉実験」。現在、xDSL技術のフィールド実験を行なっているNTTでは、「ISDN用の回線とxDSL用の回線が同じ束にまとめられるか、または、隣接した束にあるだけで干渉を引き起こす」としており、ISDNとの干渉問題をクリアすることは一般電話回線網を利用したxDSL通信の実現には避けて通れないものであった。xDSLの一種「ADSL」へのISDNからの影響を探る実験では、線路長を川西本局~浦里支局間の2.5km固定で設定、隣接回線のISDNからの近隣漏話によってADSLの伝送レートがどう影響を受けるかを測定した。結果は、同一束を含む隣接20回線からのISDN多重漏話を受けた非常に厳しい状況下では、かなり伝送速度が落ちるなどの影響が認められた。しかし、それでも1Mbps以上で通信可能であることが確認できたという。また、逆にADSLからISDNへの影響について、報告書では「さほど問題ではなく、緩い収容条件の制限で回避でき得る程度」としている。

 また、ネットワークコンピューター(NC)を利用した実験も行なわれた。xDSL技術により各家庭に高速のネットワークが届くようになった場合、現在のパソコンより管理の簡単な端末としてNCが候補にあがったという。実験で使用されたNCは、日本サンマイクロシステムズの「JavaStation」。ADSLネットワーク経由でブートサーバーから起動するのに必要な時間が計測された。デモ用に設置したADSL接続環境での伝送速度は下り2.2Mbps。結果は、JavaOSが起動するまで70秒、2台を同時に起動させた場合は72秒と、10BASE-T接続での起動時間62秒よりやや遅い程度というものであった。報告書では、この結果をもって「センターにブートサーバーを置き、ADSLで接続されたリモートサイトでJavaStationを運用するのは十分実用的である」としている。

 ほかには、ADSLより伝送速度の速いHDSLによる接続実験も実施された。ここでは、8.48kmの距離で1.5Mbpsの速度での接続が実現したという。これは、公表されたxDSLによる接続距離としては最長のものとのこと。

 今回の実験は、有線放送電話網という極めて限られた環境で行なわれたもの。電話回線と同質の「線」を使っているとはいえ、今回の実験結果を一般に敷設されている電話回線網に簡単にあてはめられるものではない。しかし、少なくともある条件下での有効性が実証されたのは意義のあることだ。なお、「上田xDSL利用実験 報告書」は、頒価1,000円で入手可能だ。また、URLは未定だが、近日中にホームページ上に概要を公開する予定とのこと。

◎問い合わせ先
株式会社数理技研
TEL 03-3356-2781

('98/7/17)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp