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【レポート】

各社がインターネット広告のビジネスモデル確立を模索

インターネット広告業界の会議「Jupiter Online Advertising Forum」レポート


panel 市場調査会社のJupiter Communications主催によるインターネット広告関連企業の会議「Online Advertising Forum」が、ニューヨークで8月11日から13日まで開催された。今年で3回目を迎える同会議では、NetGravityDoubleClick、また24/7Mediaなどのインターネット広告企業、また、Webサイト向けのバナースペース管理ソフトウェアを開発するSolbright社などの新興企業がブース展示やパネルディスカッションを行ない、インターネット広告業界の未来について語り合った。




AOL社長、大いなる可能性を示唆

bob 12日の基調講演では、AOLBob Pittman社長兼COO(写真)が「広告業界は現在1,200億ドルの巨大市場であり、インターネット業界にとって広告市場は非常に大きなビジネスチャンスがある」と語り、今後のインターネット広告市場の急成長を予測した。同氏は「米国家庭の半数がパソコンを所有しているが、そのなかでインターネットに接続しているのは半分に過ぎない」とし、さらなるネット人口の増加に加え、技術発達や帯域幅の向上により、電子商取引(EC)ユーザーは急増すると語った。

 Pittman氏は「1,200万人を超えるAOL会員の属性は、61%が既婚、49%が女性であり、多くが教育を受け専門職についている。彼らがAOLに集まる理由はブランドと便利さであり、その40%がECサイトを訪れている。ユーザー属性や購入傾向などこれらのデータを利用すれば、既存のメディアよりインタラクティブでターゲットを絞った広告が打てる。我々はインプレッションではなく消費者を提供するのだ」と語った。


●新たな広告モデルの構築を目指して

 3日間にわたるパネルディスカッションでは、広告料金の設定方法や広告スペース管理、またサイト視聴率の問題など10以上のトピックが議論された。11日に開催されたパネルディスカッションでは、新たなインターネット広告モデルの構築を目指して、DoubleClickのKevin O'Connor社長兼CEO(写真)Engage TechnologiesのPaul Schaut社長兼CEO、Modem Media.Poppe TysonのG.M. O'Connell会長兼CEO、Organic OnlineのJonathan Nelson社長兼CEOなどが激論を交わした。

kevin インターネット広告料金は現在、CPM(広告を1,000回露出させるのにかかるコスト)ベースの料金設定がほとんどだが、CPMベースではユーザーが広告を見ているのか見ていないかが分からないので、クリックスルー率や製品購入率ベースでの料金設定を要求する広告主も増えている。クリックスルー率を高めるために、EngageのSchaut社長はリッチメディアの必要性を強調し、ユーザーの帯域幅に合わせてリッチメディアを流すなど、ある特定の情報によりバナー内容を変えることが重要だと語った。

 また、広告主は無数のサイトの中からターゲットに応じたバナースペースを効果的に購入し、それらのパフォーマンスをトラッキングする必要がある一方で、サイト側は広告のローテーション/管理/報告をする必要がある。アドサーバーサービス「DART(Dynamic Advertising Reporting & Targeting)」を提供しているDoubleClickのKevin O'Connor社長兼CEOは「我々は、スケーラビリティやカスタマイズの面で優れたService Bureau(サービス提供型)を提供している」と語った。ShrinkWrap(パッケージ)型の代表とされるNetGravityも11日、IBMとの提携により同様なサービス「AdCenter」を発表した。


●正確性に欠けるユーザー情報

 現在、インターネットのユーザー登録率はサイト訪問者の15%であり、そのうちの60%以上が誤りとされている。Netcentivesは正確なユーザー情報を得るため、データ登録と引き替えに飛行機のマイレージ・サービス、製品交換が可能な「ClickPoint」通貨提供などのインセンティブを与えている。また、Emaginetでは、ECサイトで製品を購入するとデジタルクーポンがもらえる「e-centives」サービスを提供している。
 さらに、ユーザー情報も年齢や年収などの属性のみではなく、よく訪れるサイトや購入パターンなどのBehavior Profile(行動プロフィール)を重視する傾向が強まっている。Infoseekでは、広告のクリックスルー率を高めるために、ユーザーの行動プロフィールを学習しワンツーワンで広告を表示する「Ultramatch」サービスを提供している。Infoseek Worldwide Advertising SalesのBeth Haggerty副社長は「'96年後半から開始したUltramatchサービスは、オンライン旅行サイトや自動車販売サイトのクリックスルー率を大幅に高めた」と語った。


●将来は巨大市場に

 インターネット広告市場は、'96年の2億7,500万ドルから'97年には9億650万ドル市場に急増しており、さらに2000年には50億ドルを超えると予測されている。この数字は広告業界全体から比較すれば2%程度のシェアにしか過ぎないが、将来的にはインターネットが巨大な力を持つメディアになり、インターネット広告市場の規模は飛躍的に高まるだろう。'94年、HotWiredによりウェブ広告ビジネスが開始されて以来、数々の大手広告代理店がインターネット広告業界に押し寄せてきた。しかし、テレビやラジオのように放送局数の制限がないため、買い手市場になりCPM価格が下落したり、サイト視聴率が不正確で信頼性に欠けるなどの数々の問題が浮上している。

 現在、人気サイトを測定する、Media MetrixNetRatingsNielsen Media ResearchRelevantKnowledgeといったサイトトラフィックリサーチ企業では標準策定に向けての努力を行なっているが、各社ともに異なる調査方法や技術を使用しているため、標準策定には時間がかかるものと見られている。たとえば、Nielsenでは電話でサンプルを探し、承諾をした人にトラッキング・ソフトウエアを提供するという方法を採っているが、ソフトウエアをダウンロードした時点で本人が本当に見たいサイトを見ない可能性が高くなる。また、Media Metrix以外はサンプルグループが6,000人以下であり、これでは正確な測定ができない。

 今年の会議は山積する問題に対しての問題提起といった感が強かったが、そのなかでもアドサーバー企業、サイト向けフロントエンド広告管理ソフトウエア、リッチメディア向けツール、広告プロモーションサービスなどを提供する多彩な企業が集まり、インターネット広告ビジネスの収益モデル構築や技術標準化が着実に進んでいることを示すものとなった。

('98/8/17)

[Reported by HIROKO NAGANO, iMMERS Inc]

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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp