米国政府は16日、暗号製品の輸出規制を緩和する方針を明らかにした。輸出認可手続きの簡素化や、輸出認可対象業種の拡大などが盛り込まれている。
現在、米国外への輸出が認められている56bit DES方式の暗号製品では、犯罪やテロなどに利用された際、捜査当局が暗号を解読するための合い鍵を第三者が保管しておく「キーリカバリー」機能を搭載することが義務づけられており、認可の際は保管者の審査が必要となる。今後はこれに対する手続きを簡略化し、製品の技術的な審査を一度受けるだけで、一部の国を除き、あとは認可なしで輸出できるようにする。また、56bit以上の強力な暗号製品については、キーリカバリー機能の有無に関係なく、認可対象となる業種を拡大。現在、世界45カ国の銀行、金融機関が対象となっているが、これに保険会社、医療機関、オンライン通販会社を追加。さらに、一部の国を除き、米国企業の子会社にも輸出を認めるとしている。
事実上、今回の規制緩和により56bit DESによる暗号技術は広く輸出できるようになる。しかし、7月に行なわれた米RSA Data Security社主催による暗号解読コンテストでは、56bit DESによる暗号が3日弱で破られており、現在ではその信頼性を疑う声も多い(本誌7月21日号参照)。解読に成功したElectronic Frontier Foundationは、今回の規制緩和政策に対し「未だにこの程度の暗号技術しか自由に輸出できないのでは意味がない」とコメント。また、依然としてキーリカバリー機能を必要とすることについて、プライバシー侵害や暗号強度に対する問題が残ると指摘している。
('98/9/17)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp / Hiroyuki Et-OH]