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【イベントレポート】

インターネットが金融業界全体を変革する

金融テクノロジー会議「Financial Technology Expo」レポート


■URL
http://www.financetech.com/fintech/index.html (Financial Technology Expo)

 Miller Freeman社主催による金融テクノロジー会議「Financial Technology Expo」が、ニューヨークで9月15日から17日まで開催された。今年で7回目を迎える同会議では、250社を超える金融情報サービス企業や電子商取引(EC)システム開発企業が参加した。中でも「USWeb」「Icon CMT」など急成長中の戦略インターネット・サービス企業に注目が集まり、インターネットが金融業界全体に与える多大な可能性を示唆するものとなった。


Bloomberg氏、今後の展望を語る
http://www.bloomberg.com/

bloomberg 初日の基調講演では、Bloomberg Financial Markets社の設立者、Michael R. Bloomberg CEO(写真)がインターネットを含めた今後の金融業界の展望を語った。同氏は「現在、経済のグローバリゼーションにより多数の問題が表出している。しかし、真の問題は通信やデータ入手/管理、法的規制などの技術的なものではなく、通貨の信頼性など、長期的な予測モデルの構築を阻害する文化的な問題である」と語った。

 また、インターネットに関して「購読、広告、ECという売上モデルのうち、購読モデルで成功した企業は少なく、広告もCPM値(1,000回露出あたりの広告料金)は下降線を辿り、ECもカタログと同様の低利益率ビジネスになっている」と語った。同氏はさらに「インターネット銘柄ほど過大評価されている銘柄はない。'80年代のバイオテクノロジー企業が現在では数社しか残っていないのと同様、将来生き残るインターネット企業は僅かになるだろう」と厳しい見解を述べた。Bloomberg氏は「生き残るのは、本当に必要なサービスを提供する企業だ。ゴールドラッシュで最終的に儲けた人々はジーンズ屋だった」と語り、インターネットというゴールドを追いかける企業よりその周辺で派生するニーズに応える企業が成功することを示唆した。


低価格のECソフトが登場
http://www.acunet.net/ (Acunet社)
http://www.checkfree.com/ (CheckFree社)

 EC市場は、米政府の調査によると2002年までに3,000億ドル市場に膨れ上がり、Forrester Researchの調査でも'97年の80億ドル、'98年の170億ドルから2002年には3,270億ドルになると予測されている。この成長市場に向け、Open MarketやiCat、また、IBMなどの企業からECソフトウエアが多数登場しているが、スタートアップ企業(新興企業)のAcunet社もまた低価格のECソフト「AcuShop」を発表した。1,000ドル前後でスケーラブルなソリューションを提供するAcuShopは来月から提供が開始される。同社ではまた、「Yahoo! Store」などと同様のECサイトのホスティングも行なっており、月々200ドルで500製品のオンラインストアを開設できるサービスを提供している。

check また、金融業界向けEC決済システム開発の代表的な企業であるCheckFree社では、Windows対応のポートフォリオ管理システム「CheckFree APL Plus」を発表した。これには取引システム決定サポート、トレーダー用受注管理、統合クライアント・データベース、アカウント管理が含まれている。同社はJ.P. MorganやCitibankをはじめとする300以上の金融機関に対してホームバンキング、EC決済システムを提供しており、昨年は企業250万社、消費者150万人による150億ドル相当のオンライン決済を処理している。



ECコンサルタントが急成長
http://www.usweb.com/index.html (USWeb社)
http://www.icon.com/ (Icon CMT社)

usweb また、同会議で特に注目を集めたのが、USWeb、Icon CMTなどの戦略インターネット・サービス企業である。
 2年前に元Novell幹部により設立されたUSWeb社は、有機的なインターネット企業ネットワークを構築するというユニークなコンセプトにもとづき、スタートアップ企業を次々と買収している。同社はBarnes & Noble、Sony Music、またNBC Interactiveなど700社以上と契約しており、昨年は1,930万ドルの売上を計上した。USWebは今月初めにCKS Groupと合併することを発表しており、これによりFortune 100社のうちの44社に技術/マーケティング通信サービスを提供することになる。

 一方、企業向け通信インフラを提供するシリコンアレー(ニューヨークのインターネットビジネスが集合する地域)の優良企業であるIcon CMT社は、この会議で、証券や銀行、保険会社などの金融サービス業界向けの通信インフラ提供サービスを本格的に手がけることを発表した。同社は、Datek OnlineやBear Sternsなどの通信システムの構築を手がけており、その他にもCNETやCBS New Mediaと戦略インターネット・ソリューション契約を結んでいる。同社はまた、企業サーバーを管理室で預かり24時間の管理を引き受けるというユニークなサービス「Genesis」を提供している。これにより、企業ではサーバー設置スペース、IT人件費を大幅に削減することができる。Genesisサービスはサーバー1台につき月々750ドルから。なお、Icon CMTは同週、Qwest Communications社に買収されたことを発表した。



Nortel社のキオスク端末

変革期まっただ中の金融業界

 インターネットがもたらす電子マネーや新たな決済システムの登場により、金融業界は現在大きな変貌を遂げている。インターネット上での決済が普及すれば、企業は金融機関を通さずに企業間での決済を行なうようになり、金融機関の決済手数料による売上が激減する可能性がある。さらに、資金の運用や貸出の仕組みも変化し、自由化や国際化による競争の激化とあいまって、金融機関はインターネットを使用したシステムの効率化、電子マネーを組み込んだ新たな金融商品の開発が不可欠になる。

 年収2億5,000万ドル以上の米大手金融サービス企業1,000社に対してUSWebが行なった調査によると、93%が今後数年以内にインターネットを使用した本格的なシステムを構築する計画であるという。将来的にはインターネット・バンキングがATMと同様に普及すると予測されているが、家庭のパソコンや駅のキオスクから請求書の支払いや証券取引、また口座確認を行ないたいという消費者ニーズに対応するためには、ECシステムを迅速に導入した企業が生き残ることになるだろう。

('98/9/22)

[Reported by HIROKO NAGANO]


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