【イベントレポート】
電話業界とインターネット業界の融合が一層促進
CT関連企業の会議「Computer Telephony Demo & Expo 98」レポート
Miller Freeman社主催によるCT(Computer Telephony)関連の会議「Computer Telephony Demo & Expo 98」が9月23日から25日までニューヨークで開催された。
「CT」とは、コンピューターを使用して電話の送受信を管理するという意味で、'92年にComputer Telephony Magazine誌のHarry Newton元出版人により初めて用いられた造語だ。
今年で3回目を迎える同会議では、200社を越えるCTシステム開発や統合メッセージング企業が集まり、多くの最新技術やCT製品/サービスを披露した。特にIPテレフォニー開発企業のVocalTec社やEricsson社、また統合メッセージング企業のActive Voice社やCallware Technologies社、CTシステム開発企業のBrooktrout Technology社などに注目が集まり、電話業界とインターネット業界の融合が一層促進していることを示す会議となった。
■オープンCTシステムへ向けて
http://www.dialogic.com/ (Dialogic社)
初日の基調講演では、PBX(構内交換機)などの音声処理ボードで70%の市場シェアを占めるCTコンポーネントのトップメーカー、Dialogic社のHoward Bubb CEO(写真)がインターネットの電話業界に対する影響や、CTのオープンシステム開発の重要性について語った。同氏は「CTのオープンシステムの確立は、PBXなどの少数の標準プラットフォームを除き、今まさに始まったばかり。コンピュータ業界ではOSが基準になるが、電話通信業界ではいまだにハードウェアが基準となっている」と語った。同氏はまた、'83年に登場したオープンCTサーバ・モデルが将来的には独自技術にとって変わり、IPテレフォニー技術の導入と相まって電話業界を大きく変革するだろうと語った。
同氏は「たとえば、現在の方式で通信システムを構築すると、PBXやACD(Automatic Call Distribution:かかってきた電話を均等にオペレーターに分配する機能)に7万ドル、IPテレフォニーやファックスサーバー、ボイスメールに各2万ドル、その他経費を含めて総計17万ドル前後のコストがかかる。しかし、すべての機能がソフトウエアで提供されるオープンCTサーバーではコストが大幅に削減され、データベースシステムとのリアルタイム統合が実現する」と語った。同氏はさらに「通信システムに関する世界規模での規制緩和と、インターネットの幅広い普及」により、コンピューターシステムや通信システム全体を大きく変貌させるIPテレフォニーの時代が到来するだろうと予測した。
■IPテレフォニー企業に人気集中
http://www.vocaltec.com/ (VocalTec社)
http://www.ericsson.com/ (Ericsson社)
会場ではIPテレフォニー企業にとくに注目が集まり、なかでもこの分野のパイオニア的存在であるVocalTec社のブース(写真)には多数の来場者が訪れた。
同社の代表的なVoIP(Voice Over IP:IP上での音声通信)製品「Internet Phone」はITUの規格H.323に準拠したクライアントソフトで、'95年に発売されて以来人気を博している。同社は、インターネットと従来の公衆交換電話網をつなぐゲートウェイ「VocalTec TGW」の開発で有名だが、今年2月には、これに「Gatekeeper」や「Network Manager」といった製品を加えた包括的なソリューション「VocalTec Ensemble Architecture (VEA)」を発表している。VEAにより何千ものゲートウェイの管理が可能になり、世界規模でのIPソリューションが提供できるようになる。
Ericsson社もまた、エンドユーザー向けの「Phone Doubler」とゲートウェイ「IPTC Gateway」を提供している。同社のゲートウェイはISPの「iGlobal」、「Delta Three」により採用され、とくにDelta ThreeではIDT社のインターネット電話サービス「Net2Phone Direct」よりも安価なIPテレフォニーサービスを世界規模で提供している。例えば、ニューヨークから東京に電話をかける場合、1分間の通話料がAT&Tでは1.45ドルかかるのに対してIDTでは34セント、Delta Threeではさらに安く30セントしかかからない。その他、Clarent社、NetSpeak社、eFusion社などもVoIP製品を提供している。
■SF小説の世界が現実に:統合メッセージング技術
ファックス、電子メール、ボイスメール、ビデオなどの送受信を統合する統合メッセージング技術は、便利なだけではなく企業の大幅なコスト削減や効率化につながるため、導入する企業が急速に増えている。また、PCに向かって話しかけるだけでファックスや電子メールを読み上げてくれる音声認識機能付き製品など、SF小説の世界が現実になったような製品もある。
この分野では、Lucent Technologies社、Nortel社などが大手企業向けソリューションを提供しているが、今年はとくにActive Voice社やCallware Technologies社などの小規模企業向けの製品を開発している企業が注目された。Active Voiceは、PCベースの統合メッセージング技術の草分け的企業であり、NTベースの通信サーバー「unity」はIPベースのPBXにも対応している。また、'94年に設立されたCallware Technologies社は、NTやNovell NetWareに対応する統合メッセージングシステム「Callegra」を提供している。
■電話会社の生き残りのカギはIPにあり
MultiMedia Telecommunications Association(MMTA:米国マルチメディア電気通信協会)の調査によると、'97年に企業がCTシステムに費やした金額は前年比49%増の130億ドルとなった。MMTAではまた、CTワークステーションの出荷台数は価格低下、コスト削減、顧客サービス強化から2001年には450万台に達すると予測している。また、Yankee Groupが社員1,000名以上の企業250社に対して行なった調査によると、77%以上の企業がCTベースのソリューションを導入した、もしくは、今後6カ月以内に導入する予定であると回答しており、CTシステムの企業導入が急速に進んでいることを示している。
一方、IPベースの通信システム構築も大きく期待されている分野だが、既存の電話会社のなかにはアクセス料金の徴収源を絶たれるなどの理由でIPテレフォニーに抵抗を示す企業もある。しかし、Deutsche Telekom(DT)社などのように、同社の通信システムを本格的にNTベースのIPシステムに移行するなど積極的な展開を行なっている企業もある。DTでは、IPテレフォニーへの移行は競争力のあるサービスを提供するうえで必要であるとしている。電話会社、またその他の企業ともに、これらの新技術にいかに柔軟に対応していくかが今後の生き残りのカギだといえる。
('98/9/29)
[Reported by HIROKO NAGANO]
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