Internet World最終日の9日、基調講演を行なったAdobe SystemsのJohn Warnock会長兼CEOは、Webグラフィクス革命がネットエコノミーを成長させる原動力になるとし、近い将来、インターネットは検索機能やインタラクティブ性に加えて、印刷物のような質の高いデザインやイメージを提供する媒体として大きく生まれ変わるだろうと語った。同氏はまた、Webのベクター形式グラフィックスの言語仕様である「Precision Graphics Markup Language(PGML)」をベースとした2種類の新しい技術デモを行ない、会場から喝采を浴びた。
同氏は「インターネットの将来はTVというよりも、洗練されたグラフィクスを提供する印刷物モデルに近いものになるだろう。Web広告とともにネットエコノミーの中核部分を占める電子商取引(EC)では、これらのグラフィクスの質の向上が非常に重要になる。Webを静的なものと考えて、HTMLに何年間もとどまっている必要はない」と語った。
また「現在、90%のWebマスターがイメージ編集にPhotoshopを使用しているが、どのツールを使用してもイメージをビットマップに変換せずに、完全な解像度や色あいのままでWebに掲載できたらすばらしいだろう。我々は、このようにWebを次のレベルに引き上げるプラットフォームを開発している」と語った。
Warnock氏はまず最初に、Webサイト全体をひとつのPDFファイルにダウンロードする技術をデモした。何百、何千というページから構成されるサイトをひとつのファイルにまとめることで、全ページのサムネールが閲覧できる。また、興味のあるグラフィクスのあるページをクリックすればそのページが閲覧でき、Webでは不可能なイメージの拡大、質の高い印刷も可能になる。さらに、検索エンジンなどで幅広く使用されている「Spider」(ロボット)技術を使用してニュースサイトの更新記事を自動的にファイルに追加することもできる。ダウンロードに時間がかかるのが欠点だが、Warnock氏によるとダウンロードしたファイルは画質の劣化なしに1/3以下のサイズになるという。
同氏は次に、PGMLで作成されたインタラクティブな地図をデモした。拡大したい箇所をクリックすれば画質の劣化なしにイメージの拡大ができ、印刷も解像度に依存しないため、画面上に表示されたイメージと同質のイメージが印刷できる。PGMLはプラグインなしでダイナミックなイベントやアニメーションを備えたページの作成を可能にする言語仕様であり、今年4月、Adobe、IBM、NetscapeおよびSun MicrosystemsによりW3C(World Wide Web Consortiums)に提案されている。
Warnock氏は最後に「インターネットはまだ幼児期にあり、今後大きく変貌を遂げるだろう。我々は、印刷物と同等の表現力を持ったWebグラフィクスの実現に注力し、インターネットを変革することに焦点を絞っている」と語った。
('98/10/12)
[Reported by HIROKO NAGANO / iMMERS Inc.]