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【イベントレポート】

WIDEプロジェクト10周年記念シンポジウム開催

 インターネットの技術の研究や基盤作りを積極的に行なっている「WIDEプロジェクト」は、発足10周年を記念して都内でシンポジウムを開催した。
 WIDEプロジェクトは、人と社会に貢献するコンピュータ環境の構築を目標として'87年から活動を開始。メンバーは、大学の研究者や企業、政府の研究者と技術者で構成されており、いくつかの研究グループに分かれて次世代技術の実験や開発に取り組んでいる。

 WIDEプロジェクト代表の村井氏は開催の挨拶で、各研究グループが集まって集中的に実験を行なう合宿を年2回開催しているが、「'88年の5月に初めて行なった時はたった5人程度だった参加者も、現在では250人ぐらい集まる」と当時の合宿の写真を見せながら、大規模なプロジェクトに成長したことを振り返った。

 シンポジウムでは、ウイスコンシン大学教授のローレンスH.ランドウエバー氏が基調講演を行ない、米国を中心に世界各国のパートナーと共同で進めている「インターネット2」などについて語った。また、「次世代インターネットプロトコルIPv6は必要か」、「なぜインターネット後進国になったのか?」という2つの議題についてのパネルディスカッションも行なわれた。IPv6に関するパネルディスカッションでは、東京大学の江崎氏が司会を努め、WIDEの村井氏、日本シスコシステムズの森川氏、日立製作所の池田氏、NTTソフトウェアのポール・フランシス氏らがそれぞれの立場からなぜ必要か、なぜ必要性がないかなどを語った。討論では、「NAT(Network Address Translation)などもあり、IPv4のエンハンスで事足りる」といった意見や、「コストが高い、誰がどう使うのかわからない」、「ユーザーがIPv6を必要としないと動けない」など辛口の意見が目立った。一方で、「セキュリティの問題などを真剣に考え始めたら必要になるのは必至。IPv6を意識させない移行をすればよい」、「家電などIPがインプリメントされていない機器はマーケットとしても興味深い。関係ないエリアにIPv6を」などの意見が交わされた。

 次に行なわれたディスカッションでは、「『なぜインターネット後進国になったのか?』という質問がWIDEに寄せられるが、WIDEメンバーはリードしている部分もあると思っており、理解しにくかった」として、この意味は何なのか、日本は何をすべきかなどを討論。村井氏が司会を努め、デジタルガレージの伊藤氏、慶應義塾大学の中村氏、メディアエクスチェンジの吉村氏、東京大学の青山氏、国際大学グローバルコミュニケーションの公文氏らが参加した。「アメリカは今お金が余っている。少しぐらい高くても、いいところがあれば買いたがっている。このままだと重要な資産や人的資産は外国にいってしまう。今は観光地化しているが、そのうちお客が来なくなる観光地になる」など、現在の日本の状況を危ぶむ声が多かった。「次世代のインターネットを握る者が21世紀の覇権を握る。キーテクノロジを日本から出さないとダメ」、「何も使われない実験を繰り返していても無駄。それに気づくのが遅れると外国にも遅れる」などの意見が交わされた。

 このほかには、WIDE10周年を記念してFreeBSDとIPv6をプリインストールしたリブレットの特別モデルを披露。表には、WIDEのロゴが入っている。これを懇親会で15台、限定販売した。



('98/10/27)

[Reported by junko@impress.co.jp]


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