本誌11月26日号でお伝えした、シャープの携帯端末「“コミュニケーションパル”MT-200」。320×240ドットのモノクロ16階調液晶とキーボードが一体した、携帯電話とつないでメールやWWWができる携帯端末だ。第一印象では、「パワーザウルス」と「ポケットボード」の中間のような感じだ。この製品を12月4日の発売に先駆けて入手できたので、2日間の使用レポートをお伝えする。
まずパッと見た目、パールホワイトの筺体がなかなかカワイイ。シャープの狙いどおり女性受けしそうだが、持ってみると予想していたよりも大きくて重い(重さは310g)。日頃筆者が利用しているパワーザウルスMI-506と並べると重さも大きさもほぼ同じだった。日頃もうちょっと軽い端末が欲しいなと思っていただけに、個人的には少々がっかり。裏を返してみると、携帯電話との接続ケーブルが収納されている。
開いてみると、メニューの絵が子供っぽくて、ちょっと言い過ぎかもしれないが雰囲気はおもちゃの端末。一目で女性ユーザーを意識したとわかる作りで、ボディに合わせてキーボードは白いプラスチックでまとまっている。一部、カーソル部分などにグリーンやブルー、赤のキーも使われている。社内の女性からは、「OL層ではCMのように外で広げて使うにはちょっと恥ずかしい」という意見もあった。個人的にはもし持っていたら使うだろうな(実際に電車などで使った)という程度ではあるが、確かに隣をのぞき込みたくなるぐらいには目立つ。
まずキーボードから電源の「入」ボタンを押すと「基本インデックス」が立ち上がる(ザウルスのように画面クリックでは起動しない)。「基本インデックス」は、メールとアドレス、スケジュールの機能にワンタッチで移行できるメニューだ。このメニューは、ザウルスカラーポケットの基本インデックス画面と非常によく似ている。どの画面で電源を切っても、起動するときにはまずこの画面が立ち上がるのも同じだ。
バックライトがないので、暗いところでは操作が難しいこと、少々グレーが濃い(もちろん調整しても)のが気になるが、さすがはシャープ、液晶はやはり綺麗だ。
WWWを見ようとした場合、もしくは初めてメールの送信をしようとした場合には、インターネットの設定画面に切り替わる。ニフティやSo-net、BIGLOBEなど15社のプロバイダーに入っている人なら「インターネット接続設定アシスト」があるので設定は簡単。ダイアログの表示通りにアクセスポイントの番号(一部入っているものもある)とID、パスワードを入力するだけで済んでしまう。他のプロバイダーのユーザーも特別に難しい設定はない。10円メールの設定も簡単で、10円メールと通常のプロバイダー接続との切り替えもできる。
筆者の場合、ニフティを設定したところ、メールが送受信できずに少々悩んでしまった。が、結局なんのことはない、従量制のユーザーの場合、インターネット経由(POP3/SMTP)でニフティのメールを送受信するには月1,000円の別オプションが必要(INTERWAYなどから瞬時に設定できる)だったのだ。ふだん直接ニフティでメールを読み書きしているユーザーは気を付けよう。
入力は、キーボードもしくはペンでのクリック。ザウルスシリーズでは、手書き認識を使ってメールが書けるが、MT-200には残念ながら手書き認識はない。ソフトキーボードも数字と絵文字だけだ。付属のキーボードは、なぜか一番右端が「P」までで、通常のキーボードの感覚で打つと文字が一つずれてしまう。「I」のつもりが「U」を打つといった具合だ。特に違和感があるのは「@」と「/」の入力で、「@」はなんとシフト+改行キー、「/」はシフト+後退キーだ。特に「/」はうっかりシフトを忘れると前に打ったものが消えたりしてイライラさせられる。
ついでに電車の中などで、両手で本体を抱えつつ親指で打ってみたり片手で打ったりしてみたところ、たまに同じ文字を重ねて打ってしまったりはしたが、キーボードの横幅があるのでそれほど苦労ではなかった。かえってその方が楽なぐらいだ。
メールには、文字だけでなく手書きのメモや、他のザウルスなどから得た写真などを添付できる。「手書きメモ」を操作する画面から「電子メール」をクリックすると直接メール機能に移動して添付できるため、添付したいファイルを選んだり、コピー&ペーストなどをする手間がない。ただし、逆にメール画面から添付ファイルは選べないようだ。添付されたファイルは標準のMIME形式で送信されるので、MT-200ユーザー同士やザウルスユーザーはもちろんのこと、パソコンユーザーでもMIMEの添付ファイル対応のメールソフトを利用していれば受信できる。また、MT-200のユーザー同士ならば、便箋風の絵柄が入ったメールを送信できる。この場合、MT-200以外のパソコンやザウルスユーザーには絵柄が添付ファイルとなる。
メールの宛先指定はとても簡単だ。宛先設定画面では、アドレス帳にあらかじめデータを入力しておくと、名前とメールアドレスの一覧が出てくる。宛先に指定したい人をクリックし、TO、CC、BCCのいずれかのボタンをペンでクリックすると、その通りに宛先が打ち込まれる。もちろん直接任意のアドレスを直接入力することもでき、入力したアドレスをアドレス帳に追加するのも簡単だ。少々戸惑ったのが宛先を削除するとき。つい「削除」という言葉を探してしまったのだが、実は画面内にある「宛先を外す」という項目をクリックすればよかったのだ。
試しにINTETENT Watchを受信しようとしたが、なぜか受信できず。調べてみたら、「条件設定」の部分で長いメールをスキップするように初期設定されていたためだった。制限を解除して再度試してみたところ、無事受信できた。なお、制限を解除しても最大64KBまでのメールまでしか受け取れない。ちなみに、1通500文字とした場合、おおよそ1,200件まで保存できるとのことだ。
しかし、受け取ったINTERNET Watchを見てみると、横全角25字(縮小表示モードでは全角37文字)までの受信のため、5行広告の部分は読むのが少々苦しい。
とはいえ、決して機能が低いわけではない。3つまでの条件を設定して、受信したメールを分類することもできるのだ。メールの受信簿から「分類条件」をドラッグすると、条件に合ったものが表示される。通常のメールソフトで振り分けるのと似たような感じだが、同時に複数のボックスを開くことはできない。
なお、おもしろいというか、メールをかなり意識しているとわかるのが、キーボードにあるメール「送信」と「送信」の二つのキー。ケーブルを繋ぎ、電源を電源を入れてこのキーを押せば、それだけでメールを受信できるのである。慣れるとなかなか便利だ。
実際に接続してみると、モノクロでもかなり綺麗。640×480ピクセル相当の表示ができるのはやはり嬉しい。しかし、9,600bpsの接続なので仕方がないが、表示が速いとは言いがたい。通常は画像読み込みをオフにしておいたほうがよさそうだ。ブラウザーはHTML3.2相当。プログレッシブJPEGやJavaには対応していない。
機能的には、ブックマークがつけられるほか、ブックマークのリストから見たいページを指定してオートサーフィンをさせることもできる。この機能を実行すると、指定したページがダウンロードされ、自動的に接続が終了する。朝出かける前にニュースサイトなどをオートサーフィンさせて、電車の中でトップページのヘッドラインを見るといった使い方もできる。
発表された当初、写真やスペックを見てNTTドコモのポケットボード対抗かと思ったのだが、実際に使ってみた感想としては、女性向けの簡易ザウルスなのだと思う。
MT-200にはポケットボードにある、ショートメールやポケベルにメッセージを送れる機能がない。ポケベルはドコモ端末相手ならWWW上からも送れるが、便利な機能だけに非常に残念。できれば、各キャリアの文字メールサービスに対応する機能が欲しかった。
見たところ一番近い携帯端末は、ザウルスカラーポケット。モノクロにして、モデムを外して、乗り換え案内などの機能をとり、携帯電話用のケーブルを内蔵させて、キーボードをつけた印象。シャープお得意の「手書き認識」が省かれているのは少々残念だが、38,800円という値段を考えれば仕方がないかもしれない。
初めての人でもとっつきやすいのはもちろんのこと、触ってみると意外に高機能でよくできている。が、私が買うか? といえば残念ながらNOだ。すでにパワーザウルスユーザーの私としては、アドバンテージがあまりないからだ。
ちなみにパワーザウルスの場合、携帯電話との接続ケーブルを買おうとすれば2万円はするし、後付けなので格好もあまりよくない。それを考えると、携帯電話とのケーブルが内蔵されていてこの値段はやはりなかなかのものなのだ。低価格でインターネットが楽しめて、アドレス管理、スケジュール管理もちゃんとできるのだから、携帯端末を初めて持つ人や手軽にメールやWebを楽しみたいという人は買いだ。
('98/12/3)
[Reported by junko@impress.co.jp]