【レポート】
来日中のDell Computerのオンライン部門ディレクター スコット・エッカート氏が記者向けの説明会を行なった。Eコマースやユーザーサポートなどでインターネットへ注力している同社のインターネット戦略について聞いた。
「現在Dellは、資材調達の8%、売上げの20%をインターネットによっている。これを2000年までに調達の33%、売上げの50%をオンラインであげるのが目標だ」
とスコット・エッカート氏は言う。エッカート氏はDellのインターネット戦略の責任者といえる役職にあるとはいえ、最近では珍しいほどインターネットとEコマースについて前向きな発言だ。
「インターネットで買い物をするためには、いくつかの敷居を越えなければならないことは認める。したがって、100%インターネットにすることは難しいが、50%にすることは比較的簡単なことだ。インターネットはそれだけのメリットを皆にもたらす。すでに、'98年第3四半期で、Dellのインターネットによる売上げはワールドワイドで8億6千万ドルに達している」
具体的に個人ユーザーにとってのメリットはなんだろう。
「Dellから顧客へのインフォメーションはWebで提供することによって、顧客はオンデマンドでカスタマイズされた情報を得ることができる。
たとえば、個人ユーザー向けには、自分のオーダーしたPCがいまどんな状態にあるのかをWebで確認できる“オーダー・ステータス”というサービスを今年始めた。そして今は週に10万件のアクセスがある。これだけの要求に電話で応じることを考えれば、Dellのコストも削減できていることがわかるだろう。
また、顧客はシリアル番号を入れるだけで、その機種のサポート情報が表示される。サポート関連のページは5万ページもあり、マザーボードの仕様書など、かなり詳しい情報も提供されている」
「企業向けには“プレミアページ”が大きな比重を占める。これは大口顧客に対して専用のページを用意するものだ。そのページに行けば、その企業の購入履歴、社内標準仕様の確認、担当者の連絡先などが確認できる。もちろん、その企業専用の見積もりが即座に取れ、専用の購買ページからオーダーできる。もちろん個数に応じたボリュームディスカウント(大口割引)も自動的に計算される。
プレミアページは、当初は米国内のトップ企業を対象にしていたが、現在は400~500名の中企業以上を目安に、8,500社のページがある。IT部門が独立している規模というのがもう一つの目安だ」
「プレミアページは、その企業に対するもっとも重要な営業ツールであり、営業担当者が自分で更新している。10~15人の開発チームが更新用のツールを作っており、そのツールを使えばデータベースからボタン一つで更新できるようになっている。だいたい1回の更新は30分ぐらいだ。
価格についてはある程度、データベースを修正することで自動的に行なわれる。ただ、企業向けの調達はある程度期間が必要なため、商談中は価格は固定される」
「日本国内向けはまだ立ち上げたばかりで、開発と営業が共同で作業しなければならない段階にある。
現在、プレミアページは米国内の企業向けが6,500、米国外企業向けが2,000だ。企業に合わせて18カ国語で提供している。最終的には米国外の企業のページの方が多くなるだろう。企業によっては、このシステムを利用することで百万ドル以上の経費を削減した例もある」
「ある企業の例で言えば、Dellに切り換えたことで調達部門の人員の4分1が削減された。購買の手続きが簡略化されるからだ。また、導入機種に向けたサポート情報の提供で、テクニカルサポートの費用が200万ドル削減された例もある。また、質の高い標準機種を設定することで、サポートの負担は軽くなる。
プレミアページなどのサービスによって、Dell以外から調達しようとした時に“スイッチングコスト”が発生するようになる。スイッチング・コストは、デルが提供していたシステムを自前で用意するための時間と費用だ。これがあるので顧客はDellを選び続けてくれる」
これだけ手厚いシステムが組めるのは、Dellの主力商品が利益を確保しやすいハイエンドに寄っているから可能なのではないか。今後進むPCの低価格化により、利益が確保できなくなればシステムが維持できないのではないか?
「忘れて欲しくないのは、Dellの直販システムは、他社のシステムよりも無駄が無くローコストなことだ。PCが500ドルになっても、300ドルになっても、他社に対するアドバンテージと利益は確保される」
だが、エッカート氏は満足しているわけではない。
「現在、我々は非常にいいモデルを作り上げている。しかし、インターネットは動きが早い。アドバンテージは6~9カ月しかないだろう。我々も自分自身をアップグレードし続けなければならないのだ」
('98/12/17)
[Reported by 編集部]