【連載】
アクロスtheインターネット ロゴ
 ニュースや雑誌に頻繁に登場する国でも、その生活事情やIT事情は案外知られていないものです。あまりなじみのない国だったら、なおさらです。この連載では、世界各地にお住まいの方から、生活者の視点で見たインターネット事情や暮らしについてレポートします。

第18回 不思議な不思議な日本製品 ~コスタリカ~

●リサイクル・イン・コスタリカ

イラスト・Nobuko Ide
 こんにちは、コスタリカの加瀬です。今回はコスタリカのリサイクルショップについて紹介したいと思います。
 コスタリカには「compra venta」という店があります。日本語に翻訳しますと「売ります、買います」という感じですね。そういった店が集まっている通りがあるのです。商品を持込んだ人から安く買い取り、それを第三者に売るというシステムになっていまして、下取り価格は市価の2割、販売価格は5割から8割、といったところでしょうか? 腕時計や宝石などの装飾品、ウォークマン、テレビ、ラジカセ、CDプレイヤー、カセット、大工工具、バッグ、サッカーボール、乳母車、ギター、コンドームなど、品そろえは豊富です。
 格好良く言えば“リサイクルショップ”という呼び方をしますが、私たちは「泥棒市場」と呼んでいます(笑)。

 建前は「盗品売買不可」となっていますが、それを全部の店が守っているかどうかは知りません。以前カメラを持ってフラフラ歩いていたら、「おい!そのカメラ買うぜ!」と、たくさんの声をかけられました。私はいつも「駄目だよ、だってこれ、盗んだんだから」と答えていたのですが、すると私に声をかけてきた人間の100%から、「no hay problema」(問題ない)という素晴らしい返事が返ってくるのでありました(笑)。なんだ、やっぱり盗品も買っているのねぇ。
 どうみても「おいらは泥棒だい!」という格好をした方が、その身なりからは想像も及ばない宝石類、腕時計、なぜが工具のドライバーやらを売っていました。私は幼少の頃から両親より「見た目で人を判断してはいけません」という教育を受けていたので、「きっと彼は一見泥棒のように見えるけれど、実は真面目な人なのだ」と思うように努力しました。「こいつ、どこからか盗んできた物を売っているんだろうな」などとは露ほども思いませんでした(笑)。
 また、偶然見かけた、店側と、一見泥棒のような身なりをした男性との攻防は素晴らしい物でした。

泥:「おい、もっと高く買ってくれよ、この時計は日本製だ!」
店:「だめだ、古いし傷がついている」
泥:「だったら、他に持っていくからいいよ!」
店:「そんな盗品みたいな物はどこも買わないよ!うちくらいだ!」
泥:「わかったよ……、でももう少し色をつけてくれよ」
店:「そうだなぁ……、まあ、1,000くらい余計につけたるよ」
 この勝負、店側の勝利に終わりました。

通称“泥棒市場”はこんな感じ。私も普段はあまり来ないところです(笑)

●人気の日本製、が、よく見てみると……?

 さて、コスタリカにおいて日本製品のイメージは、「高品質、世界最高水準」です。自動車、電化製品、ゲーム機器などはコスタリカでも有名です。自動車ですとトヨタを筆頭に、ニッサン、スズキ、ダイハツ、三菱などが知られています。電気製品はHITACHIが一番人気、ゲームはNintendo64やPlayStation、PlayStation 2などが猛威をふるっています。
 さて、泥棒市場を“さも、何かを探しているような素振り”で歩いていると「おい!何を探しているんだ!」という声を、イヤと言うほどかけられます。私はテレビを探していたので、そう伝えると、「最高品質の日本製がある」との答え。ワクワクしながら出てきたテレビに付いていたロゴを見ると、「HITACHI」でした。しかし、そのHITACHIはリモコンなし、ビデオ端子なし。幼少のころ時に使っていたチャンネルをつまみで変えるもの……。よく見ると、HITACHIの“HI”と“TACHI”の間に、電子顕微鏡を100倍くらいにしないと見えないような点があります。そう、“HI・TACHI”となっているんです。それはバレーボールやバスケットボールなどで、チームメイトが手を頭上で叩き合い、お互いを健闘しあう“ハイ・タッチ”と同語のようです(笑)。どうやら(というか、どう見ても)、私の知っているHITACHI製品ではないようです。買わない意思を伝えると、今度は別のテレビが出てきました。確かにMADE IN TOKYOと書いてあります。通常ならMADE IN JAPANとなっていそうなものですが、なぜかTOKYOでした。そしてメーカー名は「SANKEY」。サンケイと発音するそうです。私の記憶には電気製品を製造・販売しているサンケイという会社が存在しなかったので購入を控えました。
 さらに泥棒市場を歩いていると「PlayStation 2が5,000コロン!」(5,000コロン=約15ドル)という看板を見かけました。PlayStation 2は、通常は新品ですと800ドルくらいします。日本よりずっと高いのです。「おい!そりゃ嘘だろう?でも、仕入れ値が無料に近かったら、それも可能かも……」と思いながらも店を覗くと、確かにそれは存在しました。が、よく見ると、“Polystation2”でした(笑)。うーん、とっても興味があるんだけれど、購入にまでは踏み切れないものがあります。

 なかなか飽きない泥棒市場、コスタリカに訪れたら、一度足を踏み入れてみてはいかがでしょうか? その際は、自分の持ち物には気をつけてくださいね、そうしないと貴方の時計やバックが店頭で売られることになりますよ。

ショーウィンドーはこんな感じ。カメラを出した瞬間、「それデジタルカメラか?買うぞ!」の声が飛んできました 値札には“PolyStation ピストル付き”と書いてあります(笑)

◎執筆者紹介◎
カセ・カズキ  1973年生まれのO型、牡羊座。初めてのコスタリカ訪問は1995年、某電気会社の海外出張でした。その時からこの国に魅入られ、その後何度も旅行した後、1997年に退職してコスタリカに住みついてしまいました。大学生や某機関の事務員などを経て、現在は寿司を売りながら農場を経営している変わり者。妻と超可愛い男の子2人の4人家族です。
◎加瀬さんのホームページはこちら

 ◎次回はタイ在住のGENさんが登場します。お楽しみに!

◎「アクロスtheインターネット」その他の回はこちらから

(2002/02/01)

[Reported by 加瀬和城]


INTERNET Watchホームページ

INTERNET Watchグループinternet-watch-info@impress.co.jp