【連載】
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 ニュースや雑誌に頻繁に登場する国でも、その生活事情やIT事情は案外知られていないものです。あまりなじみのない国だったら、なおさらです。この連載では、世界各地にお住まいの方から、生活者の視点で見たインターネット事情や暮らしについてレポートします。

第21回 ソウル電脳街を歩いてみよう ~韓国~

イラスト・Nobuko Ide
 第1回目の連載でも書きましたが、韓国の大学は、12月末で全学期が終了し、2月28日まで休みとなります。何と、2ヶ月ほど休暇があります。当然、この期間を利用して日本に帰っているわけですが、帰国すると、友人や家族からは、「いいなぁ~」と冷やかされます。確かに世間的に見ればとてつもなく長い休みになるわけですが、こっちはその間に論文書いたりせねばならないので、暇は全くないんですよね。むしろ、学期期間より忙しいくらいです。実は、今年も正月返上で端末と向かい合っていました。

●量販店はありません ~ソウル電気街の実態

 さて、半年続いたこの連載も、私の分は今回で最後ということで、ソウル電脳街の案内をしたいと思います(ソウル以外の都市についてはよく知らないので、この点、ご容赦ください)。日本でも「IT先進国」と持ち上げられている韓国ですが、果たして小売りの現場はどんなものなのか?

 ソウルの電脳街というと、何をおいても龍山(ヨンサン)です。ガイドブックなどを読めば必ず出ていますから、知っている方も多いでしょう。もともとは米軍基地で知られていた地域ですが、近年は電脳街の方がすっかり有名になりました。
 アクセスは、地下鉄1号線の龍山駅下車。ここで降りれば、迷うことはないでしょう。駅の改札をくぐると、いきなり電気製品店がずら~~~っとならんでいる駅ビルに出ます。このビルだけでお腹一杯という感じになるのですが、このビルから通路を通って街中に出ていくと、さらに電気製品店がずら~~~っと並んでいます。
 もう一つのルートが、地下鉄4号線の新龍山駅から向かうというもの。ここから電脳街に行くには、鉄道(1号線)の地下道をくぐって行かねばならないので、ちょっと面倒かもしれません。行くなら、地下鉄1号線を使うほうが楽です。

 日本の秋葉原に比せられる龍山ですが、規模はそこまでいかないにしても、片っ端から見学しようと思ったら、ゆうに半日は潰れるでしょう。私も隅々まで回ったことはありません。置いてある製品も、多種多様。PC関係だけではなく、携帯電話やゲームをはじめ、基本的にはありとあらゆる電気製品が置いてあります。電脳街というよりは、電気街ですね。
 そういう意味でも、秋葉原と似たような感じになるわけですが、一つ大きな違いがあります。龍山には「量販店が存在しない」という点です。
 確かに、巨大なショッピングモールや駅ビルは存在します。ただ、それはあくまで空間を貸しているに過ぎません。中味は、どれもこれも小規模店舗の集積。10㎡程度に仕切られた空間に、小売店が所狭しと並んでいる感じなのです。
 ショッピングモールでは、各フロアごとに家電とかPCとかの棲み分けがありますが、これらの小売店がさまざまな商品を扱うことによって、フロア全体でその分野の製品をカバーする形になっています。例えば、ある店でパーツを購入して足りない部品があると、他の店に聞いて持ってきてくれたりします。この辺は、適度に「共生」してる感じです。
 これは、電気街に限ったことではなくて、東大門や南大門といった市場でも共通の現象です。最近、これらの市場にも巨大なビルが建てられ、多くの人を集めていますが、中味は、露天並みの小売りが集まったものです。こうした店舗を集積することで、買い物客のニーズに応えようとしているわけですね。

龍山のソフト店の軒先。ゲームやビデオCDが並ぶ 日本アニメのビデオCD。違法コピー商品ながら品揃えは豊富 龍山のショッピングモールの内部。このあたりのノリは日本と同様 お馴染みのロゴが並ぶモール内

●テーマパーク的な電気街・テクノマート

 また、近年、龍山以外に注目を集めているのが、地下鉄二号線江辺(カンビョン)駅の目の前にある巨大ビル、テクノマートです。
 韓国全土がIMFショックで打ちひしがれている1998年にオープンしてしまったテクノマート。当初は、出店する業者も少なく、巨大なフロアには空きスペースが多く残っていました。開店直後に物見遊山に行ったのですが、「客より店員の方が多いよ!」と涙を誘う状態でした。
 しかし、近年は新たな電子街としてすっかり定着。各フロアには店舗がぎっしり並び、いつ行っても人であふれています。韓国の経済状態が極端に好転したとも思えないのですが、えらい変わり様です。また、シネコン(複合型映画施設)が併設されているせいもあってか、休日ともなると、押しくらまんじゅう状態です。食堂街もあるし、適度な「遊び場」という感じです。
 このテクノマートも、基本的な構成は龍山と同じで、小売り店舗の集積です。中央が吹き抜けになっていて、各フロアがPCや家電に分けられています。PCフロアには、ゲームソフトを扱っている店も多数出店しています。日本のものは、まだ正式には入ってないようですが…まあ、その辺は、探せばあるようですね。

 さて、電子街を紹介したとなると、やはり違法ソフトがどうなっているのか、触れないわけにはいきません。
 アジア各国は、それぞれに違法ソフトの横行という問題を抱えているように思いますが、それは韓国も同様です。韓国は「IT先進国」を自称していますが、この点に関しては、悪い意味で「先進的」かもしれません。
 先日、この原稿の取材のために龍山に出向いた時には、とある地下通路で、壁に大きな紙でソフトの一覧が張り出してあるのに出くわしました。要するに、違法ソフトのリストが張り出してあるんですね。品目は、普通のアプリからゲームまでさまざまです。ソフトが欲しい人は、その中から選んで、業者から品物を受け取るというシステムになっていました。写真を撮ろうかと思ったのですが、流石に怖いので止めました(^_^;)。

 ただ、こういった風景も、徐々に消え去りつつあります。韓国でも、違法ソフトに対する取り締まりが年々キツくなってきていて、以前のように「龍山に行けば嫌でも手に入る」ような状態は、流石になくなってきました。ほんの2~3年前には、一号線の駅ビルから電子街に抜ける通路で違法ソフト販売業者(?)が通路に商品を広げて堂々と売りさばいていたのですが、最近はちょっと控えめになってきています。それなりに取り締まりもやっているようで、警察がやって来て、業者が荷物抱えて逃げていく姿を見たこともあります。
 もちろん、こんなことが日常的にあるわけではなくて、これらはイレギュラーなもの。普通じゃないからこういうものに目がいくわけで、街中に違法ソフトが溢れているとか、そういうものではありません。普通のものは普通に売ってます。この点、誤解なきよう。

テクノマートの外観 「TM」のロゴが光るエントランス 中央部は吹き抜けの構造 番外編・ネットに接続できる公衆電話

◎執筆者紹介◎
マツモト・シンスケ 韓国の慶熙(キョンヒ)大学で、「こんにちは」から「いてまうど、われ」まで、多種多様な日本語を教えています。現在の目標は、タクシーの運転手と言葉を交わしても、日本人とバレないような韓国語の発音を身につけること。

 ◎次回はコスタリカ在住の加瀬さんが担当します。お楽しみに!
◎「アクロスtheインターネット」その他の回はこちらから

(2002/02/22)

[Reported by 松本真輔]


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