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ニュースや雑誌に頻繁に登場する国でも、その生活事情やIT事情は案外知られていないものです。あまりなじみのない国だったら、なおさらです。この連載では、世界各地にお住まいの方から、生活者の視点で見たインターネット事情や暮らしについてレポートします。
イラスト・Nobuko Ide
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海外にいても新聞、雑誌は欠かせません。我が家では「海外新聞普及OCSサービス」を利用し、日本の雑誌は発売日に、新聞も2日遅れで手に入ります。でも、はやりのニュースはオンタイムで知りたい。そこで利用するのが、通信社(「共同通信社」)や新聞社(「朝日新聞」、「読売新聞」、「毎日新聞」)のサイトです。現地のテレビニュースでアフリカ関係の気になるニュースを見かけたら、「BBC」で確認します。放送英語を耳から聞いて理解するのは難しくても、文字情報ならじっくりと読み進められます。知らなくても困らないけど、それでも気になるのが芸能ゴシップです。新聞の広告欄の見出しだけでは消化不良。そこで「Yahoo!Japan」を利用して探し当てたのが、夕刊フジの「ZAKZAK」。日本の芸能界の動向も、これでとりあえずフォローできます。
白菜、ほうれん草、ねぎ、もやし……以上は、ヨハネスブルグの高級スーパー「WOOLWORTHS」で手に入る野菜です。最近はお米、ノリ、ワサビ、しょうゆを販売するなど、南アフリカのスシブームを反映した品揃え。ためしにお米とノリを購入してみました。中華食材店のお米やノリに比べるとお値段が張りますが、品質自体は悪くありませんでした。ちょっと怪しい「SUSHI」の詰め合わせも販売していて、現地の人たちに人気があるようです。
野菜の話に戻しましょう。ヨハネスブルグには日本食材店が1軒と、10数軒の中華食材店があります。日本食材店は日本食レストランに併設されていて、店主一家が育てたシソの葉、ダイコン、ごぼうなどを手に入れることができます。でも、主な野菜の入手先は中華食材店。季節によりますが、ダイコン、サトイモ、ニラ、枝豆などが店頭に並びます。ス入りのスカスカダイコンやいくら煮込んでも歯が立たないサトイモだったりしますが、それでも貴重な野菜の入手先です。
十分ではないけれど和食の食材もそれなりに手に入るヨハネスブルグですが、毎日の夕飯には頭を悩ませることが多く、メニューも偏りがちです。そこで料理関係のサイトをチェックして、目新しい料理を探したり、突然、食べたくなった料理のレシピを探します。わたしのお気に入りは、「のんたんのお菓子工房」や、圧力鍋を使ったレシピが検索できる「T-FAL ティファール」。レシピを探して手作りしたものは、いなり寿司、金時豆、五目豆、豚の角煮、栗の渋皮煮、シュークリーム、スフレチーズケーキ、カスタードプリンなどなど、数え切れません。
中華食材店や日本食材店で売っている豆腐も手作りしました。一晩水につけた大豆をミキサーにかけたものを沸騰させて木綿でこし、にがりを入れて固める「木綿豆腐」です。最初は時間がかかって大変でしたが、回数を経るごとに手際もよくなりました。手作りといえば、駐在員の奥様方は和洋問わずお菓子つくりが上手です。イチゴ大福、栗まんじゅう、チーズケーキ、ティラミス、レーズンサンド。自分で創意工夫を凝らしたお菓子を作る方もいて、お茶会のあとにはレシピのコピーが交換されます。
高級スーパー「WoolWorths」のエントランス | 「WoolWorths」の食材。海苔・ワサビ・ガリですが、日本とはちょっと違う顔? | 中華食材店「シルバースター」の店内 | 「シルバースター」は日本食材や調味料も充実しています |
●愛犬の健康管理もネットで
愛犬、ンニャマが我が家にきてから、さらにインターネットの利用時間が増えました。しつけ、病気などなど悩みはつきません。子育て経験のないわたしにとって、たかが犬のことではあっても、大問題。ここで、インターネットの出番です。しつけや生活習慣上に関して「愛犬家フォーラム」に何度もお世話になりました。トイレトレーニングのよい方法、じゃれて甘噛みするときの対策などなど。経験豊かな愛犬家が自らの経験をもとにさまざまなアドバイスをしてくれます。
ンニャマはアレルギーに関しても、当地の獣医と相談しながら、シャンプーや食べ物などを改善しようと試みました。でも、「細胞検査」「マラセチア(酵母の一種)」などの用語をすぐに理解できるわけはありません。そんなとき、助けられたのが「日本臨床獣医学フォーラム」。獣医師の先生方が丁寧に答えてくだいます。ンニャマの症状、治療の経過を書き込んだところ適切な回答をいただきました。
日本から家族や知人が遊びに来るというのは大きなイベントです。久しぶりに顔を合わせるのもうれしいし、日ごろ欲しいと思っていたものを手に入れるチャンスです。そんなときも、インターネットの出番です。企業のHPでお目当ての製品の機能や価格を調べれば、「望みのと違う商品を手渡されてがっかり…」という悲劇は防げます。日本にいなくても、最新の商品情報がチェックできるなんて、インターネットがあるからこそです。
日本にいたら怖くて利用できなかっただろうネットショッピング。海外にいると、欲しいものを間違いなく手に入れるには、写真、商品情報などを自分の目でチェックできるネットショップは心強い存在です。わたしも、書籍や犬グッズを購入しました。読みたい本をネット上の書店で検索して注文して宅配サービスを利用すれば、日本の家族や知り合いにお目当ての本を探して書店巡りをさせることもありません。クレジットカードの使用に不安があっても、代引き制度などを利用すれば安心です。世の中、本当に便利になりましたね。
お菓子作りも日常的。辻料理学校のレシピで作ったダッチビスキッツ | お世話になった「日本臨床獣医学フォーラム」 | '95年に日本人会(次項で登場)が出版した「南ア生活ノート」には、南ア暮らしのTIPSが満載 |
●海外の日本人の生活を変えた!
さて、ヨハネスブルグには「ヨハネスブルグ日本人会」があります。約700人の会員がいて、ソフトボールやテニス大会で親睦を深めたり、防犯情報の交換をしています。各種イベントのお知らせ、邦人被害情報などはメール配信。おかげで夫のように、現地事務所に日本人駐在員が一人しかいないという家庭でも、情報の共有が容易になりました。日本人会開設のホームページはありませんが、在住者でホームページを開いている方がいます。1年に1度、砂漠の表面をワイルドフラワーが覆い尽くすナマクワランドの写真を撮り続けている写真家の澤野新一朗さんや、旅行社のサザンアフリカエージェンシー、南アツアーズなども、南アフリカの魅力をWebを通して発信しています。
一昔前は、情報を集めるのにも大きな苦労を伴った海外赴任生活ですが、ネットの発達で、さまざまな情報を探しやすくなっています。駐在者や駐在経験者が赴任地の生活情報などをホームページで公開したり、海外駐在の決まった方が情報求めて書き込める掲示板なども少なくありません。有名なサイトですが「転勤妻」には、海外赴任、帰国時などの諸手続きや各国生活情報などが充実しています。
ネットを通せば、同じように海外生活を送る人と出会えます。そういった利点を活かして海外にすむ主婦が情報を共用するためのネットワークも結成されています。海外在住主婦のネットワーク「Fnet」は、イギリス(UK-Fnet)、フランス(FR-Fnet)、ドイツ(GE-Fnet)など国単位のグループも結成され、世界各地の会員はメーリングリストで情報交換をしています。
海外生活は日本にいてはできない経験ができる反面、言葉や生活習慣の違いから孤独を感じやすいように思えます。赴任先で友達ができて楽しく過ごしていても、ふと寂しくなる瞬間があるのです。そんなとき、パソコンを開いて自分の趣味関連のHPをのぞいたり、家族や友人にメールを書くことで気持ちを紛らわすことができます。それに、日本語に接するだけでも、癒されるような気がします。わたしもパソコンがなければ、ホームシックにかかったことでしょう。周囲の方々も、日本の家族や知人とメールのやりとりしています。お米や味噌も海外生活には欠かせないものですが、パソコンもなくてはならないもののひとつだといえそうです。
◎執筆者紹介◎ カネコ アヤ 夫の転勤に伴い、ヨハネスブルグに転居して一年半。日本では新聞社の記者を経て、ライターをしていましたが、いまはボビンレース、ステンドグラス、デコパージュなどの趣味に生きてます。目下の楽しみは、ブラックのラブラドールレトリーバ・ンニャマ(ズールー語で黒・生後八ヵ月)の成長。悩みは、運動不足からの体重増加と、上達しない英会話。 |
(2002/03/15)
[Reported by 金子 理]