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【連載】

 アウトバーン通信 ~独国的電網生活 

【編集部から】
 インターネットといえば、かつてはアメリカ独走の感がありましたが、最近ではヨーロッパやアジアなど、世界各国でインターネットが盛んに利用されています。この連載では、ドイツで暮らしているkajoさん・taogaさんのお二人が、現地の最新インターネット生活をレポートします。

第13回 ドイツの若者の携帯事情を垣間みる (by kajo)

イラスト・Nobuko Ide

■携帯電話がないと、生きていけない!?


 ある日、教え子のY君(18歳)が学校を欠席した(注:私は週1日、とある公益法人で教えている)。どうしたのかと弟のT君に尋ねてみたところ、「ゆうべ、携帯をなくした!と大騒ぎして、朝まで探しまくっていたんですよ。それで、今頃は寝てます」。
 おやおや、真面目でハンサムな好青年のY君は、どうやら携帯をなくして欠席してしまったらしい。
 その翌週、Y君はその時のことを話してくれたが、彼は「もう、携帯がないと生きていけない~、大変だー!って、必死で探していたんです。友達の電話番号とかの情報も全部、携帯に記憶させてあったから、あれがないと連絡ができない」と焦っていたのだった。結局、その携帯は見つからずじまいだったそうだが。

■昨今のドイツではトレンディ-なシロモノ


 私は、携帯電話が苦手だ。日本を離れて4年、その間の日本での携帯電話の猛烈な普及は、驚きを通り越して自分の故国の出来事とは思えないくらい、実感のないことのひとつ。昨年春に一時帰国した際、家族全員が携帯電話を所持していた事実は、私を唖然とさせたものだった……。
 もちろん日本で編集者をやっていた頃だって、携帯を持っている人たちはいた。相手が持っていてくれないと困るような現場で働いていた。ただし、自分は持つ必要はなかったけれど(編集部で徹夜とかしてたからね)。でもいまだに「携帯電話を持つ=縛られる」といった強迫観念があるし、ドイツではそんなに追われるような忙しい生活はしてないので(苦笑)、ここでも携帯を持たずに暮らしている(たまに不便を感じるのも事実だが)。

携帯電話とPDAのサイト「Handy.de」。中には着メロ作曲アプレットもある
 さて、4年前にドイツに来たころにも、もちろん大きな携帯電話を持つドイツ人(ドイツに住む外国人も)は目に付いた。電車に乗っていても、大きな音で平然と呼び出し音を鳴らし、大声で堂々としゃべる輩はそこここに存在していた。
 しかし、最近の普及率といったら、それはもう日本に近づいていると言っても過言ではないだろう。とにかく、若者が持つようになった。安全のために子供に持たせる場合もある。若者が持つからには、携帯電話もおしゃれで小型化している。テレビコマーシャルの数も多くなったし、確か去年のクリスマス・プレゼントのトップのひとつは携帯電話だったと記憶している。最近は、通りを大きな声で独り言を言いながら歩いている怪しいヤツ……と、ぎょっとすることもなくなった。ちなみにドイツでは日本のように満員電車で通勤する人はいないので、これまで携帯の呼び出し音がうるさいとか、もっと小さい声でしゃべれ、という論議はあまり聞いたことがない。もちろん、デリカシーのあるドイツ人も存在するけれど、とかくドイツ人は声が大きいので、仕方のないことなのかもしれないし(?)。
 ちなみに、ドイツでは携帯電話のことを「Handy」と呼ぶ。

■SMSって何?


 とにかく、ドイツでの携帯の存在が大きくなるにつれ、それを持たない私には馴染みのない言葉も氾濫してくるようになった。コマーシャルでやってる「SMS」とか「WAP」って何よ?と思いつつ、そのまましばらく放っておいたのだけれど、最近はドイツのサイトをさまよっていても、「SMS」というサービス項目が目に付くし……。そろそろWatcherとしては多少なりとも何であるかは知っておかなければと、ようやく重い腰を上げる気になった。

「Handy.de」内の携帯電話カタログより。ユニークなデザインも多い
 そこである日、冒頭に登場したY君を含め、教えているクラスのティーンエイジャーたちに、携帯使用状況を尋ねてみることにした。想像していた以上に、それらは彼らの生活に浸透しているものだった。以下は、彼らより伝授されたミニ・ドイツ携帯事情である。

 「SMSは、携帯でやりとりできる文字によるメッセージのこと。携帯からメールを送ることも出来るけれど、それは有料。インターネットから携帯にメールを送る時は無料。最近では400字にまで文字制限が増えた」
 「WAPは、携帯で見られる情報。でも、読み込みが遅いし、エクストラ料金になって高いし、あまり面白いページ、情報がないので、使わなくなった」
 「最近は、携帯で話すよりも、SMSでメッセージを送るほうが多くなった。そのほうがお金もかからない。ただ、すぐ返事を書かないと怒る友達も多い。みんなに一斉にメッセージを送るのにも便利。遠方に住んでいる彼女には、1日5回くらいSMSでメッセージを送ることもある(照れ笑い)」
 「雑誌かテレビで日本の携帯電話を見た友達が、あれはドイツでは使えないの!? と聞いてきた。あの小さいのが可愛いし、iモード(だと教えてあげた)もぜひ使ってみたいって言われた」

 …というわけで、ざっとさらってみたのだが、とにかく友達はみんな、携帯を持っているらしい。そして重要なコミュニケーションツールとして、すっかり定着しているらしい。自分でバイトもしているY君は、恐らく携帯電話の料金は自分で支払っているのだろう。それより3つ年下のHさんは、プリペイド・カード式の携帯を使っていると言っていた。彼女の携帯の支払いは、まだ両親持ちなのだろう。いずれにしても、彼らは無駄遣いはせず、上手に携帯を使いこなしているような印象を受けた。
 なかに1人、まだ持つのをためらっている女生徒がいたが、彼女もそろそろ持つべきかなぁ……と揺れているそうだ。本当は周りに左右されるのを拒みたかったし、あまり進んで携帯を持つ気にはなれなかったらしいのだけれど。

 ふと思い出したのだが、ドイツでも盛んなトークショウ番組の中で、「SMSなしでは生きられないほどのめりこんでいる」出演者を募集していた。そろそろ、そういった問題も表面化し始める頃なのかもしれない。

■とりあえず、携帯にメールを送ってみたけど……


独Yahoo!のWapブラウザー体験画面。Wapのサービスを疑似体験できる
 とにかく「なぁんだ、そういうものだったのか」と今さら納得した私は、これまでインターネットでも素通りしていた「SMS」(Short Message Service)や「WAP」(Wireless Application Protocol)のコーナーを覗いてみることにした。

 例えば、「Excite Deutschland」(ドイツ版Excite)のWAPコーナーは、なかなか充実しているように見える。生徒たちは面白くないと言っていたけれど、結構ヴァラエティーに富んだ情報が提供されているようだ。ニュース、スポーツ、ホロスコープ、株価情報、個人の予定など……。また登録すれば、自分専用にカスタマイズしたWAPエキサイト・サービスも、無料で利用できるようになっていた。また「Yahoo! Deutschland」(ドイツ版Yahoo!)のモバイル・コーナーでも、WAPサービスが提供されている。(編集部注:上記のWAPサイトは通常のWebブラウザーからは使えない。左の画像から飛べる「独Yahoo!」のWAPブラウザーから体験可能だ)
 WAPが使える携帯のイメージとしては、ここはいかがだろうか。また、携帯の総合情報として、ここここなどは、お得な料金比較サービスも充実していて、なかなか役立ちそうなサイトである。

 それでは私も早速、携帯にメールを送ってみようと思い立ち、次に「Excite Deutschland」のSMSサービスをチェックしてみた。そこでは、無料で携帯にメッセージが送れるサービスが提供されている。国番号を選び(もちろん日本は含まれていないが、それにしてもざっと見ても60ヶ国以上はある。そんなにメジャーなサービスだったとは……!)、携帯電話番号を入力し、後はメッセージを書くだけ。さすがに生徒たちの携帯に先生からメッセージが届いても楽しくないだろうから(苦笑)、「携帯でメールは使えるみたいだけど、全然使ってみたことはない」と語っていたドイツの友人と、フランスの友人の携帯電話に抜き打ちでメッセージを送ってみた。果たして無事届いたのかな、そして彼らはちゃんと読めるのだろうか。
 発信側の情報を入力する欄は全くなかったので、メッセージに自分の名前は含めたけれど、「携帯→Eメール」というのは、通常のEメールとはサービスの概念が異なるものなのだろう。まぁ、私は携帯を持っていないのだから、自動返信は有り得ないし……。唯一の活用方法としては、普通の電話から携帯にかけると電話料金が高いから、ちょっとしたメッセージを送るのに使えれば、私にとっては便利かもしれない(ただし、相手がSMSを使いこなしてくれればの話!)。それとも、毎日SMSを駆使している生徒たちに「明日は学校に遅刻しないでちゃんと来ようネ!」とか「宿題はちゃんとやりましたか?」などというメッセージを送ろうか(いや、やめとこう)。まあ、ティーンエイジャーのようにSMSが必需品というわけでもないし、たぶん私はこの先も、ドイツで携帯電話は持たずに済ませていくのだろうなぁ……。

◎著者自己紹介
  ドイツに住んでもうすぐ4年(ええっ)。未だドイツ語上級レベルへ達する努力を怠ったまま、日々をドイツ流(?)にのんびり過ごしている。最近になってオペラやバレエ鑑賞と、今更ながら「別のドイツらしさ」を再認識している、ドイツ・ロック畑で働いていたフリーライター。でも心はすでに、4月に新作がリリースされるRAMMSTEIN(ラムシュタイン)。炎満載の熱いステージを体験できるのは、まだ先のことだけど…。

(2001/02/09)

[Reported by kajo]

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