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【編集部から】
インターネットといえば、かつてはアメリカ独走の感がありましたが、最近ではヨーロッパやアジアなど、世界各国でインターネットが盛んに利用されています。この連載では、ドイツで暮らしているkajoさん・taogaさんのお二人が、現地の最新インターネット生活をレポートします。乞うご期待!
■待ち望んだフラットレートが登場!
イラスト・Nobuko Ide
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しかし、ドイツは“電話代が高い”のだ。独テレコムの占有が終わり、新規の参入によって、遠距離や国際電話の料金はここ1~2年で格段に安くなった。それでも市内料金は最後まで独テレコムが牛耳っていて、一向に安くならなかったのだ。日本のテレホーダイのようなサービスはなく、あっても“指定した番号は安くかけられる(基本料金有り)”というサービスが数種類のみ。いまだにアナログでダイヤルアップ接続をしている私(こんな私がここに記事を書いていてごめんなさい)にとって、ネットに接続する際の電話代の高さがかねてからの悩みだった。月平均の電話料金は約200マルク。円換算すれば今でこそ1万円足らずだが、ドイツにおける物価から考えればその倍といった感覚だったので、フラットレートが実現する日をまさに待ち望んでいた。
そして、遂にその日はやってきた。今年6月から、T-Onlineがフラットレートサービス「T-Online flat」を実施するという朗報が伝わってきた。ISDNのみならず、私のようなアナログユーザーも対象内で、電話代込みでなんと79マルク(税込み:約4,000円)! 早速、5月末に申込みを済ませ、来るべき「つなぎっぱなし」の贅沢を味わえる日を心待ちにしていたのだった。その後、どれだけのストレスの嵐に見舞われるとも知らぬまま……。
■問題の発端は郵便配達人だが……
ちょっと話はズレるが、ドイツの郵便事情は意外と悪い。配達人が郵便物を盗んだとか、どこかに捨てていったとか、郵便受けに入りきらずに出ていたものが盗まれた(これは近所の人による犯行だろうが)とか、そういう良くない話をちらほら聞く。かくいう私も、アパートのオートロックの入口を通った後に設置されている郵便受けから郵便物がたびたび盗まれ、非常に神経質になっていた。
そんな状況でT-Onlineからの郵便物を心待ちにしていたが、なかなかやってこない。ある日、不在届け(在宅しているのに呼び鈴を押さず、勝手に不在届けを入れていく配達人も多い)が入っていたので、それを持って郵便局に出向いた。書留だからきっとT-Onlineだろうと思いながら。すると、係員の冷たい一言。
「これ、配達した日から1週間が経過しているから、送り主に返送されてるわよ」
そう言われて初めて用紙の日付を見れば、まさに1週間と1日前。でも、私は前日にこの用紙を受け取ったのだ! ブリブリしながら主張したが、返送されてしまったものはどうしようもなかった。
トラブルの元の郵便受け。この日もはみ出してる郵便物がチラホラ
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が、もちろん話はこれでは終わらない。
その数日後に、再びT-Onlineからパッケージが届いた。何故また? と思ったが、一応開封。そこには、別のIDとパスワードが記された文書を発見。どうやら二重に発行されてしまったようだと気付いて、そのパッケージを即返送した。加えて、すでにアカウントを受け取っていて、そのアカウント1つしか必要ない旨を、T-Onlineに再びFAXとメールで通知しておいた。しかしその1週間後、また不在届けが入っていた。再び郵便局に出向いたら、またもやT-Onlineのお馴染みのパッケージがそこにあった。その場で、即座に返送を依頼。頭の中は「T-Onlineの奴等、きっと嫌がらせをしているんだわっ!」と怒りでいっぱいになった。そして、事態を再びFAXとメールで知らせたのは言うまでもない。
結局、7月も終わり近くになって、T-Onlineから余分なアカウントについての手紙が届いた。抹消しますと連絡のあったIDはなんと3つ。私が確認していた範囲で2つだから、他にも秘かに送られようとしていたものがあったのか? とにかく、削除してくれているならそれでよい。ようやくほっとしながら「つなぎっぱなし」環境を満喫し始めていた……。
■T-Onlineのカスタマー・サポートの実態
とりあえずは一件落着と思っていた矢先、今度は突然つながらなくなった。接続した際のパスワード認証の時に、接続が切られてしまう現象だ。先ほどまでつながっていたものが突然拒否されるようになり、その後は何度やり直しを試みてもダメ。ついでに設定などが狂ってないか、念のために確認してみても、事態は一向に改善されなかった。そのため、翌朝1番でカスタマー・サポートに電話を入れた。今回ばかりはのんびりFAXを送っている場合ではなかったからだ。
「なかなかつながらない」と聞いていたサポート電話だが、即座に応答があった。態度もそんなに悪くなかった。こちらがトラブルの内容を伝えると、「それはテクニカル・サポートに電話してくれますか?」と言われた。私はIDの件でトラブルがあったので、その際に誤って使用しているIDを抹消されたのではと思ったのだが、そうではないという。改めてテクニカル・サポートに電話をかけ、オペレーターにつながらなくなった事情を説明した。
相手がコンピュータでデータをチェックしている様子がこちらにも伝わってくる。「大丈夫だろう」と思っていたのだが、結局オペレーターは私の問題を解決できなかった。私が「こちらの問題ではなくて、そちらの問題のハズです」といくら詳しく説明しても、「お客様の設定が誤っている」という、テクニカルサポートにありがちな安易な結論に持っていきたいのが見え見え。余談だが、私は10ヵ月間だけ某プロバイダーに勤務した経験があり、最初の3ヵ月はカスタマー&テクニカル・サポートをしてたから、アナタのパターンなんて読めてしまうのよ! っと心の中で相手を見通しつつ、ドイツ語では今ひとつピリっと言い返せない自分が歯がゆかった。
T-Onlineの接続パッケージ。もう見るのもウンザリ?
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が、その後も全くつながらずに1日が過ぎ、翌日も悶々としながら試したものの、結局つながらず……。「一体T-Onlineはどうなってるんだよ!!」と、またサポートに電話してみるかと思っていたところ、郵便受けに再び「不在届け」が入っていた。次の日、郵便局に行ってみれば、案の定T-Onlineからのお手紙。そこにはアカウント番号は同じだが、新しいIDとパスワードが記された文書が同封されていたのだった。
「なんだよ、こんなことなら、一言知らせてくれよー!」と心の中で罵ったのは言うまでもない。結局私は3日間、ネットにつながらない状態で過ごすことになったのだ。フラットレートの様子を見てから、2つめの“保険”となるプロバイダーを考えようと思っていた私は、その前にトラブルに遭ってしまったのだった。
■まだトラブルは終わらなかった!
その後は快適に接続できるようになり、意味もなくつなぎっぱなしをしてその環境を楽しみつつ、ちゃんと「ネットのお仕事」にも励んでいた(?)私。そういえば、独テレコムの請求書にまだT-Onlineの分が含まれていないと気付いてはいたが、まぁ、そのうち来るでしょうと呑気に構えていた。
そして、9月半ばに届いた請求書。その額を見て、私は自分の目を疑った。なんと請求合計額は、約650マルク(約32,900円・ネット以外の電話代も含む)となっている。これ、ホントに電話代なの!? なんなの!? と混乱をきたす私。よくよく見れば、案の定というか、T-Onlineの請求額がオカシイのだ。7月分は2アカウント分、8、9月分はなんと3アカウント分の料金が請求されていた。これでは5ヵ月分も余計に請求されていることになる……絶句。
この状況に気づく前に私の心をよぎったのは、「フラットレートの落とし穴」と言われたテレビのルポルタージュ番組だった。テレコム以外の各社もフラットレートのインターネット接続サービスを開始したが、実は契約には“穴”があり、膨大な請求額がきたために即解約したユーザーが番組に登場していた。その番組では「テレコムにフラットレートではまともに対抗できない」と漏らす他社のコメントも放送していた。それがあったので、請求書を見た途端、「私も契約書のどこか細かいちょっとした項目を見落としていたの!? T-Onlineもそんな悪どいことしてるの!?」と、ガックリしそうになったのだった。
怒るのも疲れて、その日はそのままにやりすごした。翌日になってT-Onineとしては異例の速さで詫び状が届いていた。「多すぎるアカウントの引き落としについては、次の請求時にお返しします」と。しかし、どう「返金」してくれるのかは明記されていなかった。
翌月の請求書の額は「マイナス」になっていた。つまり多めに支払った「貯金」があるから、そこから引いていくという返金方法なのだった。というわけで、T-Onlineのフラットレートは、つなぎっぱなしで本当に1ヵ月79マルクであることが、3ヵ月余の経験を持ってようやく確信できた次第である。
今回のトラブルは、私が電話せずにFAX&メールで苦情を伝えたことも混乱の原因だったのかもしれない。しかし、トラブルの話は私だけではなく、未だあちこちで聞くのも事実。安さには変えられないし、フラットレートの契約は「1年間は解約できない」ので、私はここまで意地になったのだ。もともとドイツ人とやりあうことには根性の足りない私なので、当分は落ち着いていられることを祈りながら、つなぎっぱなし環境を満喫していこうと思う。こんな調子だと、taogaさんみたいにADSLに環境を発展させるなんてこと、私にはできないかもしれないなぁ……(^^)。
◎著者自己紹介 '97年より北ドイツに移住、現地にてドイツ語習得を目指すハズが、未だ中級レベルでやりすごす怠け者のフリーライター。ドイツ・ロックとの付き合いは長いが、近頃はドイツ芸能事情にも詳しくなりつつあり「もっとお堅いテーマもしっかり押さえようね!」と自らにハッパをかける日々が続く……(?)。 |
(2000/11/10)
[Reported by kajo]