アンケート回答

回答者プロフィール

氏名 府川充男
年齢 49歳
性別
所属組織肩書き 築地電子活版(代表取締役)印刷史研究会 『印刷史研究』編輯委員
具体的なお仕事の内容 少部数出版,書籍装丁,書籍・雑誌編輯,フォント制作,DTPオペレーション,組版コーディネーション

 

●質問1 あなたが新JIS文字コードで新しく入った文字を見て、ご自分の仕事で必要な文字はありましたか?

1.Yes

●質問2 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字の符合位置(“面区点”欄の数字)と、その用途をお答えください。いくつ挙げて下さっても結構です。

実は質問4への回答の理由により「従来困っていた」ということは本当はないです。メールの場面ではちと困ることもありましたけど。ときどき必要になるキャラクタで,新JISの実装により入力や指定が楽になるなというものを以下にざっと掲げます。ほぼすべては私がここ数年やってきた組版の仕事に実際に出てきたキャラクタ,そして原稿執筆時や図書館での記録時につい妥協して使わずに済ませたりしたキャラクタです。

【非漢字】*量が多いので一部に限って掲げます

1-2-19~21  くの字点(従来自製外字フォントで対処)
1-2-22  二の字点(従来自製外字フォントで対処)
1-2-24  コト(従来自製外字フォントで対処)
1-2-25  より(従来自製外字フォントで対処)
1-2-81 同等(従来自製外字フォントで対処)

1-6-25~1-6-32 トランプのスート各種(従来既製品外字フォントで対処)
1-6-76  温泉マーク(従来自製外字フォントで対処)
1-13-93 四つ菱(従来対処せず)
1-3-26 丸中黒(日本の組版の世界ではこれも伝統的に「蛇の目」と呼ばれてき たはずですが)
1-3-27 蛇の目(従来自製外字フォント/既製品外字フォントで対処)
1-3-28  歌記号(従来自製外字フォントで対処)
1-7-82 濁点付き片仮名ワ(福沢諭吉が発明したとされます。従来自製外字フォ ントで対処) エトセトラ……

 

【漢字】(従来殆ど自製外字フォントで対処か,対処せず)*量が多いので一部 に限って掲げます

1-14-3
1-14-4
1-14-13
1-14-44
1-14-49
1-14-51
1-14-57
1-14-61
1-14-80
1-14-82

1-14-84
1-15-6
1-15-10
1-15-17
1-15-21
1-15-33
1-15-37
1-15-72
1-15-73
1-15-74

1-15-89
1-47-54
1-47-85
1-47-86
1-84-13
1-84-18
1-84-19
1-84-22
1-84-26
1-84-53

1-84-66
1-84-68
1-84-79
1-84-88
1-84-90
1-85-10
1-85-13
1-85-14
1-85-21
1-85-23

1-85-30
1-85-31
1-85-56
1-85-75
1-86-3
1-86-31
1-86-47
1-86-51
1-86-53
1-86-81

1-87-21
1-87-25
1-87-32
1-87-39
1-87-62
1-87-65
1-87-76
1-87-85
1-87-87
1-87-89

1-88-6
1-88-8
1-88-17
1-88-24
1-88-27
1-88-41
1-88-72
1-88-88
1-89-26
1-89-54

1-89-63
1-89-74
1-90-3
1-90-20
1-90-28
1-90-37
1-90-69
1-91-50
1-92-53
1-92-55

1-92-56
1-92-58
1-92-59
1-92-61
1-92-80
1-92-83
1-92-92
1-93-12
1-94-17
1-94-63

1-94-83
2-1-6
2-1-8
2-1-10
2-1-50
2-3-35
2-3-41
2-3-61
2-4-11
2-4-36

2-4-57
2-4-58
2-5-87
2-13-83
2-15-59
2-78-26
2-79-86
2-80-59
2-80-67
2-81-55

2-89-26
2-89-83

エトセトラえとせとら。

字体記述要素の殆どすべて/人名許容・康煕別掲字の殆どすべて/国書総目録から採られたキャラクタの殆どすべて/学芸用例から採られたキャラクタの殆どすべて

●質問3 この文字があれば、自分の仕事に新JIS文字コードをつかえたのに、という文字はありますか?

2.No

なぜなら,OCFの時からFONDリソースの書換によってPSフォントの「裏キャラクタ」(Add,Ext)を入手していたため,「逢」「辻」など2,3字を除いて83pvの「拡張新字体」のクリーニングが可能であったし,Biblos外字や平成明朝W3外字(補助漢字に対応)など既製品外字フォントの併用,そして随時自分たちで1バイトの外字フォントを作ることで対処してきたからです。

●質問4 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字は、どんなものですか? 用途とともにお教えください。いくつ挙げて下さっても結構です。なお、文字を挙げる際には、それが使われている具体的な印刷資料かそのコピー、そしてその印刷物名、著者、発行者、発行年月日等の“身元”を第三者が確認できるデータを添えてくださるようお願いいたします。

(略)

●質問5 前項で文字を挙げて下さった方にお聞きします。今回の新しいJIS文字コードでは、審議資料を公開して、それについての意見、漏れている文字を募集する『公開レビュー』を実施しました。あなたはこの公開レビューをご存知でしたか。

(略)

●質問6 以上ご回答いただいたことの他に、新しいJIS文字コードについて思ったこと、感じたこと、望むことなどがあればどうぞ。

JCS委員会の御苦労と御健闘に衷心より敬意を表します。ただし新JISには,少なくとも戦前の明朝体活字に鋳造されたことはまずないと思われる「こんなものは要らない」と言いたくなる人名俗字(江戸期や明治の通俗的な木版本などに見られる場合もあります)が散見されます。そして,近代日本の活版印刷史を少しばかり齧ってきた組版屋の眼からすると,そもそもトンデモナイ人名俗字は(その一部に対応している外字フォントの既製品があるにせよ)少なくとも時には,その字形に固執する者の非常識や無智を示しているに過ぎないことに(キャラクタ・ユーザーの)注意を喚起せざるを得ません。 「字形を超えて字種を渡れない」人々の存在や新聞の新字体のために採否の素材とされ,JCS委員会が恐らくは心ならずも機械的に採らざるを得なかったと推測される例を第三水準から挙げれば

1-14-56
1-14-59
1-15-34
1-15-35
1-47-63
1-85-59
1-85-61
1-86-58
1-87-27
1-87-52

1-87-58
1-90-57
1-91-89
1-93-56
2-3-14
2-3-40
2-3-64
2-5-31
2-8-3
2-12-12

2-12-38
2-13-28
2-13-81
2-14-72
2-14-80
2-15-35
2-78-34
2-79-87
2-91-73
2-92-53

など(念のため,これらの用例は人名に限られません)。