アンケート回答

回答者プロフィール

氏名 富田倫生
年齢 47歳
性別
所属組織 自営。青空文庫と名付けられた活動にもかかわっている。
肩書き ライター。青空文庫呼びかけ人。
具体的なお仕事の内容 かつてはノンフィクションの原稿を書いていた。現在は、青空文庫の運営に関わる作業で手一杯となっていて、ライターとしての作業量はきわめて少なくなっている。

 

●質問1 あなたが新JIS文字コードで新しく入った文字を見て、ご自分の仕事で必要な文字はありましたか?

2.Yes

ライターとしての私は、自分が原稿を書く際に、JIS X 0208にない文字を「是非とも使いたい」と思ったことはない。

一方、青空文庫に関わるようになってからは、私以外の作家が用いたJIS X 0208にない文字をどう扱うか、答えを出さざるを得なくなった。

そこで、テキスト中では、「門がまえに月」といった形で字体を表現し、グラフィックスが使用できるファイル形式では、図として形を示すことにした。

ただしこうした置き換えは、該当の文字に区点位置が与えられないために、やむを得ずとった措置である。広く使われることが期待できる漢字コードにこれらが区点位置を与えられ、テキストとして扱えるようになれば、それに越したことはない。

策定が進んでいる新JIS漢字コードは、日本語テキストを交換する際の標準的な基盤となる可能性があると考えた。そこで、規格案の公開レビューが行われた際、青空文庫収録ファイルに現れたJIS X 0208にない漢字のリストをまとめ、策定に当たっているチームに参考資料として提出した。

青空文庫においてこれまで外字として扱わざるを得なかった漢字の多くを、JIS X 0213は収録してくれている。今後これが実際に、日本語文章交換の共通基盤として使われはじめれば、青空文庫に関わる者としては、大いに助かる。

●質問2 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字の符合位置(“面区点”欄の数字)と、その用途をお答えください。いくつ挙げて下さっても結構です。

青空文庫で用意した「文学作品に現れた外字」リストに掲載したもののほとんどを、JIS X 0213は収録する。

(JIS X 0213が標準的な基盤となれば)これらすべてに関して、青空文庫とその利用者は恩恵を受ける。

古典的な作品を多く収録している青空文庫にとっては、くの字点、ゆすり点がコード化されたこともありがたい。

さらにアクセント符号付きのラテン文字がコード化されたことの意味は、青空文庫にとって大きい(初回の原稿では小形さんは言及されていませんでしたが、これに助けられる人は多いと思います)。

●質問3 この文字があれば、自分の仕事に新JIS文字コードをつかえたのに、という文字はありますか?

ライターとしての自分は、JIS X 0208で満足している。 JIS X 0213ができてありがたいと思うのは、アクセント符号付きのラテン文字、1-13 -64、1-13-65のダブルミニュートくらいではないだろうか。

一方青空文庫に関わる者としては、公開レビュー終了後、JIS X 0213でも表せないも のにいくつも突き当たっている。

●質問4 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字は、どんなものですか? 用途とともにお教えください。いくつ挙げて下さっても結構です。なお、文字を挙げる際には、それが使われている具体的な印刷資料かそのコピー、そしてその印刷物名、著者、発行者、発行年月日等の“身元”を第三者が確認できるデータを添えてくださるようお願いいたします。

未整理なので、すぐには示せない。

(記憶しているものでは、南方熊楠『十二支考』の(3)以降には、たくさん。竹久夢二『どんたく』。その他、いろいろあります。これらに関しては、おいおいリストにまとめようと思います。)

ちなみに、一つの漢字コードを作れば、収録される文字とされない文字が現れるのは当然である。よほどバランスを欠いた選定が行われたとか、選定の方法が明示されていない、公開レビューのようなステップが用意されていないといった問題があるのなら別だが、特定の文字が入っているか否かを取り上げて「使える」とか「使えない」とかいっても、しょうがないことのように思う。

●質問5 前項で文字を挙げて下さった方にお聞きします。今回の新しいJIS文字コードでは、審議資料を公開して、それについての意見、漏れている文字を募集する『公開レビュー』を実施しました。あなたはこの公開レビューをご存知でしたか。

1.Yes

●質問6 以上ご回答いただいたことの他に、新しいJIS文字コードについて思ったこと、感じたこと、望むことなどがあればどうぞ。

過去百数十年の日本の印刷文化における漢字使用の実態に即した漢字コードが作られれば、青空文庫の活動はより効率よく進めることができる。 そう考えて、私たちはJIS X 0213の公開レビューに際して、せいいっぱいの努力を行おうと考えた。

私たちもわずかばかりの貢献をなして生まれるJIS X 0213には、出来るだけ早く日本語文章交換の基盤として機能しはじめてほしい。 そのために、青空文庫が何をなし得るかを見きわめ、なすべき事をなしていきたい。