INTERNET Watch Title Click

【連載】

東海岸インターネットビジネス最前線

第32回:数字で見るシリコンアレー

 米国のインターネット業界では、メーカーやソフトハウスの集まった西海岸「シリコンバレー」だけでなく、最近ではコンテンツやビジネス面で東海岸「シリコンアレー」(シリコン通り)が注目を集めています。

 この連載では、そうしたシリコンアレーから登場してきた注目の企業を30回にわたってレポートしていきましたが、インプレス・ビジネスブックス「シリコンアレーの急成長企業」として単行本化、4月に弊社より刊行することになりました。本誌に掲載した30社のレポートに企業データなどを追加したほか、ニューヨークのIT産業統計やベンチャー政策、企業の変遷など、シリコンアレーの全体像を伝えるレポートも新たに収録しています。

 ここでは、単行本に書き下ろしたレポートの中から一部分を抜粋して紹介します。(編集部)



 急成長するシリコンアレーの実態を正確に把握することは困難であるが、ここでは、ニューヨーク・ニューメディア協会(NYNMA)によるニューヨークのニューメディア産業の調査報告書から、シリコンアレーの規模、企業数、就労者数の実態に迫ってみた。




●爆発的な成長を見せるシリコンアレー

 NYNMAの調査は、SIGgraph、IICS、WWWAC、アレーキャット・ニュース、ジュピター・コミュニケーションズなどの10種類の業界団体や業界誌をもとに、ニューメディアに関連する1万320社の企業リストを集め、そこから任意に6,000件を抽出して電話インタビューを行なったものだ。電話インタビューは1995年12月~1996年2月、1997年6~7月の計2回行なわれ、430名の雇用主もしくは幹部から回答を得ている。なお、報告書で使われている「ニューメディア産業」はインターネット関連の職種全般を指すことから、ここではニューメディア企業を「インターネット企業」と表現する。

 1997年の調査では、ニューヨーク大都市圏のインターネット企業数は4,881社にのぼり、そのうち54%はニューヨーク市に集中している。ニューヨーク市はマンハッタン、ブロンクス、クィーンズ、ブルックリン、スタテン島の5区から構成されており、マンハッタンだけでも2,128社と全体の44%を占める勢いだ。さらに、シリコンアレー(41丁目以南の地域)には合計1,106社と、マンハッタンの半分近い企業が集中しており、シリコンアレーがインターネット企業の集積地であることを如実に示している。



●ネットビジネスを支えた小さな新興企業

 ニューヨーク市のインターネット企業の売上総額は、1996年4月の調査では18億ドル、1997年10月には28億ドルに増加しており、18カ月で56%の伸びを示した。ニューヨーク大都市圏でのインターネット企業の売上総額は57億ドル、シリコンアレーでは10億400万ドルとなっている。これらの企業の中で、インターネットを「主要事業もしくは全事業」と回答しているのは48%、「自社内にインターネット事業部門がある」と回答しているのは52%。

 また、全体で62%の企業が「オフィスは1カ所のみ」と答えており、「事業を開始して3年以内」と答えた企業の数は68%にのぼることから、大多数が設立から間もないことがうかがえる。本連載で紹介してきたシリコンアレー企業30社も、ジュピター・コミュニケーションズとエクシードを除き、すべては「事業を開始して3年以内」に当てはまる。また、「事業を開始して18カ月以内」の企業が30%を占めており、3分の1の企業が1996年以降に設立されたことになる。このように、ニューヨークのネットビジネスを支えているのは、設立から間もない小さな新興企業だと考えられる。

 企業規模で見ても明らかなように、年商100万ドル以下の企業数は1996年4月には全体の63%だったのに対して、1997年10月には83%に増加している。ニューヨーク市のインターネット企業の売上総額を企業規模で比較してみると、総企業数の5%に満たない年商500万ドル以上の企業が売上全体の72%を計上しており、企業の8割以上を占めている年商100万ドル以下の企業は売上全体の5%しか計上していない。この時期、シリコンアレーに新たなビジネスチャンスを求めて、起業家たちが続々と企業を立ち上げたばかりの状況がうかがえる。

 これらの企業の顧客には、上位から順に出版(48%)、広告(47%)、インターネット(46%)、IT(44%)、エンターテイメント(41%)、金融サービス(37%)が挙げられている。出版、広告が1、2位を占めるなど、依然メディア企業が強いものの、金融サービスは1996年4月から1997年10月までの18カ月で48%という急成長を遂げており、今後の伸びが注目される。次いでITが33.3%、出版が14.3%、広告が9.3%の伸び率を示している。



●変化するネットビジネスで重要な要素

 ニューヨークの最大の魅力は、1996年には 1)編集者/アーティストへのアクセス、2)コンテンツ所有者へのアクセス、3)イメージと信頼性──だったが、1997年には 1)と3)は変わらず、2)が「顧客へのアクセス」に変化した。また、事業を行なう上での重要な要素は、1996年には1)編集者/アーティストへのアクセス、2)顧客へのアクセス、3)ソフトウエア/プログラミングへのアクセスだったのが、1997年には 1)技術インフラへのアクセス、2)イメージと信頼性、3)トータル・コスト・オブ・オーナーシップ(TCO)と大きく変化している。

 さらに、政府の施策でもっとも考慮すべき点として、トップには大幅な税金の削減(22.5%)が挙げられ、次いで株式投資の優遇策(8.9%)、安価なオフィススペースの提供(8.7%)、優秀なプログラマー(7.3%)と続いている。優れたクリエイティブが集中しているという魅力はあるものの、シリコンアレーでは専門知識を持った技術者/プログラマーの不足、さらに複雑な税制と割高なオフィス賃貸料が大きな足かせとなっていることも事実である。

(2000/3/10)

[Reported by HIROKO NAGANO, NY]


INTERNET Watchホームページ

ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp