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【連載】

東海岸インターネットビジネス最前線

第33回(最終回):みんな読んでる! シリコンアレー業界誌

 米国のインターネット業界では、メーカーやソフトハウスの集まった西海岸「シリコンバレー」だけでなく、最近ではコンテンツやビジネス面で東海岸「シリコンアレー」(シリコン通り)が注目を集めています。

 この連載では、そうしたシリコンアレーから登場してきた注目の企業を30回にわたってレポートしてきましたが、近く単行本としてとりまとめ、弊社より刊行することになりました。本誌に掲載した30社のレポートに企業データを追加したほか、ニューヨークのIT産業統計やベンチャー政策、企業の変遷など、シリコンアレーの全体像を伝えるレポートも新たに収録しています。

 ここでは、単行本に書き下ろしたレポートの中から一部分を抜粋して紹介します。

 なお、「東海岸インターネットビジネス最前線」は、今回をもちまして連載を終了させていただきます。ご愛読ありがとうございました。 (編集部)



 急速に変化するハイテク業界の流れを的確に掴むためには、メディアからの情報は欠かせない。シリコンアレーの人々は、西海岸のベンチャービジネス誌「レッドヘリング」や「インダストリー・スタンダード」、「アップサイド」、ボストンの「ファースト・カンパニー」などを必ずチェックしているが、それと同時にシリコンアレーに対象を絞った業界誌にも目を通している。1997年以降、次々に登場したこれらの業界誌は、シリコンアレー企業のニュースや就職情報、イベント情報を提供しており、地元の労働者からのフィードバックも活発に行なわれている。今回は、こうした代表的なシリコンアレー業界誌を紹介する。

アットニューヨーク(@NY)
http://www.news-ny.com/

@NY  「@NY」は、シリコンアレー企業のニュースや就職募集、イベント情報などを掲載している代表的なオンラインマガジンで、週刊のニュースレターを配信している。1998年2月にトム・ワトソン氏とジェイソン・チェロボカス氏により開設された@NYは、ニューヨーク・タイムズ紙の「サイバータイムス」セクションやニューヨークポストなどにもコンテンツを提供している。@NYの購読者数は明らかにされていないが、1999年2月には、1カ月で85万のページビューと3万5,000人の新たな利用者を得ている(注1)。また、シリコンアレーで最大規模を誇る就職情報サイト「シリコンアレージョブズ・コム」や、シリコンアレー上場企業の銘柄をウォッチする「シリコンアレーストックス・コム」コーナーもある。

 @NYは1999年4月、インターネット記事のポータルサイト「インターネット・コム」に買収された。インターネット・コムを開設したシリコンアレー企業のメクラーメディアは、1998年10月にペントン・メディアに買収されているが、その際インターネット・コムは買収対象から省かれている。その後、インターネット・コムは積極的にコンテンツサイトを買収し、現在62種類のWebサイトと44種類のニュースレターを提供、55種類のオンラインディスカッションを管理している。また、ドットコム企業の50銘柄を集めた株価指標「ISDEX」を提供し、毎月のサイト利用者は180万人、約4,700万ベージビューを誇る。同社は1999年6月にIPOを行ない、現在株価(INTM)は56 7/8ドル前後で推移している。

注1)@NY Newsletter (March 5, 1999): Forward Issue 4.27

シリコンアレー・レポーター(SAR)
http://www.siliconalleydaily.com/

Silicon Alley Daily  「SAR」は、シリコンアレーの情報を満載した月刊誌で、1997年の発刊以来、根強い人気を誇っている。当時26歳のジェイソン・マックケーブ・カラカニス氏により発刊されたこの雑誌は、2色刷の薄っぺらな雑誌から始まった。発刊当初は年間90ドルの購読費を徴収していたが、広告主と購読者の増加から、現在の購読費は米国内で29.95ドル、カナダで50ドル、それ以外の地域で100ドルとなっている(注2)。  また、1998年にはオンラインマガジン「シリコンアレー・デイリー」を開設、シリコンアレーのニュースをWebサイトと電子メールレターで流している。1998年8月には、通称「デジタル・コースト」と呼ばれるロスアンジェルスのハイテク情報に焦点を絞った隔月誌「デジタル・コースト・レポーター(DCR)」を発刊、SAR購読者には無料で送るようにした。デジタル・コーストはメディアや広告産業が集中する地域で、シリコンアレーと類似していることもあり、レイザーフィッシュやレアミディアムを始めとするシリコンアレー企業がデジタル・コーストに次々とオフィスを開設している。

 その他、SARでは、VCやシリコンアレー企業を集めた会議を積極的に主催しており、1998年2月に同誌が主催した起業家コンテスト「レディ、セット、ピッチ」は大盛況を収めた。

注2)McNaughton, Kora (April 13, 1997): Silicon Alley: Don't Ever Forget We're Hot, We're Hip, We're Here On the Money, UPSIDE

アレーキャット・ニュース
http://www.alleycatnews.com/

AlleyCat News  アンナ・コープランド・ウィートリー氏とジャネット・スタイツ氏により1996年に発刊された「アレーキャット・ニュース」は、主にシリコンアレーの投資家を対象とした月刊誌で、有望企業の紹介やネットワーク作りのイベントも行なっている。雑誌の購読費は75ドルだが、Webサイトへのアクセスやその他のサービスを受けるためには、「アレーキャット・インベスターズ・ネットワーク」のメンバーになる必要がある。会費は695ドルで、メンバーになれば、最新VCニュースの「アレーキャット・ウィーク」、注目のシリコンアレー企業のリスト「アレーキャット・グリッド」、投資家のリスト「アレーキャット・スコアボード」などのWebページにアクセスできる。その他、選ばれた起業家が集まる「アレーキャット・サロン」に出席し、ネットワークを作ることもできる。

(2000/3/24)

[Reported by HIROKO NAGANO, NY]

◎お知らせ
本誌連載「東海岸インターネットビジネス最前線」を単行本にまとめた「インプレスビジネスブックス/シリコンアレーの急成長企業」(本体1,800円+税)が4月11日に弊社より刊行されます。詳しい情報は「impress Direct」のWebサイトに近日中に掲載する予定です。お問い合わせ、ご購入予約等はそちらをご覧ください。


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