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今週のお題目(97/01/24) |
米国大統領就任式が1月20日、キング牧師誕生日祝日と日を同じくして、ワシントンで行われた。就任式というと聖書の上に手を置いて忠誠を誓う場面がよく報道されるが、その全貌は意外に知られていない。実は、3日間に渡って行われる国をあげての祭典なのだ。全国から10数万の人々が「大統領の友達」として集まる。この期間だけはすべての政治問題が「希望」の影に隠れる。
スミソニアン博物館群に囲まれたホワイトハウスの前庭「The Mall」と呼ばれるエリア。ここに設置された会場では「The American Journey」と題して数々の催し物が開催された。軍のパレード、編隊飛行などの他にも、アメリカ全土から集結したコーラス隊、楽隊、民族音楽団の中には、リトルフィート、チャカ・カーンなどの一流ミュージシャンも一参加者として混じっていた。
今年の目玉「Technology Playground」ではSilicon Graphics、Time-Warner、National Geographic Interactive、NASA、IBM-Online、AOL、WebTVなど多数の企業が力を結集した「インフォメーション・スーパーハイウェイへの旅」を展示。子供たちが最新技術を体験する出来る作りとなっていた。「インターネットをすべての学校に」をスローガンにかかげるクリントン政権の21世紀への意欲が、大きく反映されていた。
また、就任式情報は「Yahoo!」と提携して一般に報道され、20日の3時間に渡る就任式本番の模様は、アメリカ中のテレビと同時にサイトからもライブ中継された。
たった1人の人間のために、これほどたくさんの企業や民間人が一致団結するというのは、現在の日本では考えられない光景だ。もちろん日常の問題はカリスマ性だけでは解決できないが、「インターネット普及」をかかげるはっきりしたリーダーの存在を意識できるというのは、とても気持ちの良いことだ。期待される4年間の開幕を感じる。
日本でも近々サービスを開始する予定のAOL(America Online)。米国では現在プロバイダーとしてNo.1のシェアを誇っている。サービス開始当初から、GUI形態で簡単にインストールやアカウントのセットアップができ、全く通信のことを知らない人にとっては嬉しいサービスだ。他州の大学にいる子供と電子メールで連絡をとりたい、海外の家族と電子メールで話したい(米国では、このニーズが非常に大きい)と思うと、普通の人のまず考えることはAOLへの加入。米国のインターネット人口の急速な増加にはAOLの利用者数が大きく反映していると言っても過言ではない。
そのAOLがこのところ全く繋がらない。原因は昨年12月から開始した月額19ドル95セントのフラット・レート制。米国の月額固定のローカル電話料金制度では、居住ゾーン内の電話料金は基本料金さえ支払えばあとは無料だから、24時間繋ぎっぱなしでも19ドル95セント以上一銭もかからない。現在のAOLバージョンはWWWにも対応しているので、利用者のオンライン時間は伸びる一方。フラット・レート採用以降さらに加入者は増え、現在800万人を超えたと報じられている。そしてとうとう、つながらないAOLサービスに対して、団体訴訟が起こされた。
ちなみに、AOLに対する訴訟は今までも数回行われている。課金制であった頃は、希望しないメッセージやグラフィックのダウンロード時間、フリーエリアでの不当な課金などが起訴項目であったが、AOLはその都度、全利用者に対する返金などの処置で対応してきた。また、AOLに対する不満事項を常に公にしているサイトも利用者が多い中で、ボランティアSYSOPたちは弁明・問題解決に懸命だ。
告訴や攻撃が頻繁な米国で、サービスの人気を維持するのは大変。「No Nonsense(使えないものは認めない)」が浸透している国民性のなかで、これだけ多くの人にインターネットの楽しみを与えてきたAOL。この試練を超えて、更に強靭+フレンドリーなサービスになってほしいものだ。
「リアリティー・チェック」という表現は「こうなると言われているが、さて現実は?」という意味で使われるフレーズ。このところ、このフレーズをよく耳にする。
WIRED誌1997年1月号は「Happy Birthday HAL」と題した特集を組み、その中で「リアリティー・チェック」を行っている。HALは70年代にスタンリー・キューブリックによって作られたSF映画の名作「2001年宇宙の旅」に登場するスーパーコンピュータ。当時、電算機では独占市場を誇っていたIBMを一文字づつずらし、象徴的に命名された。木星に向かうディスカバリー号の管理をすべて行い、人の口の動きで内容を理解するというHAL。作者アーサー・クラークの設定では1997年1月12日がHALの誕生日のはずだった。さて、HALは今どこに?
HALの例は極端であるが、映画の中のひとつひとつの技術を取り出してみると面白い。今からけして遠くない2001年を想定した作品中では、月にはすでに地球人居住区があり人工冬眠が可能になっているが、これらは現実にはまだ起こっていない。が、テレビ電話、冷戦の終局、コンピュータがチェスで人間に勝つ、火星の生命体確認などは、多少形は異なるがすべて現実化している。また、ディスカバリー号内でのメインフレームとタイプライターによるコンピュータ制御は、現実ではパソコンとラップトップという形が加わり、予想も付かなかった形態へと展開している。
この特集が組まれたのは、米国で昨年12月にWIRED出版から発売された「Reality Check」が好評を博しているのが理由。日常生活の中で「いつごろこうなる」と言われていた事象や商品が、現実的にはいつそうなるのか、又は実際に可能なのかを各分野の専門家の話に基づいてまとめたものだ。AIDSワクチン、電気自動車、自動洗浄トイレなど、歴史を変える大きな事象から身近な商品までユーモアを交えて紹介したこの本は、サイバー人口の域を超えて一般の読者層にも読まれている。
本書の人気には、一般人の「リアリティー・チェック」必要感が高まっているという理由があるように思う。「広告ではこう言っているが現実は?」「こういうサービスがあると聞くが、実際自分にとって役に立つ?」などは賢い消費者は常に行ってきたことだが、新しい形態の商品が急速に増えている中では、より厳しい自己判断が要求されるようになってきた。特にインターネットの世界は毎日のように新技術・新サービス発表の応酬。本書にはそれらへの警告が含まれているように感じられる。インターネット産業従事者にとっては、多少耳の痛い言葉かもしれない。
ゴールデングローブ賞受賞作品オフィシャルサイト
インターネットの魅力のひとつに、新作映画チェックが米国と同時に出来るということがある。米国ではほとんどの映画がオフィシャルサイト、又は映画会社内のサイトとして、米国での上映開始以前に公開されるので、映画ファンには絶好の情報源になる。今回は特別企画として、1月19日に発表された「ゴールデングローブ賞」受賞作品の中で、オフィシャルサイトのあるものをまとめてご紹介しよう。
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