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サオリ姉さんのSurfin'USA
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アメリカ風わびさびの世界、English HAIKU (97/08/13)

音楽系メーリングリストで、ある日こんな会話が交わされていた。

A: 「100 Mississippi Delta Blues Haiku」は面白いよ。例えばこんな俳句がある。「Warm breeze. Tributes of Lilies, coins, harps. Hear him playing?」(ブルースハープの名手、Sonny Boy Williamsonの墓の前にて)

B: 良い「詩」だけど、これは俳句じゃない。俳句は全部で17音節だよ。

日本文化とは何の関係もない米国ルーツ音楽のメーリングリストで、俳句が登場したのには驚いた。簡単なフレーズを繰り返すブルース音楽と、簡潔さが命の俳句。共通点はありそうだが、こんなに俳句を知っている人がいることに、嬉しさもともなって感動を覚えた。

日本文化を教えている大学などには、俳句を1つの科目として教えるところもあるようだ。正統派俳句をインターネットで教える「Dhugal J. Lindsay's Haiku Universe」から、その教授法の一端を覗くことができる。「俳句とは、五七五の音節からなる短い詩。通常季節が反映され、表面の意味より深い意味を持つことが多い。」という解説に始まり、正岡子規の俳句を例にした分析、隠喩の仕方などの深い洞察が成されている。句会などの創作活動、授業での俳句の教え方などの情報もあり、アメリカで俳句創作が活発に行なわれている様子を垣間見ることができる。

しかし、日本語の俳句を忠実に英訳すると、五七五に収まらないものが多い。日本語が分からず、英訳に頼るアメリカ人の中には、俳句を「深い意味を持つ短い詩」とだけ理解している人も多いようだ。日本語の「一文字一音節」感覚が当てはまらない英語では五七五のリズムを自然に作り出すことが難しいので、これも仕方がないことかもしれない。このような状況が上述の「Blues Haiku」などを生み出しているのだとか。

それでも、「Blues Haiku」の例はまだ俳句の本来の意味に忠実な方だ。日本文化の奥義である「わびさび」が、亡きブルースマンのハープの音と共に、どこかしら伝わってくるからだ。

中には五七五方式の面白さだけを取って、遊んでしまっているものもある。「AHA!'s Haiku Hideaway」は、コンピュータが自動的に五七五詩を作成する人工知能下手詩人だ。リロードするたびに懸命に新作を表示してくれるのだが、どれも???なものばかり。例えば、「Always free, but damp, The monk knows no old temples. Angry, he withers.(自由だが湿っている、修道士は古寺を知らない、怒りで彼は萎れる)」のような文章が出てきたりする。

さらに、毎日のニュースヘッドラインを俳句で送る「Haiku Headlines of the Day」にいたっては、「わびさび」が完全にユーモア化。8月11日のビジネスへッドラインには「you don't trust bill gates?! anti-trust questions rising, from apple bailout.」。こんなに端的では川柳にもならないが、その淡泊さが妙に面白かったりする。

英語という全く異なった言語の中で七変化しながらも人気のある俳句。即興一句の練習をしておけば、アメリカの友人や取引先を唸らせることができるかもしれない。

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