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コンピューターキッズの夏休みの過ごし方 (97/08/25)
「ここは分かりにくいなぁ、この機能はいいと思うけど…」と、モニターに映るゲームにあれこれ操作しながらコメントするのは、どう見ても10歳前後の少年。その横で真剣にコメントに聞き入り、その少年に質問をするのは、どう見ても40近い大の大人だ。テレビ番組「The Site」で紹介された「Kid Testers」特集の一場面。「学校に行かなくてもいいから、たくさんゲームができて嬉しい」と語るこの少年は、夏休みをゲームソフトのテスターとして過ごしているのだという。
コンピュータに早くから親しんでいる子供たちは、大人のような先入観を持たず、直感でゲームを操る。そんな子供たちからのフィードバックは、大人があれこれ分析した結果より、ずっとダイレクトで的を射ている。そんな子供たちの感覚に目を付けたゲームソフト会社が、子供をテスターとして採用するケースが増えているようだ。
例えば、教育用ゲームソフト制作のMindscape社では、実際にゲームをする年代の子供たちをベータテスターとして採用している。テスターの子供たちは、下は7歳から上は高校まで、学校がある期間はパートタイムで、そして夏休みなどの休暇の時期はフルタイムの「仕事」を与えられているのだ。小3でテスターとなり、小4の現在この仕事に夢中の少年は「14歳でもまだこの仕事をしている子もいるよ。僕もずっとやりたいな」とイキイキと語っていた。
しかし、子供がゲーム大好きなのはもっともなことだが、この大事な時期を単にゲームをして過ごさせるにはあまりにも虚しい。そんな大人たちの心配を尻目に、こうしたアルバイトをきっかけにして大人顔負けの大成功を収めた例もある。Auto CADや3Dソフト制作のAutodesk社に、高校生のテスターとして採用された少年。テスターという技術的には最も初歩のレベルから始めたこの少年は、それを定職獲得への第一歩と考え、夏休みを返上してキャリアを構築。その2年後、弱冠大学1年でテレビ局のマネージャーと自分のアニメ会社のCEOという、2つの肩書きを持つまでに成長したのだという。
9月から翌年の6月までが1学年と数えられる米国では、夏休みの宿題がないのがごく当たり前のこと。多くの子供たちは、この長い自由な時間の一部をサマーキャンプなどの学外活動に参加するなどして消化する。テスターの子供たちのようなケースはまだまだ特殊な例だが、こんな夏休みの過ごし方が未来のBill Gatesを生む…。と夢見る親も少しずつ増えているようだ。
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