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サオリ姉さんのSurfin'USA
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米国文化の小さな窓、アメリカンスタンプ (97/09/29)

10月末のハロウィンが近づき、店頭にもカードや小物、子供の仮装衣装などが並ぶようになってきた。オレンジの南瓜をくりぬき、中にろうそくを入れた飾りのある家々を、様々な変装の「小さなオバケ」たちが訪ね回るお祭。そんなハロウィンにちなんだのか、米国郵政省は9月30日に「Classic Movie Monsters」切手シリーズを発行する。ドラキュラ、フランケンシュタインなど5種類のモンスターの絵柄のシート、ハロウィンカードにはぜひ貼りたいデザインだ。

この「Classic Movie Monsters」、ただの奇をてらったモンスターかと思いきや、アメリカ映画文化をたたえる記録の役も果たしている。映画の中心地ハリウッドの郵便局の提案により、モチーフは歴代名優が扮する怪物たち。Bela Lugosiのドラキュラ、Lon Chaneyのオペラ座の怪人、Lon Chaney, Jr.の狼男、Boris Karloffのミイラ男とフランケンシュタイン(の怪物)。それぞれ60年以上前の作品での役者たち、ハリウッド映画の歴史を変えたとも言える大御所たちばかりだ。シートにはメイクを落とした役者たちの素顔とサインまで印刷され、コレクターズアイタムとなっているという。「切手になる」ということは、「誇り高き米国文化のひとつとして認められる」ということ。映画の国アメリカならではの出来事かもしれない。

切手の絵柄といえば、自然や静物、行事に関したものなどが多いが、歴史を代表する著名人のデザインも人気がある。'96年度に発行された44種のうち10種が人物を扱ったものだ。「死後10年以上経過していなければならない(大統領は例外)」「特定の主義、利益団体の代弁者は採用しない」などの規約と厳しい選考をくぐりぬけて選ばれる人物。その中には、米国史に貢献した政治家、発明家、飛行家などの他に、まだ記憶に新しい芸術家たちも多く含まれる。郵政省が提供する切手専門サイト「StampsOnline」では、それらの記念切手の中でも特出したものをギャラリー風に展示している。画家のGeorgia O'Keefe、俳優のJames Dean、John ColtraneやLouis Armstrongなどの巨匠を特集したLedends of Jazzなど、切手コレクターでなくても思わず欲しくなる人選だ。

このような人気切手が多く発行されると同時に、デザインを生かしたタイアップ商品も数多く出回っている。Tricky Envelopesが販売する特製封筒はアイデア商品だが、中でもニクソン大統領切手専用に作られた封筒はブラックユーモア溢れる一品。'95年に発売された当時、切手としてふさわしいかどうかで物議をかもしたこの切手。空白部にそれを貼ると、ちょうどニクソン大統領が牢屋に入っているイラストが出来上がるというデザインだ。リベラル派の多いサンフランシスコでは大人気の商品だったとか。また、今年発売されて人気を呼んだ「Bugs Bunny」の切手。郵便局ではこれにちなんだTシャツやネクタイなどの商品を販売し、人気を博していたようだ。

ハロウィンが終われば、瞬く間にクリスマス。電子メール仲間の間ではアスキーアートのクリスマスメールも楽しいもの。しかし、家族や昔ながらの友人には、やはり封筒に入ったクリスマスカードを送りたい。柊(ひいらぎ)や聖母マリアの切手を添えれば、心づかいも一層伝わるというもの。切手は小さな文化の窓、そして心の窓。今年もその季節が待ち遠しい。

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