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サオリ姉さんのSurfin'USA
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CMが面白い! Appleの「Think Different」 (97/10/08)

-- 狂人たち。社会不適応者、反逆者、問題児、四角い社会でぶつかる者たち。物事を違った角度で見てしまった者たち。規則を嫌い、現状に甘んじない者たち。彼らに同意すること、反論することはできる。彼らを賛えること、批判することはできる。だが、一つだけできないのは、彼らを無視すること。なぜなら、彼らは物事を変えることができるから。人類を前進させることができるから。「狂人」と呼ばれる彼らは実は「天才」。世界を変えることができると信じられるほどの狂人こそ、本当に世界を変える人々なのだ。 -- (「Think Different」のナレーション)

9月28日の日曜日、テレビ初登場の映画「Toy Story」の間に流れたAppleのCM「Think Different」が話題となっている。ナレーションとともに「狂人たち」の白黒映像が淡々と流れる60秒の作品。アルバート・アインシュタインの微笑む映像から始まる「狂人たちの狂行集」だ。

続くは反社会フォーク歌手のボブ・ディラン、黒人運動リーダーのキング牧師、ヴァージンレコード創立者であり冒険家でもあるリチャード・ブランソン、平和を歌い続けたジョン・レノン、発明家トーマス・エジソン、人種問題に多くの発言を残したボクサーのモハメド・アリ、CNN創立者のテッド・ターナー、オペラ歌手のマリア・カラス、インド解放運動リーダーのガンディー、女性飛行家アメリア・エアハート、映画監督のアルフレッド・ヒッチコック、ダンサーのマーサ・グラハム、セサミストリートのマペット創作者のジム・ヘンセン、狂人と呼ぶに相応しい画家のパブロ・ピカソ…。それぞれ分野は異なるが、常人からはかけ離れた個性と行動力で世界を変えた面々だ。

我が家は私も主人もMacユーザー。このCMを2人で凝視した後、主人は開口一番「いいCMだけど、もっと製品の良さを強調しなきゃ…」。Appleの売り上げに期待をかける主人にとっては、少々物足りないデキだったようだ。私はと言えば、人間を主役にした芸術性にうっとり。「商品宣伝」の枠にとらわれないCMの作り方こそ、まさに「狂人」の業のような気がした。人間とはこんなに素晴しいものだという満足感で、ますますMacが好きになってしまったのだ。Appleのイメージアップは、少なくとも私に対しては大成功だったようだ。

このCM、制作はMacintoshがデビューした際のCM「1984」を制作したTBWA Chiat/Day社だ。この「1984」は、その年のスーパーボール中継の番組中に一度流れただけだったが、強烈なコンセプトで「伝説のCM」と呼ばれるほどの印象を視聴者に残したという。同社の制作したCMの数々は、同社のWWWサイトから見ることができるが、その中には「1984」同様に優れたコンセプトのものが幾つもある。「Historical Works」に収められた「Jiffi Condom」がその一つだ。

白黒のホームカメラで撮影された夫婦3組の映像が映写機の音と一緒に淡々と流れる。ソファーに座った老夫婦。下には「ムッソリーニ夫妻/ベニト・ムッソリーニの両親」の文字があらわれる。戸口で微笑む夫婦の下には「アミン夫妻/イドル・アミンの両親」。最後の老夫婦の下には「ヒットラー夫婦/アドルフ・ヒットラーの両親」。そして、暗くなった画面にあらわれるフレーズは「Jiffi Condomを使っていれば…」というものだ。

このセンスには、さすがに鳥肌がたってしまった。ちなみに同社の最近のヒット作品は、Yutaka Katayama氏をフィーチャーしたNissanのCMシリーズ。コミカルな味が受けている。

それはさておき、「Think Different」と「1984」は別格としても、AppleのCMには面白いものが多い。映画「Independence Day」「Mission:Impossible」を使ったPowerBookのCM、映画監督スパイク・リー出演のCMなどは、AppleのCMを一同にまとめた「Mia.Net's Macintosh Movie Archive」で見ることができる。コメディー番組「Saturday Night Live」のパロディー版などもあるので、Macファンにはオススメだ。

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