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もっと電子通勤!「Telecommute America Week」 (97/10/22)
渋滞する道路、出勤時間を気にしながら苛つくドライバーたち。そこへ突如メガホンを持った男が現われる。「みんな~! 電子メールもある、FAXもある、ビデオコンファレンスもある。家で仕事ができるんだよ~! 家に帰りなさ~い!」と叫び始める。去年から今年にかけて放送された、カリフォルニアの大手電話会社PacBellのテレビCMだ。結局この男、交通妨害でお縄になってしまうのだが、パトカーの中でも残念そうに「本当に家に帰っていいのに…」とつぶやくのが印象的だった。
そんな映像が現実となったのが、先月サンフランシスコ・ベイエリアで起ったBARTストライキ。ベイエリア主要都市を結ぶ動脈である電車BARTの10日間の運行停止は、異常なまでの交通渋滞を引き起こし、多くの通勤者に物理的な出勤への疑問を投げかけた。コンピュータ関係者やコンピュータを使って自宅で仕事をしはじめた人々にとっては、「telecommuting(電子通勤)」はごく自然な仕事手段である。が、このような通勤問題が生じる度に、毎日定時に出勤する一般の会社員にとってもtelecommutingへの魅力が増大している。
CNETが10月8日に報じたところによると、少なくとも週のうち1日はインターネットを使って自宅で仕事をするというtelecommuterは、1997年度全米で1,100万人。去年の400万人から3倍に跳ね上がり、2000年には1,400万人に達するだろうという予測も出ているそうだ。「交通渋滞緩和」や「家族との時間の確保」などのメリットを持つtelecommutingだが、今後もさらに奨励されるべきとして、政府や民間団体が協賛した普及活動も盛んに行なわれている。
10月20日から24日まで行なわれている「Telecommute America Week」もその一つ。米商務省、環境保護庁、代替通勤奨励団体ACT、大手電話会社AT&Tなどが協賛となり、telecommuting普及を目的とした行事が全米各地で開催されている。皮切りにサンフランシスコで行なわれた講演は、「telecommutingにおける労働組合」「telecommutingにおける雇用法」「投資としてのtelecommuting」など、単なる普及活動からさらに一歩進んだ内容。ちなみに、インターネットを介したバーチャルコンファレンスの形でも行なわれていたようだ。もちろんWWWサイトは、初心者に対する解説や資料集が充実。telecommutingを一から解説するコーナーや、地域や会社単位でtelecommutingを普及するためのプログラムを運営するためのノウハウも掲載されている。利用の度合の差こそあれ、telecommutingがすでに浸透し、また今後も普及の一途を辿るであろうことがうかがわれる。
この行事と連動して、カリフォルニアも独自のサイトを立ち上げた。「Telecommute America: California Style!」と名付けられたWWWサイトでは、前述のBARTストライキの例をあげ、「緊急時の際のサバイバルキット(Emergency Telecommuting Survival Kit)」と称してtelecommutingの方法が分かりやすく解説。片道3時間の渋滞を経験した通勤者にとっては、まさに「救急箱」として重宝することだろう。
我が子との貴重な時間の確保するのはもちろんのこと、通勤車の減少による大気汚染防止など、ますます注目を集めるtelecommuting。分刻みで動く過剰労働の現代社会の「歯車」にとって、通勤の数時間が自分のものになるというのは、なんと魅力的なことだろう。もっとも、それによって浮いた時間をどんな風に利用するかも、しっかりと考えておく必要がある。
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