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通信ママは大丈夫? 相次ぐ「インターネット中毒」事件 (97/11/12)
10月23日にフロリダの新聞紙「The Orlando Sentinel」がネット中毒の母親の事件を報道。夫との別居が決まって以来、Pam Albridgeはコンピュータを自分の寝室に持ち込み、部屋に鍵をかけ、7歳と8歳の子供たちの面倒を全く見ず、一日の大半をネットワークに繋がったディスプレイの前ですごしていたのだという。見かねた夫Kevinの申請で行なわれた裁判で、子供たちの親権は父Kevinに渡されることになった。裁判官はPamの症状を「インターネット中毒」とし、親権を持つにはふさわしくない状態と判断。近年確認されている「インターネット中毒」の悪例を世に知らしめる事件として話題をよんだ。
同様の事件が6月にも起こっている。オハイオ州シンシナティ市警の発表によると、24歳の主婦Sandra Hackerは、ネットサーフィンの邪魔になるとして自分の子供を子供部屋に監禁。発見されたときの子供たちの部屋は汚物や壊れたガラスなどでとても人間が住める状態ではなかったのに対し、Sandraのコンピュータのある部屋は塵ひとつなかったという。家を掃除するまで子供に会うことは禁止、と言い渡されたSandraも「インターネット中毒」の事例の一つである。それにしてもこのSandra、名字が「Hacker」というのがなんとも皮肉だ。これが中毒に拍車をかけたというわけではないのだろうけど…。
実は、「インターネット中毒」という概念は数年前から報じられている。1996年1月、子供たちがネットサーフィンに熱中し始めた頃、英国の心理学者Mark Griffiths博士は、既に子供たちの「インターネット中毒」に対する警告をレポート。「1日に14時間もネットに費やすということは、麻薬やアルコール中毒に匹敵する害」として、子供のネット時間の監視を親たちに促している。
それ以来、ギャンブルやアルコール中毒などと同様に、インターネット中毒を「依存症」としてはっきりと認識し、治療を図っていこうという動きがある。今年の8月に行なわれたAmerican Psychological Association(米国心理学会)の学会で、インターネット依存症に関する報告がなされた。ピッツバーグ大学の心理学博士Kimberly Young女史が行なった、360人のインターネット利用者を対象とした調査の結果は数々の興味深い数字を提示した。
その1つは、インターネット利用者の主流は依然として高学歴白人男性層という中で、最も依存症にかかりやすいのが中年女性層であるという結果。大半は主婦で、暇を持て余している層だ。それに続いて障害者、退職者、学生など、比較的自由な時間が多い層へと続く。これらの層、特に主婦層は、はじめはインターネットやコンピュータの技術面で劣等感を感じているが、一度操作を覚えてしまうと、逆にそれが強い自信となってのめり込むタイプなのだとか。自分の依存症に気が付き、自主的な荒療治としてプロバイダを解約したり、モデムを捨てたり、中にはコンピュータを壊してしまう者もいるそうだ。これら中毒者のインターネット利用時間は週40時間。余暇としての利用時間が週40時間を超えたら要注意ということか。
Young博士は「インターネット依存症」に関する先駆者で、自らの主催するCenter for On-Line Addiction(COLA)では、チャットやフォーラムによるサポートや、会社向けのセミナーなども行なっている。女性である博士が提供するアドバイスには、女性の心理を見抜いた的確なものもあるようで、中毒に気付いた主婦層の駆けこみ寺の役目を果たしているようだ。
生活のプラスになるのが本来の目的であるはずのインターネット。もし多少でも「やりたくないのに手が動いている」などの不快感を感じたら、手遅れになる前に一度「インターネット中毒」に関する文献に目を通しておくのが懸命かもしれない。
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