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Kevin Mitnich、拘置所からの訴え (97/12/01)

Kevin Mitnichと言えば、コンピュータ犯罪史上、おそらく最も有名なハッカーだろう。電話回線を違法に使用した他コンピュータからのデータファイルの盗難、2万件に及ぶクレジットカード番号の盗難などの罪で、'95年2月に逮捕。その直後、それらの罪状は35年の懲役と25万ドルの罰金に相当すると報じられた。が、それ以降新たに発見された罪もあり、'96年9月には合計で懲役100年という事実上終身刑に値するような起訴項目が挙げられている。逮捕からおよそ3年が経過しようとしているが、今のところ公判の日時は決まっていない。

そうこうしているうちに、このKevin Mitnichのオフィシャルサイトがオープン。Mitnichに公正な裁判を受けさせるために集まったという有志たちによって立ち上げられたもの。現在Mitnichが拘置所で受けている不当な扱いを社会に訴えかけている。

なんでも、Mitnichは拘置されているMDC(Metropolitan Detentin Center)で、何度かはっきりした理由もなく独房に入れられているのだとか。理由も告げられずいきなり命令が下るのだが、8カ月にも渡る長期監禁もあったらしい。しかも後に告げられたその理由というのが、漠然とした「保守」のため。看守たちにとってMitnichは、どんな機械でもあやつる魔法使いのように映っていたに違いない。何をするか分からないから、とにかく孤立監禁して徹底監視してしまえ、といった判断なのか。また、別の独房命令の理由は、ウォークマンで看守事務所の情報を混乱させようとした疑い。しかし、ウォークマンには送信機としての機能は全くないので、これは多少機械の知識があればすぐに不可能と分かる。こうなってくると、「Mitnichいじめ」というような言葉もチラつく。

単純なことでも疑惑視されてしまうMitnichの一挙一動。起こした事件もハイテク犯罪であるから、その公判における弁護にも膨大な資料と労力が必要となる。専門家も多数召集して、解説や意見も請わねばならない。当初は国選弁護人がついていたのだが、公判準備のための費用請求が認められず、Mitnichは現在弁護人がいない状態。自ら拘置所内の法律図書館に通い、自力で弁護の準備を行なおうとしているのだそうだ。しかし、それに費やす時間も週5時間半に限定され、とうてい十分ではないという。

このサイトが言うには、「Mitnichへの扱いや過剰な起訴内容は、ハイテク犯罪という新種の犯罪の伝播を防止するための社会に対する見せしめであり、公正ではない」。また、メディアの煽りも事件を事実以上に大きくしていると見ているともある。Mitnich逮捕に貢献したTsutomu Shimomuraによる「Take Down」や、Jonathan Littmanによる「The Fugitive Game / Online with Kevin Mitnich」が、図書やWWWサイトとして人気を博したが、これらが犯罪を事実よりも派手なものに印象づけた点も指摘されている。確かにそれらのWWWサイトからは、世紀の捕り物を劇的な売りものにした「娯楽」のにおいが漂ってくる。

Mitnichのサイトには法廷記録や起訴事項の不当性に関する細かい解説などもあるが、これについての判断は人それぞれだろう。「Legal Defence Fund for Kevin Mitnich(法廷弁護料基金)」への献金方法や、拘留中のMitnichへの手紙の出し方などを参照することも可能だ。ちなみに私は、このサイトにある「Free Kevin Now!」のアイコンを自分のサイトに貼ろうかどうかまだ迷っている。

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