Internet Watch Logo
サオリ姉さんのSurfin'USA
about サオリ姉さん

私の第55回ゴールデングローブ賞ハイライト (98/01/21)

1月18日、ビバリーヒルズで行なわれた「第55回ゴールデングローブ賞」。Hollywood Foreign Press Associationによって運営されるこの賞は、映画やテレビ番組の中から、ドラマ部門とミュージカル・コメディー部門に分けて優秀作品が選抜されるというもの。テレビの占める役割、またコメディー番組の普遍的な人気を反映したこのカテゴリー選びは、米国娯楽産業の縮図を見るようだ。アカデミー賞の大仕掛けとは違い、随分とこぢんまりとした設定で、出席者のくつろいだ様子がテレビを通してもよく分かるのが、視聴者にとっては大きな楽しみだ。

当日、受賞式の模様を独占中継したNBCのオフィシャルサイトでは、受賞式前の「Pre-Show Webcast」やYahoo!と提携したチャットなどが行なわれた。現在でも会場に入場するスターたちの様子をとらえた「Red Carpet Gallery」が掲載されている。

今回最も注目されていたのは、映画ドラマ部門のほとんどにノミネートされていた「Titanic」。最優秀映画ドラマ部門賞、最優秀監督賞、オリジナルスコア賞、オリジナルソング賞の4つのゴールデングローブを受賞した。受賞スピーチで作品にこめた思いを語るJames Cameron監督は、時間切れで鳴り出した音楽も止めてしまうほどの情熱を披露。また、「Amisted」でノミネートされていたが、結局受賞を逃してしまったSteven Spielberg監督の複雑な表情も印象的だった。

映画コメディー部門で快挙を遂げたのが「As Good As It Gets」。最優秀映画コメディー部門賞のほか、コメディー映画女優賞でHelen Hunt、コメディー映画男優賞でJack Nicholsonがそれぞれ受賞した。巨匠Nicholsonや名監督James L. Brooksに敬意を表わすHuntのスピーチとは対照的に、ビニール袋で覆った手でMadonnaからゴールデングローブを受け取るNicholson。強烈なブラックユーモアのセンスは公私とも変わらないようだ。

また、劇場公開はされないがテレビ用として制作された映画の中にも優秀な作品が数多く存在する。白人至上主義を唱え、大統領選中に狙撃された南部の政治家の物語「George Wallace」、梅毒の研究のため人体実験の犠牲となった黒人たちの物語「Miss Evers' Boy」、ボクシング興行師Don Kingの自伝小説を元にした「Don King: Only in America」などが各部門で受賞を分け合った。実は、こうした史実に基づいた作品の映画化は、米国で育たなかった者にとっては素晴しい歴史教材となる。暴力や性描写が問題となっている一般テレビ番組の中で、このようなテレビ用映画が増えていることは大変好ましい傾向だと感じた。

さて、受賞式の中で会場が唖然とする場面があった。「Don King: Only in America」で最優秀テレビ映画男優賞を受賞した若手黒人俳優Ving Rhames。あまりの感激にオイオイ泣きながらのスピーチとなったのだが、突然同カテゴリーにノミネートされていた大御所Jack Lemmonを壇上に呼んだ。「この賞は本当に値する人が受け取るべきだ」と、なんと受賞したばかりのゴールデングローブをLemmonにあげてしまったのだ。Lemmonが演じたのは、名作「12 Angry Men(12人の怒れる男)」のリメイクで、現在の名優たちを集めた珠玉作品。役者としてLemmonを尊敬してきたRhamesの素直な表現であったようだ。演劇という芸術の下で人種を超えた師弟愛が生まれる。見る者を素直な気持ちにさせてくれる瞬間であった。

オフィシャルサイト一覧

バックナンバーリストへ戻る
INTERNET Watch

Copyright(C), 1995-1997 Impress Corporation.
internet-watch-info@impress.co.jp