|
スーパーボウルのCM合戦 (98/01/28)
1月25日、激戦の末、本命と見られていたGreen Bay Packersを破り、宿願の優勝を手にしたDenver Broncos。3時間以上におよぶスーパーボウル全国中継中は、どの都市でも通りの人影がグッと減るという。まさに米国最高視聴率番組だ。当日のオフィシャルサイトでは、数カ国語による音声ライブ中継、スタジアムの好みの位置から映像を見ることができるビデオカム、グッズの販売、チャットなどをリアルタイムで実施。テレビ中継中にも何度もURLが紹介され、昨年に増してインターネットが番組のサブ情報として活用されていることを実感した。
試合そのものも楽しめたが、私にとっては番組中のCMがなんといっても面白かった。視聴者数1億3,000万人、全米の45%が見ると言われるスーパーボウルのCM枠は、30秒でなんと130万ドル。今年も各企業が腕によりをかけた新作CMを発表した。Pepsi、Nike、M&M、Visaなどの一般大企業に混じって、コンピュータ関係のCMにも秀作が目立った。
IntelのCMミステリー「犯人は誰だ?」は、初のインターネットユーザー参加型CMとしての前評判が高かった。「Intelの滅菌室からPentium II processorが盗まれた。容疑者はゲーム狂のJimmyか? それともWebデザイン狂のSuzyか?」…。俳優Steve Martinのナレーションとミステリアスな白黒画面の第1部は、スーパーボウルの前半に放送。それを見た視聴者はIntelサイトで投票を行ない、その結果用意されていた2つの結末のうちの1つが選ばれ、後半に放送された。約39万人がサイトで投票を行なったという。単純な企画ではあったが、結果を待つという要素が加わり、より一層番組を楽しむことができた。
Oracleは「The Seat of Knowledge」というコンセプトで、上質のCMを放送。爆撃に逃げ惑う市民や戦地の映像が続いた後、場面は静かな寺院へと移る。半開きの扉の向こうにあるのは、1つの赤い椅子。ナレーションは「革命の形はこれから変わる。地球のどこにいても誰もが平等に使える『知識の椅子』があれば」、というもの。ネパール、カンボジアなどのロケーションで、70名の撮影陣を使ってKhmer Rouge革命のシーンを再現したという。情報産業という、無形だが無限の可能性を秘める商品だからこそできる芸術性の高いCMであった。
AT&TのCMは、通信全般の普及をアピールしたかわいらしい作品。少女が友達に好きな男の子の名前をこっそり打ち明ける。それが携帯電話や電子メールを伝って、あっという間に学校中に知れわたり、家に帰ると母親までが「あの子、かわいいじゃない」とからかう。恥ずかしさと怒りで自室に駆け込むと、好きな男の子がニッコリ待っているというもの。これでティーンのチャット時間がまた増えるかもしれない。
全般的に見てみると、CMが単なる商品のアピールよりも、物語形式のものが増えているように思える。やはり面白さにかけて一流品と呼べるのは、Nikeの新キャンペーン「I Can」や、Pepsiの「Generation Next」シリーズなど。しかし、情報産業CMも今後どんどんユニークなコンセプトが増えてきそうで、今後が楽しみだ。
バックナンバーリストへ戻る