サオリ姉さんのSurfin'USA |
ネットが救った少年のドメインネーム「pokey.org」 (98/04/27)
4月22日のWired Newsの記事に思わずニッコリしてしまった。「'Pokey' Wins His Domain Name」。Pokeyというドメインネームを取り巻く事件は、去年からネットで話題になっていた。ホロッとするような純粋な話で、思わず心を引かれていたネチズンも多かったことだろう。経緯はこんな具合だ。
ペンシルバニアに住む12歳の少年Christopher Van Allen君は、産まれる前から「Pokey」というニックネームで呼ばれてきた。誕生日に両親がくれたのは、とってもクールなプレゼント。「pokey.org」というドメインネームだ。Webページ制作が大好きなPokey君は、さっそくホームページをオープンし、自分の好きなゲームのこと、マンガのことなどを発信し始めた。
そんなPokey君のもとへ、数ヵ月たって一通の手紙が届いた。「GumbyとPokeyの登録商標は我社Prema Toy Co.が所有しているので、あなたのドメインネームpokey.orgは我社に帰属する」と、pokey.orgの同社への受け渡しを迫る内容。Gumbyと言えば有名な子供向けクレイメーションのキャラクター、そしてPokeyはその相棒の馬だ。「登録商標侵害は犯罪」と明記された手紙に、Pokey君も両親もびっくり。身に覚えのない告発に当惑し、弁護士に相談した。
「pokey.orgは商用サイトではないから登録商標侵害ではない」と反論すれば、「侵害ではなくても登録商標効果を弱める」と、今度はNetwork Solutionsに手を回し、サイトの運用を一時停止させると言う。困り果てるVan Allen一家。
しかし、このニュースがネットに流れると、世界中から助けの手が伸びた。毎日届く励ましの電子メール、トンガの王子は「pokey.to」をプレゼントし、多くの米国のプロバイダーは停止されてもサイトにアクセスできる方法を提供した。
そしてある日、また一通の手紙が届いた。「私はGumbyの作者Art Clokeyだ。こんな問題が起こっているとは今まで知らなかった。サイト停止要請はすぐに取り下げさせた。pokey.orgはずっと君のものだから、安心してほしい」。世界中の子供に愛されるGumbyの産みの親Clokey氏は、現在76歳。子供の心を傷つけるなどという自分の信念に反したことにGumbyが使われているなど、全く知らされていなかった様子。ネットでの反響が1人の少年の声を大御所に届け、事件は幸せな結末を迎えたのだ。未成年クラッカーや児童の猥褻サイトアクセスなど、何かと暗い話題が報じられるこの頃、なんとも心暖まる話ではないか。
こんな話にはめっぽう弱い私は、早速Pokey君にメールを出してみた。するとその日のうちに日本の読者の皆さんに対するコメントが返ってきた。「世界中から『君のやっていることは正しい』という励ましのメールをもらい、嬉しかったです。Clokey氏も『きっとGumbyも私と同じことをしただろう』と言ってくれました」。暖かい話がパーソナルになって、ますますネットが好きになってしまった。
Pokey君から日本の読者の皆さんへ |
Dear Mrs. Kappus, 僕へのメールのために時間をさいてくれて、ありがとうございました。 おもちゃ会社から初めて手紙をもらった時、僕はちょっとびっくりして怖くなりました。「pokey」は僕のニックネームだし、英語の辞書にのっている単語だし、「pokey.org」をおもちゃ会社に渡さなければならないなんて、なんだか間違っていると思いました。僕のホームページには、そのおもちゃ会社やおもちゃのことは一言も書いてありません。だから父と母が「どうしたいか?」と聞いた時、僕は「渡したくない」と答えました。弁護士たちが僕に替わって、僕のことや、僕が登録商標効果を弱めているということはない、と相手に伝えたけれど、要求はちっとも止まりませんでした。 しばらくの間、ホームページを守るためには裁判をしなければならないのかと、心配でした。そんな時、Clokey氏から手紙が届きました。事件のことを初めて知ってとても残念なこと、すぐにおもちゃ会社の要請を止めたこと、が書いてありました。Clokey氏は信念を持った素晴しい人で、「きっとGumbyも私と同じことをしただろう」と言ってくれました。 世界中から助けの手を伸ばしてくれた人々にもとても感動しました。メールをくれたほとんどの人が、僕がやっていることは正しい、と書いてくれたのはとても嬉しかったです。 Best regards, Chris "Pokey" Van Allen |
(原文) Dear Mrs. Kappus, Thank you so much for taking the time to write to me. "When it first started I was a little scared and surprised at the same time. It didn't seem right to me that I should have to give up "pokey.org" since "pokey" is my nickname and a word in the English dictionary. I wasn't saying anything on my page about the toy company or their toys. So when my parents asked what I wanted to do I said I wanted to try to keep it. Our lawyers sent a letter telling them about me and that I wasn't diluting their trademark but that didn't seem to stop them. For a while I was worried that we would have to go to court if I wanted to keep my page but then I got a letter form Mr. Clokey himself, saying he was sorry for the whole mess and that he had told his lawyers to remove the complaint with the Internic. Mr. Clokey didn't know about everything that had been going on with the lawyers and when he found out he stopped them. He is really a very nice man and said that Gumby would have done the same thing I did, by standing up for what he believes in. Last but not least I was really impressed by all the support I got from all around the world. It is nice to know that almost everybody that wrote to me thought that I was doing the right thing." Best regards, Chris "Pokey" Van Allen |