サオリ姉さんのSurfin'USA |
難解単語のスペリングコンテスト「National Spelling Bee」 (98/06/01)
スヌーピーでお馴染みのコミック「Peanuts」で、こんな話があったのを覚えている。スヌーピーの飼い主チャーリー・ブラウンが、学校のスペリングコンテストの決勝に残るのだが、最後の問題が「Beagle」。応援席のスヌーピーは、自分はビーグル犬だから当然楽勝と信じてニコニコ顔で見守るのだが、なんとチャーリーは間違えてしまう。チャーリーの愛情なんてこんなものだったのか…、とがっくりするスヌーピーの悲しい表情が落ちだった。
英語圏の子供たちにとって、英単語のスペルを覚えるのは、漢字を覚えるのと同じようなもの。教師が発音する単語を聞いて、そのアルファベットを口頭で1文字1文字暗唱するのは、米国の小学校の教室ではよく見られる光景だ。そんな学習法を生かして、世界規模で開催されるスペリングコンテストが「National Spelling Bee」。各学校、各地域、各州の予選を勝ち抜いてきた少年少女が、毎年2日間に渡る最終選考へと挑み、この模様はテレビやラジオのでも報道されるという大規模なものだ。本年度の決勝は5月28日に行なわれたが、今年はその模様がESPNを通じてインターネットでも中継されたようだ。
今年の最終選考に残ったのは、9歳から15歳までの248名。参加国も米国、グァム、メキシコ、バハマ、サモアなどと多彩だ。11回戦トーナメント方式の難関を見事にクリアしたのは、ジャマイカから出場した12歳のJody-Anne Maxwellちゃん。出場前に8ヵ月の猛特訓をしたというJody-Anneちゃんは、1925年からの長い歴史を持つコンテストで初の米国外優勝者だ。ABCNewsによると、「1万ドルの賞金は、ジャマイカの他の子供たちを助けるために使います」と報道陣に語ったそうだ。上位入賞者の中には、カメラとライトで上がりっぱなしだったが決勝まで残った12歳のJoyちゃん、在宅スクーリングを受けながら語彙は読書で増やしたという13歳のJohn君、認定辞書の点字版がないためハンディーを背負いながらも健闘した13歳のJessicaちゃんなど、人間ドラマがいっぱい。参加者全員が優勝者と言ってもいいくらいだ。
さて英語に堪能な読者には、このコンテストでどんな単語が出題されたのかが興味あるところだろう。Jody-Anneちゃんが正解し優勝を決めた最後の問題は「chiaroscurist」。光と影を使って奥行きを見せる手法を使う画家、という意味だ。私自身も知らなかった単語で、これを1文字ずつゆっくりとJody-Anneちゃんが回答し終え、「正解です」の判定が下った瞬間には、ラジオに向かって思わず拍手喝采してしまった。「National Spelling Bee」のオフィシャルサイトでは、11回戦に出題された単語が判定結果とともに掲載されている。また、CNNの特集ページでは、優秀の瞬間を収めたビデオクリップや、読者のスペル能力をテストする「Spelling Quiz」などのゲームも設置されている。
Jody-Anneちゃんの優勝の秘訣は「神様を信じ、一生懸命勉強し、ゴールを見失わないこと」。なんだか「老いて子に従う」といった心境だ。
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