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日常生活中継の魔力「Jennicam.org」 (98/06/10)

 6月5日に米国で封切られた映画「the TRUMAN show」は、現在興行成績1位のヒット作。本物そっくりに作られた町の住民はおろか、親友、親、妻にいたるまで皆俳優で、知らないのは本人だけ。その限りなく自然な主人公の24時間中継番組を、世界中の視聴者が夢中で見ているという話。実生活をメディアが追い続けるというプロットはハリウッドでも流行らしく、来春には「Ed TV」という作品も公開予定だ。あるレンタルビデオ屋の店員が、自分の生活の24時間テレビ中継を承諾し、思わぬ混乱や葛藤に巻き込まれるというもの。「アポロ13」「身代金」に続く、ロン・ハワード監督の大作という触れ込みだ。

 テレビの世界でも不思議な人気番組がある。MTVの「Real World」は、初対面同士の素人ティーンエイジャー7人の、1年間の共同生活を番組として放送するものだ。喧嘩あり恋愛ありの日常はまさに台本なしの世界だが、「自分たちの生活を見ているよう」と若者に大人気で、現在6シーズン目を放送中。毎年ロンドン、ニューヨークなど世界の大都市に移動する共同宿舎も魅力だが、番組出演から芸能界への道も開けるとあって、7シーズン目のオーディションには候補者が殺到しているという。

 そして、「生の生活をネット中継する」ことで大成功したのが「JenniCAM」。21歳のWebデザイナーJenniferが、自室のコンピュータの上にQuickCamを設置し、自分の日常生活を24時間ネットに向けて中継している。開始したのは'96年の春。当時学生だったJenniが、モニターに向かって必死で作業する様子、友達と電話で話す様子、ペットの猫と戯れる様子、Jenniが外出していればカメラは乱雑な部屋をずっと映しているだけ。何でもない日常なのだが、これがネチズンの間でカルト的人気を博し、ファンのサイトでは「サイバースペースの女王」と崇められるほどになってしまった。1日の訪問者数はなんと50万人。一般訪問者は30分に一度更新される画像を見ることができるが、月15ドルの会員エリアでの更新は3分ごと。現在6,000人ほどが登録しているというから、メンテナンス費を差し引いても相当な収入だ。

 「JenniCAM」の人気は今年になってもさらに上昇し、5月に放送を開始した24時間インターネットテレビ「ZDTV」の初日の特集としても取り上げられた。現在ワシントンDCに住むJenniを、テレビ局のあるサンフランシスコに招いた折も、JenniCAMの中継を跡絶えさせてはならぬと、ホテルにカメラ一式が設置されたようだ。人気がこうじて新企画「JenniSHOW」も開始。2週間に1回のビデオ中継ショーだが、これも「Jenniの引っ越し」「Jenniの新しい靴」など、ほんとうに何の変哲もない日常だ。オンラインストアでは「I'd rather be watching JENNICAM」というバンパーステッカーまで売っている。

 「事実は小説より奇なり」とはよく言ったものだが、それにしても他人の単なる日常にこんなに夢中になれるとは…。メディアがもたらした何とも不思議な現象だ。

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