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インターネットで社会復帰、ホームレスによるビジネス「ROOSA III INC.」 (98/06/22)

 「ROOSA III INC.」というWebデザインサービスがある。最初の1ページのデザイン料が25ドルで、2ページ目から10ドルずつ。顧客が求める内容をデザインしたのち、無料でサイトにアップしてくれる。価格が他の業者に比べて安く、デザインの質もまずまずで、モラルに反する内容は受け付けないなどのポリシーもしっかりしている。サイトからは全く分からないが、実はここ、一人のホームレスによって運営されているのだ。

 6月16日にSan Jose Mercuryに掲載された記事のタイトルは「コンピュータ天才ホームレスのWebサイト」。カリフォルニアの35歳のホームレス、Harold E. Roosa III氏の毎日が紹介されている。身なりも整い、言葉遣いも教養が溢れ、酒も薬物も飲まない、という我々が描くホームレスのイメージとは全く異なったRoosa氏。予告なしに上げられた家賃がきっかけとなって、普通の生活から一瞬にしてホームレスになってしまったのだという。

 レストランやコンビニでの一時的な仕事探しをしながら、ホームレスシェルターに寝泊りするRoosa氏は、空き時間のほとんどをCalifornia大学Riverside校の図書館や、写真博物館の資料室で過ごすのだそうだ。誰でもインターネットが無料で使用できるコンピュータが設置されているからだ。それらを使ってRoosa氏は「ROOSA III INC.」のホームページのアップデートや、仕事の受注作成などを行なっているのだという。写真博物館のマネージャーも「他にコンピュータを使いたい人が待っているのでない限り、何時間使ってもらっても構わない」とコメントしている。

 米国のホームレス救済組織「National Coalition for the Homeless」の「現状レポート」によれば、'96年時点のホームレス人口は76万人、その年にホームレスを経験した人口は120万から200万人とある。その理由も決して怠惰ばかりではなく、中下層階級における雇用の低下、最低賃金の伸び悩み、医療費の高騰など、ギリギリの生活をしているところへ訪れた不意の要因というものが多い。精神や身体の障害による社会からの拒絶という例も目立つ。

 意に反してホームレスになってしまった人々は、当然社会復帰を望む。しかし、外見が大きく考慮される面接では、どんなに能力があってもシェルター生活でやつれていく風貌は大きな反因となり、復帰意欲をなくしていく人たちが多い。ここで活躍するのがインターネットの求人システムだ。現在インターネット中に普及しているJob Searchを利用して、職探しの可能性を広げている人々も増えているという。また、そういった人々が無料で使用できるアクセス場所、無料メールアカウント、無料ホームページなどのサービスも大きな助けとなっている。

 「ホームレスだから働けないと考えるのは間違っている」と語るRoosa氏。「ROOSA III INC.」のビジネスが軌道に乗り、一日も早く「自分のベッド」で眠れる日が来ることを願う。


●「ROOSA III INC.」から読者のみなさんへ

 励ましのメールを送るついでに日本の読者へのコメントをお願いしたところ、ご本人からのメッセージが届いた。紙面を借りてご紹介したい。

Well, This is definately a supprise to me. Go ahead share it with the world. They need to know that there is still hope through persistance and faith.

(メールを頂いて驚きました。ぜひこのことは世界の人々に伝えてください。根気と信念があれば必ず希望があるということを。)

Thanks.

Harold E. Roosa III.
Roosa III Inc.

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