サオリ姉さんのSurfin'USA |
UnofficialがOfficialになる日「slyfamstone.com」 (98/07/27)
いつか当人から連絡があるかもしれない。それが大好きな有名人のファンサイトの作った理由の一つである場合も多いだろう。歌手、映画俳優、スポーツ選手など、インターネット上には無数のファンサイトがあるが、そのほとんどはなぜか本人への思いは届かず、事務所やレコード会社からのストップがかかったりすることの方が多い。画像や音声などの著作権が関わるのだから、これも仕方のないことだ。そんな中、ファンサイトから憧れのスターとの友情が生まれたという、サイト制作者にとっては夢のような話が、音楽誌「Rolling Stone」に掲載されていた。
「Sly and the New Family Member」と題された記事は、「Sly and The Family Stone」のファンサイト制作者、Jonathan Dakssのサクセスストーリーだ。Sly and The Family Stoneと言えば、'60年代から'70年代にかけて数々のメッセージソングをチャートに送り込み、人種混合編成とそのファンクビートで、米国ポップ音楽史に多大な影響を残したグループ。その動きの中心となっていたリーダーのSly Stoneは、'70年代末以降すっかりと音楽シーンから姿を消し、熱烈なファンから消息を問われていた。
人類の平等や解放を歌った曲の数々を、時代の流れに埋もれさせるべきではない、とDakssがサイトをオープンしたのが数年前。当時の体制に対する弁舌を多く含む、Slyの過去のインタビューなどもできる限り掲載した。内容の充実度が周囲の評判となり、友人のまた友人を経由して、この噂がSly本人に届いたのが今年のこと。原始的なコンピュータなどを使って音楽は作り続けていたSlyは、隠居生活のような日々の中、インターネットにはたいへん興味を持っていたらしく、すぐにサイト制作者に会いたいと希望。著作権云々を飛び越して、晴れてDakssはSly本人宅に招待されたという。
Sly宅のコンピュータをアップデートし、インターネットに繋げる作業を終えたDakssに、Slyからのお返しは現在制作中の曲の弾き語り。ずっと尊敬し続けていたミュージシャンの、自分のためだけの生演奏に、Dakssは涙したという。その時の感動の模様は、Dakssのサイトで読むことができる。Sly直々の許可を得たサイトは「Unofficial」から「Official」へとタイトルも一変、単なる1人のファンがサイト制作を通じてSlyのファミリーとなった。
実は私もずっと憧れているミュージシャンがいる。Sly同様に、時とともに忘れられそうな人物だ。Dakssに習って、ファンサイトを作ってしまおうかとも思うが、まず著作権について勉強するのが先のようだ。
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