1998年3月4日
HEADLINE 3 articles
●インターネット修正論が台頭
○通産省はECでの消費者保護体制強化
○地域情報ネットワーク整備3題
余談2題:CHOCAO正式版/小学館のマルチメディア百科事典
今日の特報:米独禁法公聴会の様子/休刊のお知らせ
[接続料金体系](レベルA)
●インターネット修正論が台頭:距離と時間に制約が
日経新聞11面には、米国でインターネットの料金体系見直しの動きが出てきたという記事が掲載されている。米ワールドコムのシッジモア副会長が、「通信距離に応じて接続料金が高くなる」という電話方式をインターネット料金にも導入する可能性について言及したほか、IBMも4月から、個人ユーザー向けの「定額料金で使い放題」のサービスを廃止し、月百時間を越えるユーザーからは追加料金を取る料金体系に移行すると書かれている。
また同面の解説では、台頭するインターネット修正論と題して、「インターネットは96年末に崩壊する」というメトカーフの法則を引き合いに出し、「インターネットの爆発的普及に通信会社のネットワークが対応できない」時期が、単にずれたのだと説明している。米通信業界はインターネット需要の拡大に対応し、設備投資を年20%の勢いで伸ばしており、技術的にも光ファイバー1本の通信容量も急拡大してはいるが、今後ますます加速する需要拡大にネットワーク増強のペースが追いつくことが難しいという見通しから、インターネット「修正論」が浮上してきたという。インターネット料金の一部に変更を加え、需要と供給のバランスを回復し、最終的には持続可能な発展の維持を目指すという。
定額料金制だとユーザーが増加しただけ負担がかかるため、時間帯や時間量での料金体系に移行していくことは、ある程度は致し方ない部分がある。通信業者からすれば、逼迫するユーザーのニーズに通信網への設備投資が間に合わない状況が生まれつつある、ということなのだろう。
しかし、通信距離によって料金が変わるという、これまでの電話的な発想そのものが、インターネットにとっては前時代的であるようにも感じらる。インターネットの長所の一つでもある、距離の壁を破る特性に制限がかかることは、現在進行中の情報革命そのものにも相当な影響があると考えられる。
○通産省はECでの消費者保護体制強化
日刊工業新聞1面トップには、通産省がインターネット上でのEC普及に対して、訪問販売法の運用規定見直しなどの消費者保護体制を強化するという記事が掲載された。3月中に訪販法の省令を改正して、ホームページ上に業者の「住所」と「法人名」の他に「法人の電話番号」と「代表者名」を明記することを義務づけるという。また5月には、消費者月間と合わせて、EC業者のHP掲載内容の一斉点検日「インターネットサーフデイ(調査日)」も実施するようだ。上記の取り組みは、既に国内のEC業者は8千社を越え、ここ一年では5千社を越える業者が新規参入してきた現状を踏まえて、消費者保護の観点からECの健全な発展を促進することが目的と書かれている。
3月3日号のWatchに、警察庁による「インターネット利用有害映像送信営業の実態」調査のまとめが掲載されていたが、行政による司法や商法などに関する監視・指導が、ネット社会にもじわじわと入り込んできているようだ。当たり前の流れではあるのだが、それほど日本の社会でもECが一般化してきたということだろう。
○地域情報ネットワーク整備3題
日刊工業新聞9面には、自治省の外郭団体の地方自治情報センターが3日、イントラネット利用など4項目の新規研究事業を盛り込んだ平成10年度事業計画を発表したという記事が掲載された。行政情報のネットワーク化を背景に、行政情報の交換と提供方法やイントラネット利用、情報システムの効率運用、在宅福祉サービス支援システムの4項目で調査研究を実施するという。また茨城県古河市や栃木県野木町、埼玉県北川辺町などの1市3町が実施するインターネットを利用した公共施設の広域予約システムの調査研究も支援する。
また日経産業新聞2面には、山口県がインターネット技術を使って企業や家庭との間で行政や医療などの地域情報をやり取りする「やまぐち情報スーパーネットワーク構想」を始めるという記事が掲載された。総額28億円をかけて専用の光ファイバー網を張り巡らして2001年度の運用開始を目指すという。全県型イントラネットとしては、岡山県の「岡山情報ハイウェイ構想」に続く試みとのことだ。
次に日刊工業新聞34面には、佐賀県ではCATV網を利用したマルチメディア総合実験を開始するという記事も掲載された。98年度予算に4,550万円を計上し、4月にも発足する産学官組織の「NetComさが推進協議会(仮称)」を助成して、CATVケーブルでの双方向高速通信網を構築する。この取り組みを「SAGAマルチメディア情報ハイウェイ」構想の一環とするようだ。
地域活性化のために、情報ネットワーク・インフラを自治体単位で整備しようとする試みは、国の景気対策とも重なる部分が多く、一種のブームになりつつあるようだ。
ただ、また巻頭の話題に戻ってしまうのだが、インターネットの世界が「距離と時間の制約」を受けてしまうような流れになってしまうと、地域の活性化を目的としたこのような行政施策も水泡に帰する可能性もあるので、施策を進めるにあたってもその流れを注視する必要がある。
余談その1:CHOCOA正式版
日経産業新聞2面には富士通研究所が、企業向けのインターネット・チャット・システム「CHOCAO」を開発したという記事が掲載された。3月16日からホームページで正式版を無償で公開し、イントラネット上でのリアルタイムの情報伝達ツールとして、Webや電子メールと並ぶ業務用ソフトの中核として提案していくという。
Webはプル(自分で引き寄せる)情報で、電子メールはプッシュ情報なわけだが、チャットはプッシュ、プルとも連続的に情報を扱うことになるので、その処理作業にかかりっきりになってしまうかもしれない。
また、結構チャット行為そのものにハマっている方も多い(?)ようなので、ご使用の際にはお気をつけを...(^_^;)
余談その2:小学館のマルチメディア百科事典
日経産業新聞3面には小学館が、大型百科事典「日本大百科全書」をマルチメディア化するという記事が掲載された。大型百科では初めて動画や音声、アニメーションなどのマルチメディアコンテンツを収録したほか、インターネットにも対応する。「日本大百科全書+国語大辞典 スーパー・ニッポニカ」として大百科全書26巻と国語大辞典をCD-ROM4枚に収録し、収録項目に関連したURLも約2千件も入るという。10月にも発売し、価格も書籍の1/3程度の7万8千円に抑える予定。
百科事典のデジタル(ネット検索)化は、3月4日のサオリ姉さんのSurfin'USAにもあるように、これまでの「百科事典を持つ喜び」のようなものを根底から変えてしまう可能性がある。その感覚は、MITメディアラボのネグロポンテ教授が言うようなA
to B(Atom to
Bit)へと変わっていく移行期での、エレジー(哀愁)みたいなものなのかもしれない。
今日の特報:米独禁法公聴会の様子
朝日新聞夕刊の1面(asahi.comの特報)と日経新聞夕刊の3面、産経新聞のサイト、そして今日のINTERNET Watchでは、米国時間の3日、反トラスト政策を扱う米上院司法委員会での公聴会における、ビル・ゲイツ会長やネットスケープのバークスデール会長、サンのマクニーリー会長ら6人の証言に関する、4時間余りにわたる激しい議論の様子を伝えている。
その他にも象徴的なエピソードとして、バークスデール会長が聴衆に向かって「PCを使っている人は手を挙げてくれ」と呼びかけ、「その中でWindowsを使っている人は手を下ろしてくれ」と言ったところ、ほぼ全員が手を下ろした、というくだりがある。
この現状を、合法的な寡占状態と見るか、違法な独占状態と見るかで、米連邦地裁及び高裁の判断が分かれることになろう。
今朝のTVでもこの模様を放映していたが、米公聴会の様子は昔の記録フィルムの頃(マッカーシー時代の俗に言うレッド・パージなど)と変わりがなく、我々は21世紀の情報化社会を迎える歴史の1ページを目の当たりにしているのかもしれない。
休刊連絡:
明日と明後日、NEWS Watchは休刊(6日はWatch
Web版休刊の為)とさせていただきます。どうかご了承の程を、お願い致します。m(__)m
|