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ウォッチャー金丸のNEWS Watch

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1998年3月9日


HEADLINE 3 articles

携帯電話とPHS:勝ち組みと負け組みが明確に
米ハイテク業界に陰りが見える!?
マルチメディア情報ステーション、発進
余談3題:ドメイン管理で米欧確執/VRML案内システム/ネットスケープ社の買収について/休刊のお知らせ


 

 本日は新聞休刊日のため、6日(金)~8日(日)の新聞からWatchしたものを取り上げたい。

[PHS][携帯電話]レベルA'2月19日号のNEWS Watchも参照
●携帯電話とPHS:勝ち組みと負け組みが明確に

 7日の日刊工業新聞5面8日の日経産業新聞5面には、移動電話(携帯・自動車電話とPHS)の2月末の普及状況速報がまとめられている。それによると、携帯電話が3千万台の大台を突破してNTTの一般加入電話の半分に当たる3,030万2,100台に達した一方、PHSは加入者が5カ月連続減少の686万台になったという記事が掲載されている。
 またこの件と関連して、6日の日経新聞夕刊1面トップと7日の日経新聞9面及び日刊工業新聞5面、そして8日の日経産業新聞16面には、NTTが傘下のPHSのNTTパーソナル通信網の9社の損失処理策として、98年3月期に約680億円の引当金を計上するという記事も掲載されている。NTTパーソナルの3月期の最終利益は、従来予想の2千6百億円から千9百億円前後の落ち込みになるとしており、NTTはPHS事業をNTT移動通信網(NTT DoCoMo)に移管する方針で、PHS9社は清算される見通し。また他のPHS業者であるDDIグループとアステルも含めた3月期の累計損失が、総計5千億円を越えると予測され、各グループとも再建計画を早急にまとめるようだ。

 PHSの利用者が減少したとはいえ7百万人弱の加入者数があるので、業績不振によるサービス中断もままならず、非常に苦しい状況に陥っているようだ。かつての国鉄の状況にも似ているが、既にPHS事業は各地方への分社化が図られており、巨大化した全国事業を分割し独立採算で収益アップを望む手も見込めず、再建計画も新規事業とリストラ策くらいにしか頼らざるを得ないのではないだろうか。
 そういった意味では、7日の日刊工業新聞5面にもあるように、最大手のDDI東京ポケットなどPHS各社は98年度末に64kbpsPHSを投入して音声からデータ系に事業を転換し、携帯電話との差別化を図るという方向性は間違ってはいないだろう。
 日本発の移動電話システムとして期待されてデビューしたPHSだけに、ピッチという呼び名がコギャルという言葉とともに消え去らない様、頑張ってもらいたいと思う。




○米ハイテク業界に陰りが見える!?
 8日の日経新聞5面には、インテル3月3日号のPC Watch参照)に続いてコンパックも98年1~3月期の業績下方修正発表したことについて、米国の好景気を引っ張ってきたハイテク業界に成長鈍化の影が忍び寄ってきたという記事が掲載された。その背景には「低価格」と「アジア」という二つのキーワードがあるとしており、千ドルパソコンの出現による利益率の悪化と、アジアの通貨下落による米企業の収入減や経済の落ち込みによるIT投資が鈍ることなどが主原因となるのではないかとしている。また米アナリストは4~6月期の結果を見ないと、ハイテク市場そのものの鈍化なのか、個別の企業事情に留まるのか、判断が難しいともしてるようだ。

 アジアの経済危機に関しては、ハイテクのみならず全産業がダメージを受けており、特に売れ行きが好調だったIT産業への影響が大きい事は、容易に察しがつく。
 しかし低価格化に関して言えば、PCが家電並みの価格になったとき、同時に家電並みの使いやすさが達成出来るかどうかに、この停滞を乗り越える突破口(ブレイク・スルー)があるように思われる。このままPCが安くなっていくだけでは、ユーザーの裾野も限定され、市場自体のパイも伸び悩むのではないだろうか。


○マルチメディア情報ステーション、発進
 8日の日経産業新聞2面には、NTTや名古屋市などが出資する第三セクターの名古屋情報センターが、電子メールの送信や市営施設の利用予約などができる街頭端末機「マルチメディア情報ステーション」を市内に展開するという記事が掲載された。名古屋の繁華街・栄に1号機を設置したのをはじめ、従来のキャプテン端末に代えて、98年度中にデパートや駅など計40カ所に設置するという。利用者は画面上のキーに触れて操作し、利用料金は無料だが、1回15分までの時間制限があるようだ。端末ではホームページ閲覧やショッピングやフリーマーケットのコーナーを利用でき、市営スポーツ施設などの予約も可能で、メールの送信も画面上のキーボードで文字を打ち込んで行うらしい。

 接続料金が必要とはなるだろうが、モバイル派のために携帯機器との接続も可能となれば、もっと利便性が上がりそうだ。
 15分でメールを書きを終える必要がありそうなので、急ぐ余りに手に汗握って画面を指紋だらけにしてしまいそうなのが、気にはかかるのだが…。



余談その1:ドメイン管理で米欧確執
 7日の日経新聞7面には、ドメインネーム(アドレス)の国際管理体制を巡り、米国と欧州との間の確執が表面化してきたという記事が掲載された。米政府が1月に発表した改革案(2月3日号のINTERNET Watchも参照)は、ネットワークソリューションズ社に管理委託している現行の方式を改め、民間の非営利組織による国際管理への移行を打ち出しているのだが、欧州委員会はそれに対して「管理体制にEUの完全参加を求める」などとしているようだ。欧州では、上記改革案による米国の支配力が増すことへの警戒感が強いらしい。

 ドメイン管理の問題は、将来の商標など利権に絡む問題もあり、ホットな部分もある。このような大きな国際ルール作りに対して、インターネット普及率の低い日本の影はますます薄くなるばかりだろうか。米欧の二極化の元で、日本がオロオロしてしまう姿が目に浮かんでしまうのは、何とも寂しい事に思われる。

余談その2:VRML案内システム
 8日の日経産業新聞4面には、上智大学の加藤誠巳教授の研究室が、回転や視点の移動、ズームアップなどが自由にできる3D画像で案内地図情報を作成し、携帯機器などにインターネットで送信する基礎システムを開発したという記事が掲載された。開発したシステムはVRMLを使っており、地図情報を3D化して電子メールで送信するものと歩行者が携帯情報端末で案内図を受信するもの、カーナビなど高速移動端末向けのものの3種類という。一般的な画像情報と比べて十数分の1で済み、画像の向きなどを変える操作も容易になるとしている。

 VRMLメールを受け取るには、VRML対応のソフトやブラウザーが必要とはなるが、道案内用としては分かりやすい表示が可能となりそうだ。

余談その3:ネットスケープ社の買収について
 7日の日経新聞9面と8日の日経産業新聞5面には、米オラクルのレイモンド社長兼COOが日経新聞記者とのインタビューで、ネットスケープ社の買収について触れ、「株価がもう少し下がれば、買収を検討する」と語ったという記事が掲載された。そのほかにも、「ネットスケープ社のインターネット技術やブランド力は非常に魅力的だ。同社もあれほど業績が悪化すれば、売却の道を進むだろう。IBMやサンも買収に名乗りを上げてこよう」などと発言したようだ。

 6日の日経産業新聞2面では、日本ネットスケープ・コミュニケーションズ社がブラウザー市場でのシェア巻き返しに乗り出し、5日から雑誌の付属品としてコミュニケーターの無償提供を始めたほか、シマンテックや住友金属工業などソフト会社約10社にバンドル版として提供するなどとしているが、遅きに失したということになるのだろうか。
 Apple買収劇にも顔を出したオラクルだが、パソコンOSよりもインターネット・ソフト技術に、より触手を伸したがるのはよく分かる。果たして、ネスケの花婿(M&A相手)はいかが相成るのであろう。

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 明日のNEWS Watchは休刊とさせていただきます。どうかご了承の程を、お願い致します。m(__)m


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