ウォッチャー金丸のNEWS Watch
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1997年3月18日版


HEADLINE 4 articles

NTTとKDDの海外進出への取組み
ネットワーク・コンピューター関連の動き
子供向けブラウザー「ラインズナビ」
富士通研究所のインターネット・エージェント


[通信会社][インフラ]/[規制](レベルA)
●日本のメガ・キャリアの海外進出への取組み2題

 日経新聞1面には、NTT米AT&T、中国郵電省、KDDなどと共に、日米中間を結ぶ100Gbps程の海底光ファイバーケーブルを建設する記事が、日経新聞11面&日経産業新聞2面及び日刊工業新聞11面には、KDDの米国子会社のKDDアメリカが、米連邦通信委員会(FCC)に対して事業認可を求める書簡を提出する件が掲載されている。
 海底ケーブルの方は、NTT自体が独自の海外へのパイプを2000年に持つことを意味しており、FCCへの書簡は、KDDの通信事業活動を早く米国内で展開したい意向を示したものといえる。両社の動きは、NTT法及びKDD法の規制が外れて同じ土俵で競争が行われることから始まってはいる。しかし、今回の取組みだけで比較すれば、NTTの方は米国や中国との利害も一致することから、国際協力のもと海外への回線を初めて持つことに成功すると思えるが、KDDの方は日本国内の規制自体を棚上げにしておいて、米国での事業を早く展開させて欲しいと言っているように感じられるので、早々にFCCが首を縦に振るとは思えない。
 日本国内のメガ・キャリア同士による大競争(メガ・コンペテション)が始まって、それがサービス競争などのユーザー利益に反映されれば結構なことだが、企業側の(生き残りのための)論理だけでは色々なことで摩擦が起こることは避けられないだろう。


[ネットワーク・コンピュータ](レベルA')
NC関連の動き2題

 日経新聞13面に、日本オラクルがネットワークコンピューター(NC)用の日本語版ソフトを販売する事が、日刊工業新聞12面には、横河電機工業用ネットワークコンピューター(iNC)を開発した記事が掲載された。
 双方ともが利用するNCの中には、DECAlphaチップMPUの中のStrongARMシリーズのうち、SA-110型を使用したものがほとんどである。日本の船井電機NCや赤井電気、ユニデンなどもこれを採用している。私が行った「Spring Internet World'97」でも、米OracleのブースにはNCの試作機(IDEA社作成)が展示されており、LAN上での動作の良さをアピールしていた。DECのブースでも自社製の試作機が展示されており、双方とも現在使っているStrongARMチップを小指の先大でかつICカード並の薄さにしたチップも試作品として展示されており、NCの機器自体がPDAや携帯電話並に小さくなることを予感させていた。
 IntelやMSなどの「NetPC」陣営から使い物にならないといわれているNCだが、PDA並になってLAN上で動作していれば、例えば上記のiNCのように、特殊でクローズドな環境での利用はかなりあるのではないだろうか。逆に、NetPCは事務などのパースナル・ユースに向いており、NCとは住み分けがかなり出来そうに思われる。


[ブラウザー][教育](レベルA')
セコムラインズのブラウザー「ラインズナビ」

 日経新聞12面には、セコムの子会社のセコムラインズが、子供向けブラウザー「ラインズナビ」の記事が掲載された。既にリンク先が決まっており、子供の教育上好ましくないページにはリンク出来ないようだ。
 この様な機能を持ったソフトやブラウザーは今まで、キーワードでのフィルタリングや予め設定したURLへのリンクだけを禁じるようなフィルタリング技術が主流であり、「マイナス」技術だったともいえる。それに対してこのブラウザーは、最初からアクセス先を設定してあり、それに後からもアクセス先を追加して行く「プラス」技術だといえる。最初から数多くのURLを入れておく必要はあるが、教育関連の会社らしく、書いてあることから子供たちに学ばせようとする教科書的な発想ともいえそうだ。
 何にでもアクセス出来る「無制限」の自由があるインターネットの世界に何も知らない子供を放り出すのは非常に危険なことではあるが、そういった中での処世術(サーフィンなどの仕方)や自己抑制などを学ばせないようでは、インターネットの中の「自由な発想」という大きな特徴を知らせないことにもなりかねない。親や先生はこれを子供に使わせていれば安心だろうが、子供の独立心と想像性を育てるということもことも考えた上で、このソフトは使うべきだろう。


[ネットワーク・エージェント](レベルA')
富士通研究所の情報検索「エージェント」

 日経産業新聞5面には、富士通研究所のインターネット上の情報検索システムである「エージェント」を開発した記事が掲載された。
 東芝の「マルチエージェント」(NEWS Watch記事参照)や「秘書エージェントシステム」などとともに、日本のインターネット・エージェント技術の高まりが感じられる。私が行った「Spring Internet World'97」でも、MITのネディア・ラボから生まれたインターネット・エージェント「firefly」のコンファレンスに出席して話しを聞いたのだが、講演後の質問が矢継ぎ早に20以上も出るほど、アメリカ人もこのエージェント技術には関心が高い。特にどのエージェントもそうなのだが、プライバシーの保護に関することが重要なテーマで、多かれ少なかれ、個人情報を持ってエージェント動作をする以上、その利用の仕方によっては重大な情報洩れや情報による個人の操作が行われる可能性のある技術でもあり、firefly社自体も非常に慎重にサービス管理を行っているようだ。可能性と危険性を合わせ持つ技術であるといえる。


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