1997年6月10日版
HEADLINE 3 articles
●日本IBMのパソコン再生事業
●NTTのインフラ&コンテンツ拡充計画
○ご家庭でもボックスでもインターネット・カラオケを
余談4題:IBM総合フェア97の為/15GB-DVD/インフォスフェア/Agent追加情報
[リサイクル][PC](レベルA')
●日本IBMはパソコン再生事業に乗り出す
日経新聞1面には、日本IBMが、PCメーカーとしては初めて家庭で使用済みになった同社製PCの再生事業に乗り出すという記事が掲載された。まずパソコン量販のノジマと組んで、神奈川県の2店舗において7月からPC下取りを開始するようだ。
こういったパソコンなどの下取りを行うサービスは、一部の販売店(ソフマップの買取サービスなど)単位で行われているが、PCメーカー自身もそのサービスに関わってくるのは確かに珍しいことと言えるだろう。中古品から新品へ買い換える層の顧客を掴みたいノジマと、現在PC等の情報機器による産廃ゴミの増加が社会問題になりつつある中、地球に優しいメーカーを目指す(印象づけたい)IBMの思惑が相まって、このサービスが実現したと考えられる。
日本IBMは既に、旧型DOS/Vマシンでインターネットへアクセスできるソフト「IBM
WebBoy for DOS Version 3.0」も発売しており(3月18日のinternetWatch記事参照)、それを「リサイクルウェア」と位置づけていることからも、これまで出荷した製品に対する責任を取っていこうという姿勢が見られる。
今後のトレンドとして、「リサイクル」という命題がその他のPC製造社ばかりでな
く、情報機器メーカー全体に課されて行くことになるだろうが、どこまで販売店や協
力工場などに対してリサイクル方針の徹底が出来るかで、真に「地球に優しい」とい
われる様になるかどうかが決まるだろう。(徹底の為には、方針の”押し付け”では
なく”利益”も生むリサイクルである事が重要だが、これがなかなか難しいことで...)
[インフラストラクチャ][コンテンツサービス](レベルA')
●NTTのインフラ&コンテンツ拡充計画
日経産業新聞1面トップには、NTTが、ATM(非同期転送モード)伝送装置を導入して、全国をつなぐ基幹回線を現在主流の1.6Gbps~2.4Gbpsから10Gbpsに増強するという記事が掲載されている。今年の第3四半期から稼働させる計画で、同時に今年度末には県庁所在地級の都市において、2週間程度で直接光ファイバーを引き込む大容量通信サービスを提供できる体制を整えるようだ。ATM網整備とFTTH(Fiber
To The Home)を一気に押し進めようという計画のようだが、OCNを本気で推進していくためには、必要不可欠なバックボーン強化であろう。
またOCN関連でいうと、同紙3面には、芸能プロダクションでマルチメディアコンテンツの制作も手掛けるスイートルームが、インターネット放送局向けの番組制作に乗り出し、視聴者も審査に参加できるアーティスト発掘番組を、NTTがこのほど開局したインターネット放送局「NUT-TV(ナット・ティーヴィー)」向け
に提供し始めたという記事が掲載されている。「スマートのウェブ・オーディション
アーティスト篇」という、同社に所属する女性2人組のポップスグループのスマー
トが司会役を務める番組で、毎週土曜日の朝6時から24時間、NUT-TVのホームページ
に掲載する予定らしい。
NUT-TVでは既に、週一の番組を毎日2~3本づつWeb上で放送(と言って良いかどう
か)しており、このWebAuditionも土曜がアーティスト編、日曜がアイドル編ということで、番組が開始している。
上記二件からも、NTTが大容量通信インフラの整備と放送型コンテンツの充実とい
う、ハードとソフトの両面からの事業拡充計画を進めていることが分る。まさに、こ
れからの”マルチメディア”時代においても、通信分野も、そしてデータ型放送分野
でもその業務範囲を広げながら、さらに業界をリードしていこうとする意欲が強く感
じられる。
[ネット・カラオケ](レベルB)
○ご家庭でもカラオケボックスでもインターネット・カラオケを
日経新聞16面では、松下電産が、家庭向け通信カラオケ事業で無料のお試しサービスを始めたという記事が掲載されている。Windows95搭載のPCで、松下の会員制インターネット情報サービス「ワンダータウン」もしくはジーアールホームネットのネットワークサービス「ぷらら」に接続すれば誰でも利用可能のようだ。
この「お試し版ダウンロードサービス」は5月30日からデータ更新されており、6月30日までの使用期限付で3曲(約2.85MBの.exeファイル)をダウンロードできる。これは、CD-ROMとインターネットを利用したパソコンでの家庭用通信カラオケ(カラオケコース)の宣伝サービスでもあるので、取り合えず様子を見たい場合に使えるといったところだろう。
また、日経産業新聞2面では、セガ・エンタープライゼスが今月中旬から,既存の業務用通信カラオケ端末機「スーパープロローグ21」(略称セガカラ)に専用キットを加えるだけでインターネット接続機能を持たせた通信カラオケを売り出す記事も掲載されている。(昨年のinternetWatch記事参照)「インターネットセガカラ」(4万9800円)という名称で、CD-ROMとモデム、コントロールパッドなどを含むようだ。
家庭やボックス用ともども、カラオケという元々データ転送に向いているサービス
機器には違いないが、メイン用途がネット接続なのか、それともカラオケなのかで上
記の様にサービス形態も機器構成も大いに変って来る。インターネット接続をただの
付加サービスとみなすか、それとも通信カラオケ自体のインフラと捉えて行くかで、
今後の両サービスの業績の伸びも変ってくるはずだ。
余談その1:
日刊工業新聞7面及び日経産業新聞2面には、またしても日本IBM関連のニュースが掲載されており、WWWコンテンツをページ単位で課金出来るシステム「ペイ・パー・クリックシステム」を開発したということになっている。
また、日経新聞13面には、米IBMがETの様に手を触れ合うだけで電子データをやりとりできる「パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)」の公開実験を都内ホテルで行ったという記事も掲載されている。人間の体を電線の代わりに使うアイデアで、クレジットカード大の伝送装置などを身に着けて相手とデータの送受信を行うようだ。現在は2.4kbpsだが、理論上は400kbpsまで伝送速度を上げられるらしい。
両記事とも、ECやデータ転送分野にとっては画期的な技術報道には違いはないが、
明日からのIBM総合フェア97でも、PANも展示されるということなので、このところのIBM関連のニュース攻勢もこの展示会を盛り上げるためではと感じる程だ。
余談その2:
日経新聞11面&日経産業新聞10面及び日刊工業新聞10面には、松下電産が、青色半導体レーザー(SHG素子で赤色を変換)を使い、片面15GBの記憶容量を持つ高精細相変化型光ディスクを開発したという記事が掲載されている。容量はソニーが開発した光ディスクの片面12GBを上回り世界最大のようだ。
新聞記事の通りに高精細(HD-)DVDの基盤技術となるかは別としても、現在のDVD-
ROM/RAMの上位(大容量)互換への道を開いただけでも、新たな一歩となろう。
余談その3:
日経新聞13面&日経産業新聞2面及び日刊工業新聞9面には、プロバイダーのNTT-PC
コミュニケーションズが6月9日、「インフォスフェア」サービスにて56kbpsアナログモデム(K56flex)対応と北米他での接続ローミング・サービスをはじめたという記事が掲載された。
NTT本体がやりたくてもやれない(NTT法によるローミング規制)ことと、やって欲
しくない(56kアナログ機器普及はISDN普及速度を鈍らせる)ことを、同時に発表し
た子会社ではあるが、この取組みもまたNTTの数ある方策の一つであると考えると...
追加情報:
昨日のNEWSWatchにて報告した日本IBMのエージェントソフトの件だが、Watcherの指摘により、既にIBMで研究開発を行っているエージェント言語の「Aglets」(現在α4c版までバージョンUPしている)である事が判明した。エージェントソフト規格の「KQML」についても参照願いたい。
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