1997年6月23日版
HEADLINE 3 articles
●建設省の「電子入札」システム開発
●ベンチャー企業の現在と未来について
○「DION」と「ODN」サービスについて
余談2題:2000年問題対策GUIツール/次のPCは...
[政策][EC](レベルA')
●建設省の公共工事の「電子入札」への取組み
日経新聞1面には、建設省が、2001年までにインターネット上で公共工事を受発注する「電子入札」を導入するという記事が掲載されている。対象となるのは、建設省直轄の公共工事の一般競争入札のようで、建設省の外郭団体である日本建設情報総合センター(JACIC)と大手建設企業が研究を開始し、通産省の外郭団体の情報処理振興事業協会(IPA)が研究開発費の一部を助成するらしい。インターネットを利用した電子入札では、入札内容の情報が第三者に漏れないようにするための暗号化技術と、実際の企業が入札したかどうか確認するための電子公証システムが必要となるので、建設省は98年度末までに技術開発を終え、2年間の試行期間を経て、遅くとも2001年には電子入札を実施する意向のようだ。
建設省としては、情報公開の公平(透明)化や入札方法の簡便化、迅速な書類処理、ペーパーレス化など、一挙にECの波に乗って押し進める計画のようだが、この記事にもあるように、セキュリティーと認証の方法をどうするのかが、一番大きな問題となろう。
折しも、同じく日経新聞3面には、デンバー・サミットでの8カ国首脳による共同宣言の文案が事前にインターネット上に漏れ、各国政府が当惑しているという記事が掲載されている。トロント大学の「サミット研究会」というグループが21日午後に流したもので、情報の入手方法は謎だが、各国政府の文案メールを勝手に傍受したという見方が強いらしい。また、今日のinternetWatch-Web記事でも、プロバイダーのInfoSphereのユーザーパスワードが漏洩したという事件も報道されており、日本内外でのセキュリティー破り事件が頻発している状況を示している。
電子入札システムを構築する場合でも、簡便性や迅速性の追及と、セキュリティーや認証などの安全性の確保という相反するもののバランス・シートを考える必要が出てくるであろうが、どちらかを偏重して結局使い物にならないシステムにならないような、トータルな設計を望みたい。
[ベンチャーキャピタル](レベルA')
●ベンチャー企業の現在と未来について
日経新聞17面には、通産省の認可団体である日本工業技術振興
協会とNTTが、中小企業創造活動促進法(中小創造法)の認定を受けたベンチャー企業約2,200社の経営支援に乗りだすという記事が掲載されている。NTTが9月から全国展開する動画ネットワークの「ビデオオンデマンドネットワーク」(モニター5万人)とインターネットの双方に、専用のホームページ「CESNet」を開設し、ベンチャー企業の技術や製品を幅広く紹介し、国や自治体からお墨付きを得たベンチャー企業と大企業などとの事業提携を促す意向のようだ。
また、同じく日経新聞15面には、博報堂が、慶応大学藤沢湘南キャンパス(SFC)の学生起業家と共同出資で、中国、香港、韓国、シンガポール、タイなどのアジアのプロバイダーと契約を年内に結んで、各国のニュースや娯楽情報をネット上で共有するベンチャー会社「エー・アイ・ピー(AIP)」(資本金:5千万円、博報堂が40%出資)を設立したという記事も掲載されている。慶大の丸尾教授が監査役に、また村井純教授が顧問に就任しており、各プロバイダーが提供しているニュースや映画をはじめとする娯楽情報などのコンテンツを日本語、英語、中国語、韓国語などに翻訳し、1つのホームページに編集したうえで共有するようだ。
始めにあるのような起業推進のシステムや、SFCの学生ベンチャーを特定企業がバックアップする例などが、数多く出てくれば、日本のベンチャーもアメリカのように大学を出てすぐ起業するようなケースも増えてくると思われ、それが今後の景気を押し上げる活力ともなりうるだろう。
しかしそれに反して、日経産業新聞24面には、日本ベンチャーの雄:ジャストシステムが、97年度3月期決算で88%の大幅経常減益に陥り、株式公開延期の噂も流れていたところで、ジャストの浮川社長が「主幹事会社を野村証券から大和証券に切り替え、今秋の株式公開を予定通り進める」ことを明らかにしたという記事が掲載されている。
時代の流れの激しい早さが、日本のソフト・ベンチャーの星を苦しめているようだが、このままでは日本のベンチャー企業全体が沈滞ムードに覆われる危険性もあるだけに、もうひと踏ん張りを期待したいところだ。アメリカの活況は、MSにしろネットスケープ社にしろ、新たな事業展開で資金や市場を動かし、そこから幾多のハイテク・ベンチャー企業が発生するような好循環を引き起こしているところに依存している部分も大きいので、日本のベンチャー起業システムを好転させる意味でも、流れを止めない方向への働きかけがもっと必要だろう。
[プロバイダー・サービス](レベルB)
○「DION」と「ODN」サービスについて
日経産業新聞2面には、DDIが、インターネット接続サービス「DION」を7月から開始するサービス内容は、ダイジェスト・ニュースにあるので割愛するが、128kbpsの2万4千円が目玉で、OCNの利用料を含めても32,900円と業界最安値になるようだ。
また、同じく日経産業新聞2面には、日本テレコムが7月から秋までに、オープン・データ・ネットワーク(ODN)(新聞記事ではODA(?(^_^;)サービスのダイヤルアップ接続用のAPを全国31カ所の都市圏に設けるという記事も掲載された。現在の通信料金は全国均一の10円/分に設定されており、都市部では10円/3分の市内料金でアクセスできる他のプロバイダー並にするようだ。
いずれもOCN対応で発生してきたコンピュータ・ネットワーク・サービスだが、OCNも含めてユーザー確保やサービス拡大のスピードは緩やかなものになっている。いずれも、既存のプロバイダーに対するサービスメリットがハッキリしていない事が原因と考えられ、こんな拡大基調なら、OCNスタート前の懸念は杞憂だったなと胸を撫で下ろしているプロバイダー関係者も多いのではないだろうか。
しかし、NTT関連3法が改正され、KDDも7月から企業向け国内通信を、来春からは一般家庭向け電話サービスにも参入する計画(本日の日経産業新聞3面に掲載、KDDの6月20日のニュースリリース参照)であることから、国内通信各社もデータ通信を含めた競争を激化させるのは必定で、OCNも含めたサービス各種もその例外ではないだろう。今は、激しい価格競争の嵐の前の静けさと考えた方が良いだろう。
余談その1:
日刊工業新聞9面には、日立ソフトウェアエンジニアリングが、2000年問題対応支援サービスを拡充し、ユーザー自身が資産分析やシステム修正をGUI操作で簡単に行えるツールを提供するという記事が掲載された。
ソフトの2000年問題は、ソフト会社やサービス部門だけではさばき切れる量は決まっているので、現状のペースでは作業量がパンクするのは目に見えている。そういった中で、ユーザーもその対策の一助を担うことができるGUI操作の修正ツールを提供することが、かなりの作業を軽減してくれると期待できそうだ。
余談その2:
日経新聞13面には、市場調査会社のジェイ・ディー・パワー・ジャパン(JDPJ)まとめの企業の「PCネットワーク満足度調査」によると、「今後、PCを1人1台以上導入したい」と考えている企業は全体の33%に上り、現状の企業内のPC普及台数を平均すると4.4人に1台となり、1年前の6人に1台と比べても着実に普及が進んでいるという記事が掲載された。そういった中で、日経産業新聞9面では、会員制データサービス「日経マーケット・アクセス」(日経BP社)が行った、PC購入を予定している個人を対象にしたアンケート調査の結果を掲載しており、購入候補として人気が最も高いメーカーはNECが45.1%で、買い替えや買い増し向けで強いようだ。2位の富士通も37.6%となっており、初購入者の支持ではNECと並んでいる結果となったらしい。
一概には言えないのだが、1人1台時代への過渡期ともいえる現状では、PCの今後の汎用性と今までのソフト資産の継続の狭間で、ユーザーが揺れている結果がここに現れていると考えられる。
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