1997年6月24日版
HEADLINE 3 articles
●通産省の暗号使用機器への輸出審査強化について
●ワールドコム・ジャパンの米UUNETへのダイレクト接続サービス
○高木産業のPURPOSE
PCシリーズ発売
余談3題:インターネット電話システム/自動車+通信会社/OS-9
[政策][セキュリティ](レベルA)
●通産省の暗号使用機器への輸出審査の強化で、日本のハイテク製品の輸出にブレーキ
日経新聞1面には、通産省が、暗号を使った家電・情報製品が海外で悪用されないように配慮して輸出審査を強化した為、高性能PCやICカードなどの輸出にブレーキがかかっているという記事が掲載されている。輸出審査が長引いている暗号製品は、DVD対応PCや電子メールソフト、半導体チップなど10種類を超えており、今までは申請から1~2週間程度で許可が下りていたものが、今は1カ月以上かかるケースが多いということになっているらしい。日本RSAのICカード用の半導体チップなどは、上記の影響で契約を破棄されたなどという事象も起こっているようだ。
また、同じく日経新聞15面には、この様な事態はますます増えてくることを考慮して、日本の新しい輸出審査の在り方を検討すべきときに来た、という解説記事も掲載されている。
上記のような、日本サイドが輸出に関して慎重な対応に移行している中でも、6月18日のNEWSWatch余談その1でも取り上げた、日本シスコシステムズが56bit暗号ソフトを内蔵した通信機器を7月から出荷する件においては、米国商務省は米シスコシステムズに対して56bit暗号化ソフトの輸出許可を条件付き(政府による暗号解読可能)ながらも出したわけで、安全保証よりも産業拡大策を(とりあえず)取っており、対照的な対応のようにも映る。
「輸出規制」ということで言えば、COCOM(ココム:共産圏などに対する輸出規制)なども時代と供に対象国や対象品目が変って行ったように、暗号などのセキュリティー関連の審査基準も変遷して行くものと考えられるので、日本が率先して先例を作ることは出来ないまでも、技術の開発スピードと陳腐化の割合を考慮した審査基準なり規制条項などの明確化が必要となって来るだろう。
[プロバイダー][接続](レベルA')
●ワールドコム・ジャパンの米UUNETへのダイレクト接続サービス
日経産業新聞2面には、米通信会社のワールドコムの日本法人のワールドコム・ジャパンが、日本のプロバイダーを対象に米本社傘下のプロバイダー:米UUネット・テクノロジーズ(UUNET)の基幹網に日本から直接接続できる「グローバル・トランジット・サービス」を始めたという記事が掲載されている。UUNETのバックボーンへの接続点(AP)を日本に開設し、6Mbpsの日米回線を敷設しており、この回線を複数のプロバイダーで使用するために、個々のプロバイダーが国際専用線などを借りてUUNETに接続するよりも安価な接続が可能になるようだ。
この「グローバル・トランジット・サービス」は、ロンドンやパリ、ミラノ等のヨーロッパ諸国や、東京やシンガポール、香港、シドニー等のアジア・オセアニア地域でも販売活動をしており、どちらもアメリカでのUUNETの45Mbpsバックボーンへの接続を売り物にしていることから、この事業には対米国とのより高速かつ安価な接続を狙うプロバイダーを全世界的に集めようという意図もありそうだ。
また、同じく日経新聞15面&日経産業新聞2面及び日刊工業新聞11面には、新相互接続会社の「日本インターネットエクスチェンジ(JPIX)」の記事(internetWatch-web記事参照)も掲載されており、このように現在の回線の混雑状況を緩和する方策が各方面から出てくることは、インターネット・ユーザーにおいて喜ばしいこととなっている。(接続料が上がらなければの話しだが...)
[PC/NC/NetPC](レベルB)
○高木産業の「PURPOSE PC」シリーズ発売
日経産業新聞7面には、ガス機器メーカーの高木産業(静岡県富士市)が、10万円を切るPCもラインアップされている「PURPOSE PC」シリーズを発売するという記事が掲載されている。価格が99,800円となるのは、モニターを家庭用TVにつなぐことができるインターネットPC:PIM-GX133で、CPUがCyrixの133MHz動作、RAMが16MB、HDDが1.3GB、FDD、CD-ROM16倍速ドライブが付いて、Windows95で動作する製品ようだ。他にも、タワーPCやノートPC、(イントラ)ネットワークPC、サーバーなどラインアップが揃っており、6月25日から幕張メッセで開催されるWindowsWorld'97展示会に出展するようだ。
これとは全くの別件だが、またまた同じく日経新聞15面と日経産業新聞7&24面、及び日刊工業新聞10面には、IBMなど11社が23日、モバイル用NCの共通規格「MNCRS」で合意したと発表したという記事(PCWatch-web記事参照)も掲載されており、NC側が明日から始まるWindowsWorld'97でのNetPC日本デビューの出鼻を挫く作戦に出て来ている事が明らかになった。
NC対NetPCの対立が激しさを増している隙をぬって、上記のような廉価PCが市場に出回れば、NCだ、いやNetPCだと言っている間に、安いPCでも充分だと言われてしまう可能性もあるだけに、TCO(Total
Cost ofOwnership)削減という大名目をいち早く実現した側が、特に企業ユースでの拡販が期待出来そうだ。(PCでさえも本体価格が極端に安くなれば、TCOはトータルで見て実現可能となるだろう)
余談その1:
日経産業新聞6面には、リムネットが、カナダの通信機メーカーのビエナ・システムズ(ViennaSystems)社と共同で、ワークステーションで使えるより大規模なシステムに対応するインターネット電話システムを開発したという記事が掲載された。
これはまさに公衆電話でいうところの大規模交換機(PBX)と同じ役割を果たすものと言え、プロバイダーが”ベビーNTT”になる下地にもなりそうだ。
余談その2:
日経産業新聞9面には、日産自動車が、NTTやSo-netと協力し、系列販売会社が低コストでインターネット回線に接続できるようにしたという記事が掲載された。
NTT絡みで自動車会社というと、先日のトヨタ自動車とNTTの国際通信網構築の件(6月19日のNEWSWatch記事参照)を思い出し、「自動車競争が通信分野にフィールドを移して再燃!」かと思ったが、今回はイントラネットが中心のようなので、既存通信キャリアの方はホッと胸を撫で下ろしているのではないだろうか(?)
余談その3:
日刊工業新聞面には、マイクロウェア・システムズが、リアルタイムOSの「OS-9」のFA制御向け市場拡大を目指して橘テクトロンと代理店契約を結んだという記事が掲載された。
同社はサンのソフトベンダーとしても関係が深く、インターネットやJavaOS(internetWatch-web記事参照)としてOS-9(EmbeddedOS-9)の展開を拡大しており、FA(ファクトリー)からもセットトップボックスや民生Java製品が生まれてくる可能性も広がったと言えよう。
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