1997年9月3日
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●IA市場を引っ張るシステムLSI
●インターネット携帯電話開発提携
余談3題:楽天市場/KDD提訴/毛筆タッチパネル
[システムLSI][インターネット家電(IA)](レベルA')
●IA市場を引っ張るシステムLSI
日経産業新聞1面トップには、米国の半導体ベンチャーのインテグラフィックス・システムズ(IGS)が、通常のTVでインターネット閲覧を可能にするシステムLSI「サイバープロ2010」を開発したという記事が掲載されている。半導体商社の兼松セミコンダクターとソフトウエア開発のアクセスと組んで、日本市場に参入するということのようだ。衛星デジタル放送受信機に組み込めば、家庭用TVでも高画質でインターネットが楽しめたり、インターネットTV自体も10万円前後の価格に低減できるとしているらしい。
このシステムLSI「サイバープロ2010」の仕様を見てみると、NTSCやPALといった日米や欧州のTVの走査線方式に対応しており、世界初のフレキシバス(FlexiBus)を採用してペンティアムやRISC
CPU にダイレクトにインターフェースが取れる(Intel
486とか、日立やNECのCPUもOK)ことや、フリッカーと呼ばれるTV画面のちらつきを抑える機能を盛り込んだことを特長としており、その用途もインターネットTVのみならず、TVゲーム機からDVDプレーヤー、ビデオ電話やTV会議用機器に至るまで、多岐に渡るとしている。
同じく日経産業新聞1面掲載の、IGSのケニー・リウ社長のインタビューでも、日本でのインターネットTVの売れ行きが芳しくないことについて、インターネットのためにTVを買い換える層がいなっかただけのこととしており、DVDプレーヤーやデジタル衛星放送受信機のようなセット・トップ・ボックス(STB)的な使い方でインターネット接続する需要は、日米ともに大きいと考えているようだ。
インターネット家電(IA:Internet
Appliance)市場へは、MSやIntelといったコンピュータ業界からの参入があり、日本の大手家電メーカーなどの取組みと相まって、そのどちらの業界からのアプローチに対しても、応用のきくようなシステムLSIなりMPUが、今後需要が高くなることは間違いないところだ。日本メーカーへの海外からの売り込みも、ますます激しさを増すことだろう。
[インターネット携帯電話](レベルA'、9月3日のINTERNET
Watch-Webにも関連記載あり)
●松下通信工業と米アンワイヤード・プラネット社のインターネット携帯電話開発提携
日経産業新聞9面には、松下通信工業が米ソフト会社のアンワイヤード・プラネット(UP)と、携帯電話だけでインターネット接続できる簡易型ブラウザーの技術開発などで協力することで合意したという記事が掲載されている。松下通信は来年にも、同ソフトを搭載した携帯電話を欧州市場向けに開発、さらに国内導入に向けた調査を始めるようだ。
9月2日のUP社のプレス・リリースでは、松下通信工業のGSMやPDC、PHSといった通信方式の携帯電話や端末を、UP社のHDML(Handheld
Device Markup Language)ベースのマイクロブラウザー技術でインターネット接続出来るようにするとあり、「インターネット接続可能な携帯電話」(INTERNET-ENABLED
MOBILE PHONES)を共同開発すると発表している。
既にUP社は、携帯電話などの小さい液晶画面に適した、インターネット接続用のHDMLベースのブラウザー「UP.Browser」を開発しており、携帯電話などのワイヤレス・ネットワークに対してHDTP(Handheld
Device Transport Protocol)にて接続されるシステム「UP.Link
Platform v.2.0」も完成させているので、日本のPHS用機器への応用も比較的早く実現されそうだ。
今日は他にも、日刊工業新聞11面に、日本アタッチメイトがPHSを使ったSOHO向けモバイルシステムを構築できる「リモートLANノード/PHS簡単接続パック」を発売したという記事(7月25日の同社のリリースでは、8月より発売となってはいるのだが)が載っていたり、同じく日刊工業新聞10面に、パラガン(広島市)が2日、モバイルLAN営業支援ツール「直行直帰」を発売したという記事も掲載されている。それらは、32kbpsデータ伝送のPHSを中心とした通信システムであったり、携帯電話の9.6kbpsという遅いデータ伝送速度を情報圧縮技術で補うようなシステムであったりすることから、携帯電話でのモバイル環境の整備を推し進める製品ともなりそうだ。
上記以外にも、昨日のNEWS
Watchにもあった、NECの音声コーデック技術や、NTTのPHSや携帯電話に適したデジタル信号符号化技術(8月20日のNEWS
Watchにも関連記載あり)などの開発も含めて、現在のモバイル環境からインターネット携帯電話へと移行する、市場変遷(拡大)へ向けての動きが加速されそうだ。
余談その1:
日経産業新聞2面には、エム・ディー・エム(MDM)が同社の電子MALLサービス「楽天市場」の機能を大幅に拡充したという記事が掲載された。同社のリリースには、今日の日経産業新聞の記事がそのまま掲載されているのだが、その中では、消費者からのアクセス分析機能を追加し、商品別のアクセス件数リストを見て売れ筋商品や不人気商品を把握し、機動的な商品入れ替えもできる、と解説されている。
このデータ管理機能をアクセス全体の傾向のみならず、個別アクセスへの個別対応作業に関しても使えるようになれば、より大きな売り上げにつながるだろう。
余談その2:(8月11日のINTERNET
Watchダイジェストにも関連記載あり)
日経新聞1面と同じく13面の解説には、KDDが米FCCを相手に、米国で行政訴訟を起こすことを固めたという記事が掲載された。8月頭に米FCCが各国通信業者に対する、国際電話接続料金基準(ベンチマーク制度)を一方的に決めたことへの対抗措置で、もしこの接続料金が施行されれば、米からKDDへの収入が1/3程度に減ってしまうということのようだ。
ここにも、情報強国(情報を与える側)と弱国(情報を受ける側)の摩擦が発生しており、その他の情報弱国(アジアや欧州など)が追従するかどうかが注目される。
余談その3:
日経新聞15面&日経産業新聞10面及び日刊工業新聞12面には、富士通が2日、市販の毛筆で画面をなぞると「はね」「とめ」「はらい」などのタッチを画面に再現するタッチ入力パネルを開発したと発表したという記事が掲載された。プラズマディスプレーパネル(PDP)など大型平面ディスプレーに組み込んで使い、黒板のように手や布で画面をこすって表示を消すこともできるらしい。
直感的には、お習字教室で使えるかなと思ってしまうのだが、黒板でチョークの粉が飛ばないとか、会議用のボード板用でもペンが減らないなど、環境に優しい製品になりそうな技術でもある。(チョーク飛ばしが出来なくなって困る先生や、黒板消し落としで反撃出来なくなる生徒などを生み出す技術でもあるのだが...(^_^)
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