ウォッチャー金丸のNEWS Watch
リンクがすでに消滅していることもありますが、予めご了承くださ い。
・NEWS Watchとは
・about 金丸さん
・NEWS Watchバックナンバー

1997年10月8日


HEADLINE 2 articles

電子コミュニティー作成サーバー用ソフト「マルチメディアコミュニティ環境」
TCOとSOHO--2つの組織の旗揚げ
余談4題:KDDのインターネット国際電話/特許検索/SOHO向け通信機器/Appleのタイミング



[ソフト][情報コミュニティー](レベルA'
NTTは電子コミュニティー作成サーバー用ソフト「マルチメディアコミュニティ環境」を開発


 日刊工業新聞9面と日経産業新聞2面には、NTTが7日、インターネット上で簡単に電子的なコミュニティー(組織)が作れるサーバー用ソフト「マルチメディアコミュニティ環境」を開発したと発表したという記事が掲載されている。ホームページ上から作りたい組織の名称や参加者募集メッセージなどを登録するだけで、専用のメーリングリストとホームページを自動的に生成する機能があるということで、インターネット利用者であれば専門知識無しでも電子コミュニティーの主宰や利用が可能になるというのが売りのようだ。NTTはオンライン出版ベンチャーの未来編集と共同で11月17日から、このソフトを利用した「at CLUB」(予定URL:http://atclub.co.jp/、8日より未来編集が参加者募集)という名前のコミュニティー・サービスを開始し、その中でオンライン出版や各種セミナー、コンテンツ販売などの試運用を98年3月末までの予定で行って、事業化が見込めれば有料サービスに移行するともしている。

 本来インターネットが持つ特長のひとつに、個々人の嗜好を活かした情報発信が可能な事が挙げられるが、ただ発信しているだけでは従来のTVやラジオと同じく、一方向にしか情報の流れが出来ていないことになる。情報を双方向にやり取りして、初めてインターネット的な個人情報発信が成立したと言えるだろう。この双方向性が個々人の間に網の目のように張り巡らされている状態を、情報コミュニティーが成立していると呼べるのだが、新聞の記事にもあるように、これまではネットワークに関する専門知識がなければ個人でそのコミュニティーを管理・運営すること自体、難しいことだったと言えるだろう。その点で今回のソフトは、各個人のPC上にも電子コミュニティーを成立させることが可能なので、より身近に情報の双方向性を体験できるようになったと考えられる。
 ただ単に情報の発信を行うだけではなく、双方向性を持った情報発信を自ら管理・運営して行くことは、もうワン・ステップ深く情報化社会との関わり合いを持つこととなり、そのことを通して情報に対する個人の責任や管理の難しさを知ることも出来そうだ。今回の様な試みが増えてくれば、またワン・ランク上の情報メディア社会への扉が見えてきそうな気がする。



[TCOとSOHO](レベルB
2つの組織の旗揚げ--TCOコンソーシアムと全国デジタル・オープン・ネットワーク事業共同組合


 日経産業新聞1面トップには、CSK日本シスコシステムズ日本DECコンピュータ・アソシエイツなどが13日にも、企業内情報システムの運用コストを効果的に削減する手法を研究・実用化するためのオープン組織「TCO(Total Cost of Ownership)コンソーシアム」を結成するという記事が掲載されている。PC機器やソフトなどの運用管理費用のコスト削減に向けた取り組みを行う組織で、MSや日本オラクル、日本IBMなどのメーカーから、システム・インテグレーターやユーザーである一般企業にも参加を呼びかけるらしい。情報システムの運営管理に関するコストの評価と計測方法を日本ガートナーグループと協力して作成し、その調査結果をDB化してコンソーシアム会員の事業展開に役立てるともしているようだ。その日本ガートナーグループの試算では、企業でのPC1台にかかるTCOの年間コストは8千~1万3千ドルにものぼるということでもあるらしい。

 次に日刊工業新聞9面では、SOHOによるSOHOのためのマルチメディア&インターネット領域でのビジネス創造を目指す「全国デジタル・オープン・ネットワーク事業共同組合」(東京・新宿)が誕生したという記事も掲載されている。ネットワーク関連のコンサルタントやマーケッティングのネクステージ・システム社など数社が発起人となり、マルチメディア&インターネット関連ベンチャーやSOHO企業の三十数社が組合員となっているようだ。同組合では、テーマやプロジェクト毎にユニットを設けてバーチャル・コーポレーション(仮想企業体)の様な事業形態を目指すらしい。(既に9月下旬あたりで他新聞が取り上げている事項ではあるが、改めて具体的な取組みなどが2~3つ程始まっていることから、記事になっているようだ)

 一見、関連の無さそうな両団体の旗揚げではある。しかし、TCOコンソーシアムの中の特にPCメーカーなどが、これまで見えてこなかった企業内TCOの(膨大な)コスト損失を削減し、PCをより売り込み易くしようと取り組んでいる事が、個人でPCを使用する場合での使い勝手の向上などに寄与するとも考えられる。従って、TCO削減がPCの使用人口の増加につながってくれば、SOHOなどの中小の企業体や個人事業主の増加を促すことなどにも、結果的には結び付いて行くことになるだろう。




余談その1:KDDのインターネット国際電話
 日経新聞13面&日経産業新聞2面には、KDDが7日、年内にインターネットを利用した国際電話の商用サービス開始を発表したという記事が掲載された。子会社のKDDコミュニケーションズ(KCOM)を通じてサービス提供し、料金は今後、詰めていくようだ。まずはインターネット国際電話のフィールドトライアルとして、8日から英国向け、そして15日から米国向けの実験を開始し、約2カ月後に本格サービスに移行する計画らしい。
 東京~大阪間のインターネット電話/FAXの実験(7月28日のINTERNET Watch記事参照)が7月28日から9月30日で終了し、次に本業の国際電話にもトライするということで、主収入源である音声国際電話サービスの別アプリケーションとして取り扱っていくものと思われる。しかし周りの状況を見ていると、実験などと悠長なことは言っていられないのも事実だろう。

余談その2:特許検索
 日刊工業新聞7面と日経産業新聞5面には、日本特許情報機構(JAPIO)が、特許などの知的財産権情報をインターネット上で提供するサービスを開始したという記事が掲載された。特許情報検索サービス「PATOLIS」のインターネット版特許・実用新案に関する分散処理検索システムの2つのサービスを受けられるとしているようだ。
  これまでパソ通やCD-ROMなどで提供されてきたサービスが、一気にインターネットに開放(12月26日までは登録すれば無料で使用出来るらしい)されてしまった感があるが、休眠している特許情報の有効利用の為には良いサービスになるかもしれない。(その他の特許関連事業者にとっては大変なサービスになるかもしれないが)

余談その3:SOHO向け通信機器
 日経産業新聞7面と日刊工業新聞11面には、シャープが8日から、DSUとTA内蔵のISDNネットワークステーション「メディアパレットJD-MA1」を発売するという記事が掲載された。
 機器の詳細などは、10月7日のPC Watch Web記事やシャープのリリースを参照していただきたいのだが、SOHO向けのオール・イン・ワン通信機器をシャープが出してきたあたりに、アメリカから遅れることウン年目にして日本でもその市場の盛り上りが到来するのでは、と感じさせるものがある。

余談その4:Appleのタイミング今日の何とも...8日のやじうまWatchも参照のこと)
 日経新聞13面には、米Appleの互換機PC事業を手掛ける米IBMパイオニアの両社が、同事業から撤退する方針を固めたという記事が掲載された。パイオニアは10月初旬に米アップルから「最新OSのライセンスは供与しない」との通告を正式に受けており、まだ最終回答を出していないが、年末予定の次世代機:CHRPの発売を断念するようだ。米IBMはアップルの戦略転換を受けた後も、OSライセンス供与契約の継続を求めてきたが、事態打開の糸口が見つからないために契約を解消し、互換機事業から撤退する方針を固めたということらしい。
 そんな折、日経新聞13面&日経産業新聞7面には、アップルが9月下旬から国内出荷を始めたMacOS8を組み込んだPCの一部機種(8機種)で、PCが起動できなくなるトラブルが発生していることが分かったという記事も掲載されている。米Appleは6日からホームページで修正ソフト「ドライブ設定1.3.1」の配布を開始し、日本法人も15日をメドに日本語版を配布を始めるとのことらしい。

 互換機メーカーとの決別を宣言したAppleにとって、自社製品の素晴らしさを強調することが一番の宣伝になるはずなのだが、今回もタイミングが悪いというか、Appleらしいというか...
 頼れるものはAppleしかいないと思うユーザーの気持ちを考えると、何とも...



INTERNET Watch


(C)1996 Impress Corporation. All Rights Reserved.

internet-watch-info@impress. co.jp