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ちょっと知りたいページの裏側

第4回:RADICA

■RADICA
http://www.ninjin.net/radica/

 「ちょっと知りたいページの裏側」は、皆さんがご存知のさまざまなサービスやコンテンツが、どうやって作られているのかといった、なかなか知る機会がないところをインタビューしようというものです。

 さて第4回目は、数あるメールマガジンの中でも最近勢いのある「RADICA(ラディーカ)」。アングラやネット上の噂など、インターネット上の生情報を扱っているところが特徴です。一方で、普通免許を取る連載コラムがあったりする不思議さも。今回はRADICAのコンセプトを中心に、「RADICA」を運営している「めたるまん」こと山崎さん、中心ライターである安芸さん、保坂さんにお話を伺いました。

●毎日大量のWebとメールをチェック!

IW編>>現在の購読者数を教えてください。

山崎>>メールの購読者がおおよそ6千人。ほかにWebやスタートページなどもやっているので、完全な人数はわかりません。おおよそ7千人ぐらいですか。

IW編>>スタッフは何人ぐらいですか?
山崎>>だいたいライターが20~30人ぐらいいます。メインになって書いているのは5~6人ですね。

IW編>>みなさんのインターネット環境を教えてください。

山崎>>ダイヤルアップ接続です。テレホーダイインターネッターなので、(夜)11時ころから活動を始めることが多いです。
保坂>>専用線が使える環境にいることが多いです。
安芸>>ダイヤルアップ接続です。


IW編>>記事の情報収集はどのようにしているんですか?

山崎>>記者はWebやメーリングリスト(ML)など、大量の情報を毎日チェックします。だいたい巡回するコースは決まっているし、各記者の得意分野があります。私の場合、だいたい毎日2MBのメールを読んでいます。自分でもMLをいくつか開設していて、それらをチェックすれば、アングラから一般の女性による情報まで、さまざまな情報が入ってきます。夜中1時頃は、チャットにも入っていますので、ものすごいことになっていますよ。


IW編>>配信までのスケジュールを教えてください。

山崎>>スタッフがそれぞれ原稿を書いて送り、それらをまとめて出すという感じです。連載の場合、先にまとめて原稿をもらっています。編集用のツールを作ってあるのでそんなに時間はかかっていません。だいたい(夜)11時ぐらいにスタートして2時ころに配信です。時には5時頃までかかることもありますが。


IW編>>運営はどのようにしているんですか?

山崎>>現在無料です。広告も入っていません。当然、原稿料もありません。誤解されることがあるんですけど、本当にみんなボランティアでやっているんです。
安芸>>ここにいるスタッフももちろんノーギャラ(笑)
山崎>>RADICAは、将来的にインターネットユーザーの一割の、10万人や100万人という読者を抱えたいと思っています。でも、現在は無料ですから、良くも悪くも力をセーブしています。


IW編>>有料化の予定はありますか?

山崎>>有料化は常に考えています。ただ、今は(決定的な)支払いシステムがない。それに、土壌的に無料が定着しているので、難しいというのもあります。
保坂>>女子高生とか、数千円の電話料金が払えたりするんですけどね(笑)
安芸>>無料のものがたくさんあるから、メールマガジンは100円でも高いと思う。
山崎>>Webだけで完結できる決済システムがあればいいけれど、少額を銀行に行って振り込むなんていうのはやっぱりできない。まだ人間の習慣に合わせたシステムがないですね。

●RADICAは週刊誌と同じ「総合誌」

IW編>>RADICAの想定読者を教えてください。

山崎>>RADICAでは、「3つのO(オー)」に向けて発行しています。3つのOというのは、オタク、オジサン、女の子。まず、この3者を押さえることができないとダメでしょう。今までのメールマガジンはオタク向けが多かった。でも、それだけじゃダメです。
山崎>>RADICAを始めるときに、いろいろと雑誌を読みました。中でも女性誌の恐ろしいほど綺麗なレイアウトには、正直いって衝撃を受けましたね。こんな雑誌に慣れている女性は、今のプレーンテキスト主体のメールマガジンではなかなか難しい面があると思います。文字だけの世界では難しいです。これは言っちゃっていいと思うんですけど、次はHTMLメールの時代が来ますね。
安芸>>でも、速報ニュースの場合は綺麗である必要はないでしょう。
山崎>>まぁ、RADICAとしてはどっちに転ぶか方向性はまだ言えないところですが。

山崎>>RADICAでは通常の週刊誌と同じ「総合誌」として作っているんです。

IW編>>でも、個人で「総合誌」となるとやっぱり難しいのでは?

山崎>>もちろん一人で全部やろうとするのは無理です。RADICAの場合は、総合誌として作るために人を集めました。女性の多いMLで意見や感想を聞いてみたり。まぐまぐによって個人メールマガジンがブームになったとは思うんです。同人誌は印刷するのが大変だし、Webよりメールマガジンを作るほうが楽ですし。でも、それらは定期的に発行されていないものも多く、ジャンルが非常に狭い。作る側の楽しみが強調されていて、「出す」側の立場で出されている。
安芸>>RADICAは、「客観報道」ではなく「主観報道」なんです。(執筆側の)情報提供ではなく、読者が読みたいものを出したいですね。情報提供プラスαで、“こうすれば面白い”という見方の提供をしたい。
山崎>>MLはおもしろいですよ。身近な情報がどんどん入ってくる。ネットだと、ネタ元にたどりつくこともありますし。
安芸>>インターネットでは、「噂」それ自体がニュースだと思うんです。裏が取れないから、噂を記事にすることは危険なんて意見があるけど、まったくナンセンス。一歩引いた視点から、インターネット上にそういう噂が流れている、という視点で記事を書いています。


IW編>>しかしインターネット媒体の場合、媒体そのものも「噂」や「チェーンメール」の中に組み込まれる危険性があるのでは?

安芸>>私はチェーンメールのどこが悪いのかわからない。チェーンメールコレクターですから(笑)。「デマだから、チェーンメールだからいっさい触れるな!」という人もいますが、そんなのは大きなお世話。無知な人々を正しい方向に導くなんて雰囲気がしていい気持ちがしませんね。


IW編>>RADICAの中で、ネタ的になにがウケるとか、逆にダメなものなど傾向はありますか?

山崎>>「裏ネタ」「生情報」「スポーツ系」などのニーズがインターネットユーザーに高いという調査結果はいたるところから出ています。逆にRADICAでダメなものはアダルトネタですか。宗教ネタは扱いますが、ウケが悪いです。


IW編>>RADICAの競合誌は?

安芸>>僕の場合、「噂の真相」が(インターネットに)出てきたら怖いですね。
保坂>>「JIJI News Watch」かな。「JIJI News Watch」がすごいと思うのは、記事末についているURL。ニュースの中には主観的なことは書いていないけれど、そのURLにアクセスしていくと、ただ羅列してあるURLが編集者のメッセージに見える。
安芸>>そうかな? JIJIの記事は本来、新聞用に書かれる。それをそのままインターネットに流してもつらいのでは。
山崎>>RADICAとしては、「週刊アスキー」かな。メールでは「MSN News&Journal」ですね。
安芸>>たしかに「MSN News&Journal」の内容はいいけれど、やっぱり紙の作りですよ。文章が長い。メーラーをスクロールしないと全文が読めないような記事はメールマガジンには向きません。
山崎>>「INTERNET Watch」も長すぎますね。

IW編>>最後に今後の展開について一言お願いします。

山崎>>スポンサーが欲しいですね! RADICAは告知によって認知さえしてもらえれば、インターネットユーザーの一割ぐらいの読者数はとれると思っています。世界一のメールマガジンにする自信があります。


IW編>>お忙しい中、ありがとうございました。

【インタビューを終えて】
 3人とも活発な方で、実際にはこの何倍もの会話がなされました。「『生のインターネット情報』を伝えるメールマガジン」といった印象があったRADICAですが、実は基本コンセプトは「面白い記事を読ませる総合誌」とのこと。ただ、紙の雑誌でも「オタク」「オジサン」「女の子」の3種類を満足させるのは大変だと思います。総合誌という意味では本誌も同じ。お互いがんばりましょう。

 文中にもありましたが、「噂」をフォローしていく姿勢はRADICAならではで、興味深く聞きました。ただ、やはりチェーンメールや噂も本気になってしまう人がそれなりに発生していて、難しいところかと思います。

【プロフィール】
山崎一幸(めたるまん)/写真中央インターネッター。世にも不思議な?! 社交的オタク。パソコン歴は長く、TK80のころから、数々のパソコンを乗り換え、現在に至る。

安芸智夫/写真左ライター。著書に「インターネットの行きたいページに3分で行ける本」(かんき出版)などがある。現在、「GEO」、「マガジンX」にインターネット関連の連載を持つ。

保坂昇寿(HOSAKA the G33kSt@r)/写真右ライター。RADICAをはじめ、いくつかのメールマガジンに関わる。Netn@viなどで連載を執筆中。


【編集部より】
この「ちょっと知りたいページの裏側」では、取材先を募集しています。「ぜひこのページをとりあげて欲しい」、といった要望がありましたら、おすすめの理由を添えてinternet-watch-info@impress.co.jpまでお送りください。

('98/7/23)

[Reported by masaka@impress.co.jp / junko@impress.co.jp]


バックナンバー

第1回:検索デスク('98/2/2)

第2回:日本のコンピュータ情報(富士通)('98/3/4)

第3回:goo('98/4/21)


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