[木曜コラム]
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「OCN」雑感
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  先週発表されたNTTのオープンコンピュータネットワーク(OCN)は、今後のインタ
ーネット環境に非常に大きな影響を与える構想だと思う。新聞各紙の報道だけではわ
かりにくい点があると思われれるので、私見をまじえて考察してみたい。
  OCNの意味は、大きく2つの側面に分けることができると思う。1つは、日本最大級
のインターネットサービスプロバイダーが来年初頭に登場するということ。もう1つ
は、NTTが持っている通信インフラの資源、たとえばバックボーン回線などを、これ
までの電話と同様に値段をつけて商品にするという事業者向けのサービスである。

●プロバイダーとしてのOCN
  まずプロバイダーとしてのOCNはどうだろう。発表資料によると、電話を介したダ
イアルアップ接続が「一定時間で3千円程度(通話料別)」、128Kbps専用線接続が
月額固定3~4万円、1.5Mbps専用線が月額固定30~40万円など、となっている。特
に専用線接続は、現在の標準的な価格と比べると5~10分の1程度にあたる。これは米
国並みと言っていいほど安い。
  しかし、このスペックには不明な点がある。まず、「一定時間で3千円」という表
現でわかるように、何時間までかが決まっていないこと。そして、バックボーン回線
のパフォーマンスが未定であること。
 バックボーン回線にはATMが使われるのではないかという予想もあるが、その場合
は専用線に比べパフォーマンスがかなり落ちるという報告がある。また逆に、もっと
最先端の技術が使われ、すごいスピードがでるのかも知れない。つまり分かること
は、接続後のコストパフォーマンスは分からないということだけだ。
  今回の発表の本質は上記のような回線種別や品質にあるのではなく、「米国並みの
価格」にあると言ってよさそうだ。事実、記者会見でも「米国との内外価格差の解消
」が一番の主旨だと説明されていた。
  これをどう見るかだが、一般のインターネット利用者はとりあえず喜べばよさそう
だ。従来より、日本の通信インフラの価格は米国の10倍以上と批判されており、その
声に応えたことは評価されていい。気になることは、先のバックボーン回線のパフォ
ーマンスがいかほどかという点だろう。この点は、来年に向けて具体的なスペックが
発表されるの待つことになる。個人的には、インターネットの本格利用にはつなぎっ
ぱなしの専用線が必要だと感じているので、128Kbps月額3万円には触手が動く。

●キャリアーとしてのOCN
  もう1つはキャリアー(電話回線などの通信施設を自ら所持し、一般の通信事業者
にもサービスする業者)としての側面である。この問題は重要である。なぜなら、現
在240社ある(インターネットマガジン2月調べ)プロバイダーのほとんどが、何らか
の形でNTTの施設を利用して商売しているからだ。このインフラの全権を持つNTTがも
し意地悪をしようと思えば、ほとんどのプロバイダーが経営困難になるほどの打撃を
受けるだろう。
  それともう1つ、規制や指導を嫌うインターネット文化では、政治や行政の影響と
無縁でないNTTが自ら本格的にインターネットに参入するのに危惧を持つ人もいる。
米国でも、インターネットの商業利用が活発になった段階でNFSバックボーンが自ら
その役割を終えたり、国がかりで全米にアクセスポイントを作るという構想(NAP)
も一部に批判を浴びた経緯がある。つまり、自由な競争原理が働くような形でなけれ
ば、いかに安いといっても、もろ手を上げて喜ぶわけにはいかないということだ。
  そういう意味で今回のNTTの構想を見てみよう。NTTもそのことを意識した感があり
、発表資料のもう1つの主旨として「公正競争条件を担保し・・・・オープンなネッ
トワークとします」と宣言されている。つまり、NTTが持てるすべてのインフラを一
般に対し同一価格で公平にサービス(オープン)することで自由で公正な競争ができ
る、と主張しているのである。「オープン」という単語がサービス名(OCN)に盛り
込まれていることからも、それを強く意識しているのが汲み取れる。
  具体的には、お客からNTT局舎までの回線(アクセスと呼んでいる)、バックボー
ンなどの局舎間回線(ネットワークと呼んでいる)、局舎内のルーター器材などを誰
にでもバラ売りするということだ。つまり、一般のプロバイダーから見れば、バック
ボーンは自前だがアクセスはNTTから借用、またアクセスは自前だがバックボーンは
NTTから借用などの組み合わせでシステムを構成できることになる。さらに、このサ
ービスは通信業者だけでなく一般の企業でも利用することができるとのことである
(NTT広報談)。

●ほんとうに公正だろうか?
  ところで、上記した計画で本当に自由な競争が行われるのだろうか。個人的な希望
としてぜひそうなってほしい。1つには、この2年間でインターネット環境を育ててき
たプロバイダー各社の投資と努力は、いかにビジネスと言え無視してはならないと思
う。プロバイダーの中には独自の付加価値を持ちはじめたところもある。インターネ
ットの精神としても、各自が得意分野を活かし、多様なものが混在していていいはず
である。自由な競争の中で、豊かなコミュニケーションサービスが育っていくことを
多くの人が望んでいる。
  もう1つ、一般の業者が、たとえば専用線を発注した際に、NTT自社の需要のため
に後回しにされるようなことがあっては公正な競争と言えなくなる。このような調整
は、OCNのプロバイダー事業とは別の判断で公正に行われるような組織作りをお願い
したい。
  つい最近、米国で新時代のための通信法が可決されたばかりである。時代は、デジ
タルネットワークに向けて急速に進んでいる。国内問題ばかりに目を向けているわけ
にはいかない。今回のOCN計画が、国際的にも競争力のある日本の通信インフラを作
れるような自由公正な方向に進むことをお願いしたい。
[Reported by 編集長]

(96年2月29日)