[木曜コラム] ---------------------------------------------------------------------------- 百武彗星とインターネット ---------------------------------------------------------------------------- ここ数日、百武彗星がマスメディアで話題になっている。私事で恐縮だが、小さい 頃から星を眺めるのが好きで、一連の報道に胸踊るものがあった。そこで、この恰好 の生きた材料を使い、いまのインターネットがどのくらい役立つかを探ってみた。 まずは、全文検索ができるサーチエンジンODIN (http://kichijiro.c.u-tokyo.ac.jp/odin/)を使って、「百武」という文字列を検 索してみた。観測所、大学、アマチュア天文家のホームページなど、十個くらいのサ イトが数秒後に画面に並んだ。いずれもまじめに取り組んだと思われる情報で、いま 百武彗星が空のどこに見えるかを表した星図や、光度を予測した等級表、実際に写真 撮影された画像(http://www.nao.ac.jp/pio/100take/)など、さまざまな情報が報じ られていた。 なかでも、 「怪鳥」さんのレポートは、日々の具体的な見え方が自分の感覚で書 かれておりとても参考になる(http://www.cyborg.or.jp/~kaicho/co_96b2.htm)。 たとえば、テレビでは「満月の4倍の大きさ」という表現にとどまるが、同氏の表現 では「なんと肉眼でも15度程の長い尾が見えました。」と具体的だ。このような事 象は、やはり実際に見た人の感想にリアリティがある。まして、その背景知識がある 人のレポートとなれば、プロ・アマの差を引いてもテレビのレポーターより説得力が ある。 また、厚木市こども科学館の菅原さんが紹介されているダストテイル(彗星の尾) の予測は専門的なシミュレーションによるもので、知っていると自慢できそうな知識 だ(http://www.astec.co.jp/~hh/1996B2_Tail.html)。 さらにリンクをたどっていくと、来年はヘール・ボップ彗星という大型の彗星がや ってくることなども伺いしれる。これらはいずれも日本語による情報だが、世界にま で足をのばせば、その中心核は約40kmくらいあるらしいことなどもわかった。 テレビや新聞の報道でその到来を知った百武彗星だが、インターネットでの探索で さらに詳しい情報を得ることができた。フローメディアとストックメディアという言 葉があるが、この場合、テレビはフローでインターネットはストックにあたる。フロ ーは受動的であり何気なしに情報を取得するのに向いており、ストックは積極的であ り目的の情報を取得するのに向いている。ストックメディアの代表としては出版物が あるが、この彗星のような場合は制作時間の問題で役に立たない。実際、すべての天 文関連雑誌はその結果しか報じることができないだろう。 インターネットは潜在的な機能から見ればフローにもストックにもなり得るが、い まやっとストックメディアとしての機能を担い始めたように思う。 最後に、私も昨日、百武彗星を富士山で見ることができた。我が目を疑うほどのす ばらしい姿は、評判をはるかに上回り、誰が見ても一目でわかる美しいものだった。 この勇姿を楽しむには、望遠鏡も双眼鏡も必要なく、ただ暗い空を探してほしい。 (編集長 井芹) (96年3月28日)