[木曜コラム] ---------------------------------------------------------------------------- 情報の値段? ---------------------------------------------------------------------------- インターネットウォッチを有料化してからそろそろ2ヶ月になるが、「ウォッチはタ ダにならないの?」という意見をいくつかいただいた。おそらくこれは、WWWサイトの 多くが無料で運営されていることに対するご要望だと推察した。確かに、世界を見渡 しても無料で情報を提供しているサイトは多く、逆に有料情報は少ない。しかし本当 にタダが理想なのだろうか? 言い訳ではなく、少し考えてみたい。 まず、ここで対象になるのは当然商業ベースで運営しているサイトであり、個人の ホームページなどは範囲外だ。商業ベースのサイトの場合は、そこに経費をかけてい る以上、当然なんらかの収入がいる。タダといっても、読者または視聴者にとってタ ダであり、別のかたちでの収入は必要になる。情報の値段を(見かけ上)タダにする には、広告を掲載しその広告主から収益を上げる方法がある。しかし、すべてを広告 収入に頼った場合は、同時にいくつかの問題を抱えこむことになる。つまりスポンサ ー重視の傾向である。その最大の事例としてテレビ放送がある。 テレビ放送は番組枠をスポンサーに買ってもらうことでビジネス的に成立しており、 スポンサーは宣伝活動やイメージアップに利用するという図式である。この構造から、 いきおい「視聴率」という数字が重要になってくる。いま話題になっているTBS事件 や数年前に相継いだ「やらせ」事件などは、スポンサー獲得のための視聴率競争と無 縁ではないと思う。 ときに、テレビで報じられる情報を疑いなく信じている人もいるが、それはどうだ ろうか。テレビ放送はNHKはともかくとして、一株式会社がビジネスを前提に提供し ているものであり、国や公共団体が運営しているものではない。まして、視聴者から みれば無料で提供されている情報である。そこに間違いや多少の行き過ぎがあった場 合、一般の視聴者は本当に責任を追求することができるのだろうか。ここに現在のテ レビ放送の限界があると思う。最近、CATVや衛星放送などの有料番組が注目されてき ているが、これらの現象も上記した問題と関係があるだろう。 雑誌や新聞などの紙メディアも、多くの場合、広告収入をあげている。その依存率 はそれぞれだろうが、ビジュアルで情報量が多いのに(コストがかかるのに)、定価 が安い雑誌は、構造的にその依存率は高いはずだ。中には、広告を前提として記事風 に作られているケースもある。業界用語ではペイドパブなどと言われているが、この 場合はテレビ放送と同様な構造が発生している。つまり、スポンサー重視の誌面作り となる。 ところで誤解なきように言っておきたいのは、だからといって上記の構造がいけな いと言っているわけではない。現に、ほとんどの人が毎日楽しいテレビ放送をタダで 見れるという恩恵を受けている。ただ問題なのは、情報を商業的に提供しようとすれ ば、そのコストを回収する手段が必要であり、それぞれのビジネス構造があるという 点である。情報化時代の賢い消費者は、その構造もわかった上で情報を取捨選択して いった方がいいと思うのである。 私が尊敬している故・柚口さん(元日本編集プロダクション協会会長)は、出版物 の値段を安くしていくとそれは最後はタダになる、つまりテレビになると言って危惧 しておられた。読者がいくらの値段なら買ってくれるのか、もし払ってくれたとすれ ばそれは編集者みょうりに尽きる、と教えていただいた。私はその言葉を信じている。 インターネットをメディアとして捕らえれば、テレビのようなもの、雑誌/新聞の ようなもの、データベースのようなもの、さまざまなメディア形態が可能だと思われ る。現在、無料のサイトが多いのは、広告収入以外に収益を上げる方法がないという ことが大きな要因ではないかと思う。電子キャッシュのようなもの、たとえば1ページ 見たら1円というような課金方法が開発されれば、いろいろな構造のメディアが登場し てくると思いたい。 ところで、インターネットウォッチは、現在1通約20円のメディアであり、購読料と 広告収入の比率はほぼ2:1になっている。 (編集長 井芹) (96年4月18日)