[木曜コラム]
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デジタルカメラ雑感
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 フィルムを使わない電子じかけのデジタルスチルカメラが、ちょっとしたブームに
なっている。先日も新宿にある量販店を覗いてみたが、確かにすごい人だかりがして
いた。
 ところで、電子カメラという商品は最近登場したわけではない。ソニーのマビカ、
キヤノンのQ-PICなどが数年前に発売され話題になったことがあるが、その頃は一般
に普及するまでには至らなかった。それが、ここに来て話題になっているのにはいく
つかの要因が考えられる。
 最大の要因はパソコンの普及だろう。最近のデジタルカメラはもれなく、撮影した
画像をデジタルデータとしてパソコンに転送して鑑賞することができる。Q-PICなど
がテレビに写し出していたのと、その点が大きく違う。一見、テレビの方が普及して
おり利用が簡単だと思われるが、結果はそうならなかったわけだ。これは、デジタル
データとして再利用したいというニーズが進んできたからだと推測できる。インター
ネットのホームページに掲載するなどの用途はその最たるものだろう。
 いま発売されている機種は、編集部で確認できたものだけでも15機種を数えるが、
その中でも人気を集めているのがカシオのQV-10(10A/30)というシリーズだ。QVシ
リーズは値段がもっとも安い部類だということも人気の理由だと思われるが、それ以
外にも新しいコンセプトを持っている商品だと思う。それは、現行機種の中で唯一、
鑑賞に耐えるサイズの液晶画面が最初から付いている点である。
 撮ったその場ですぐ見れることの利点ははかり知れない。たとえば、同じシーンで
も構図や露出をいろいろに変え、気に入ったものだけを残し、あとは消してしまうと
いう利用ができる。また、撮った写真をいつでもどこでも人に見せることができる点
も見逃せない。編集部でも、新製品発表会の様子をみんなで見たりして便利に利用し
ている。つまり、この機種だけで完結した利用ができるということである。
 逆に液晶画面がない場合は、家に帰ってパソコンにデータを転送しビューアーソフ
トを起動するまでは、どんな写真になっているのか正確にはわからないことになる。
つまり、フィルムを使うカメラと程度の差はあるものの、手間がかかることに変わり
はない。
 実際に使ってみるとわかるが、かつてフィルムにカメラを付けるという逆転の発想
で成功した「使い捨てカメラ」のような驚きを感じる。使い捨てカメラが登場した頃
は、その画質から、カメラ愛好家にはかならずしも好評ではなかったようだが、カメ
ラに不慣れな人にも写真というメディアを公開した功績は大きいと言われている。そ
ういう意味では、QVシリーズもカメラという枠を超えた別の商品なのかも知れない。
常に携帯できて簡単にシーンを切り取り、それを保存し他の人とも共有できる。たと
えば「ビジュアルメモ」と言ってもいいかも知れない。そして、必要なら再加工でき
るのは言うまでもない。
 ところでQVシリーズは、ほかの製品に比べて写真性能や画質が高いわけではない。
もし、上記したような利点より結果としての画質を重視するなら、10万円クラスの価
格帯の製品の方がいいだろうし、通常のカメラと同レベルの品質を要求するなら、100
万円クラスの製品を検討したほうがいいだろう。
(編集長 井芹)

(96年5月2日)