[木曜コラム]
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本当のDTPが始まる
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 個人的にも期待していた、アドビ社のアクロバットの次期バージョンが、先日、世
界同時に発表された。
 アクロバット( http://www.adobe.com/acrobat/ )とは、DTPで作られたパンフレ
ットや雑誌などの誌面を出力する場合に、どの出力装置でも--たとえばどのプリン
ターやディスプレイでもオリジナルのレイアウトを崩さずに再現させる技術である。
もっと簡単に言えば、たとえば一般の雑誌とまったく同じレイアウトの誌面をコンピ
ュータ画面でも見れるということだ。この技術とインターネットを組み合わせれば、
一台のパソコンだけで本当に出版ができ、読者は雑誌のようなきれいな誌面をディス
プレイで見れるようになる。
 DTPはもともと"Desktop Publishing(パソコンを使って出版すること)"の略であ
るが、これまでは"Desktop Prepress(印刷機が回るまでの工程を処理すること)"の
域を出ていなかった。つまり、パソコンでページを作ることはできたが、それを大量
に複製し配布するところまではいっていなかったわけだ。今回のアクロバットが登場
すれば、本当の意味でのDTPが完成すると思う。
 ところで、「そんなことはすでにHTMLで実現されているではないか」と思われる方
もおられるだろうが、それは少し違う。最近はHTMLも3.0に拡張され、ずいぶん表現
力があがってはいるが、HTMLでは文字の書体やサイズの指定、または多段組のような
複雑なレイアウトを表現することはできない。このことは、「読みやすさ」という面
で大きく影響することになる。通常、出版社はこの点に注意を払い、いかに読みやす
く、見やすい誌面にするかに神経を使っているものだ。きっと、読者もその良否によ
り商品を選んでいることだろう。
 ではHTMLのバージョンが4.0、5.0と進めばできるようになるかと言えば、そうでも
ないだろう。HTMLが進化してどんなレイアウトでもできるようになるということは、
それはすなわちポストスクリプトのようなページ記述言語やQuark Xpressのようなレ
イアウトソフトと同等な機能を持つことを意味している。これらの技術は、すでに印
刷という紙のメディアにおいて多くの技術者によって開発されてきたもので、また同
じことをインターネットでやる必要はないだろう。すでに完成された技術があるなら、
それを使う方が理にかなっている。実は、それが今回のアクロバットというわけだ。
アクロバットは、ポストスクリプトから発展してきた技術なのである。
 HTMLは、安価な設備で誰もが簡単にハイパーリンクやマルチメディア情報を記述で
きることから今後も重要だが、レイアウトを重視しなければならないような商業出版
などではアクロバットが使われる可能性がある。たとえば、従来から言われている
「オンデマンド出版」などは最たる分野だ。アクロバットに問題点があるとすれば、
一般のテキスト情報に比べデータ量が多くなるということだろう。
 今回のアドビ社の発表によると、Acrobat3.0という新製品の英語版が8月に、日本
語版はその2ヶ月以内には発売されるとのことだ。従来バージョンからは大幅な拡張
が施されているようだが、中でも「URLを認識しハイパーリンクできること」、「文
字検索できること」、「圧縮によりデータサイズを小さくできること」、「ネットス
ケープなどのメジャーなブラウザーにプラグインできること」、「画像より文字を先
にダウンロードさせてストレスをなくすこと」などのように、インターネットを意識
したと思われる拡張が目を引く。
 日本語版が発売されるという秋頃には、本誌のきれいにレイアウトされたバージョ
ンが作れるかも知れない。
(編集長 井芹:watch-info@impress.co.jp)

(96年6月6日)